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杉谷昭子のシューマン:ピアノ協奏曲

構築性と豊かな情感(戻る


ディアゴスティーニのThe Classic Collection(通称:バッタもんCD付き雑誌)15号に収録されたCDですが、日本ビクターからも同じ録音のCDが出ていました(こちらはクララのピアノ協奏曲とのカプリングで、確かCDの帯の推薦文はアルゲリッチだったはず:VICC-149)。 これを入手したときはそんなことも知らずに聴きましたが、こりゃイイ、といっぺんでお気に入りになった演奏です。 古典様式とロマン派らしい情感の両方をきちんと持ちあわせていて、変な感情移入や大袈裟な表現を排した充足感のあるシューマンのピアノ協奏曲です。

第1楽章の冒頭は力みかえらずにすっと入ってきます。 変なアクセントなんかつけずにストレート勝負といった感じです。 ピアノの響きは全体的に深くくぐもった感じがしますが、このあとの主題はしっとりとした哀感がこもっています。 盛りあがりになると毅然としていて、このあたりの対比がきちんとついているのが素晴らしいと思います。 普通はどっちかに傾くところなんでしょうけど。 またオケの響きには素朴でどこか野暮ったさが感じられるのですが、これがしっかりとサポートしている感じにも聞こえて充足感につながっているようにも思えます。 カデンツァでは構成感を保ち、また技巧に走らず情感をこめて弾いたあとエンディングでも声高に叫ぶことなく纏めあげます。 第2楽章も深い響きでしっとりと歌いオーケストラと会話を続けているのが印象的です。 第3楽章の導入も抑制を効かせて、ここをガンガンと突き進むのが好きな人には物足りないかもしれませんが、常に響きを深めにとって大袈裟な感情移入を避けて幻想的というか瞑想的な感じにも思えます。 シューマンの心の奥深くを表現しようとしているのでしょうか。 オケの盛り上がりも抑制が効き、ホルンの響きもタイトで虚飾を排した演奏に終始しています。 ピアノの響きともよくあった音です。 後半の盛りあがりにおいても両者は感情移入に頼らず、内部にエネルギーを発散させるようにして構成感を保ったまま盛り上げて締めくくります。 充足感のある演奏です。

杉谷昭子(しょうこ)さんは長くドイツで活躍されている方で、日本人の女性としては始めてベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(ヴァイオリン協奏曲を流用した第6番も含む)を録音している実力派です。 この時もジェラール・オスカンプ指揮のベルリン交響楽団がサポートしていました。 なおこのオスカンプさんはオランダ人で、エド・デ・ワールト、ハンス・スワロフスキー、フェルディナンド・ライトナーに師事し、1976年にボーンマスの国際Jonh Player指揮者コンクールで優勝した経歴を持っています。 エラスムス(Erasmus)というオランダのレーベルにベラルーシ国立交響楽団を指揮したショスタコーヴィチの交響曲第8番の録音があり、絶叫する非力なオケが凄まじい迫力の演奏でした(WVH143)。

残念ながらこのシリーズの在庫はなくなったようです(2006.5.3)

なお杉谷さんのHomePage → http://www.sugitani-piano.com/