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PILZ2枚組のモーツァルト/戴冠ミサ曲ほか

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PILZ俗悪2枚組と呼ばれていた2CDsのシリーズNo.25のモーツァルトの戴冠ミサ曲。 1枚目のグロスマン教授とウィーン少年合唱団による素晴らしいレクィエムの演奏とは違い、こちらの2枚目の戴冠ミサ曲は数回聴いたあと長らく駄演と思って無視していました。 しかし耳を欹(そばだ)てて聴き込んでみたらそんなに変な演奏ではありませんでした。 多少合唱の精度が荒いところがあるようにも思いますし、クレドなどはもたもたしているようにも感じますけれど、逆に飾らない素朴さが素適なのではないか、とも考えるようになりました。 何事も偏見はいけません。 どうせ楽器は出来ないのだし、評論家のプロを目指しているわけでもないのですからね、初心に戻ってひたすら音楽を聴く歓びをもたなくては何のために音楽を聴いているのかわかりません。 そんな自らの反省をこめてこの曲を取り上げたしだいです。

このPILZの2枚組のCDシリーズですが、今でこそ売っているのを見る機会が減りましたね。 1枚分のCDケースにCD2枚が収納されていて、1991-2年頃は珍しいものでした。 当時はナガオカ・トレーディングが販売していたこともありました。 内容はもう玉石混交で、玉はクリスティアーネ・ジャコッテのバッハ平均律クラヴィーア曲集でしょう。 これはとびきりの名演です。 石はブルーノ・ツヴィッカーのヴァイオリンによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲でしょうか。 演奏は極上ですがツヴィッカーが実在しない幽霊演奏家なのですから石でしょう。 そしてこの上記で述べたグロスマン教授のレクィエムのように古いアナログ録音をデジタル録音と称したものも混じっています。 このあたりは拙ページの「廉価盤CDの楽しみ」に書いてありますので、よかったら見てみてください。 あとこのCDシリーズ、ジャケット裏面の曲目一覧が途中で省略されているものもあり(帯の部分には全部書いてありますが)、おまけに表記ミスが散見されるとんでもないものがあります。 こられのことから今から7〜8年ほど前でしょうか、僕も参加していた@nifty(当時はnifty-serve)のクラシック音楽フォーラムFCLAでは、このCDシリーズのことを「PILZ俗悪2枚組」と呼んでいました。

しかし、音楽はネーム・バリューで聴いているのでありません。 商業主義に踊らされ、宣伝されているものを買えば必ず満足するかというとそうでもないことは十分に経験されていると思います。 ま、だからといって幽霊演奏家のCDを勧めるつもりは毛頭ありませんけれど、無名演奏家の録音を聴くことは、色々な情報や呪縛から逃れて純粋に音楽に没入するひとつの方法であると思っています。 もっともそんな風に思い、数年間はこれらPILZのCDを始め、かなり数多くの無名演奏家の怪しげなCDを買っていました。 しかし、そんな自分の中でもやはり、これは良い・これはダメだと選別し、偏見を持っていたことに気付いてしまったのでした。 しかも39度の熱が出て、眠れなくてインナーフォンで聴いたこの戴冠ミサ曲のCDで気付いてしまいました。 聴き始めは偏見から「変やな」とか「なんじゃい」なんて思っていたのですけれど、しだいにこの演奏の奥深さに「えっ」「ほう」と感心しながら聴き進んでいったというわけです。 

確かにそんなに凄い名演かと言われると困ってしまいますが、質素で素朴な味わいのある演奏であることは間違いありません。  全体的に伴奏が絞り込まれてちょっとショボイ感じがしますしちょっと遠く感じるのはアナログ録音の焼きなおしだからでしょうか。 歌ではソプラノが健闘していますね、とても清澄な声です。 キリエとアニュス・デイなんて素晴らしいものです。 演奏ではクレド、もたもたしているようにも思いました。 たしかに手元のコリン・ディヴィス盤はこの部分を6'07、マルケヴィッチ盤は6'48なんですが、この盤では7'32もかけています。 しかしこれはこれで逆に飾らない素朴さが素適なのではないかとも思うようになりました。 エンディングでアーメンの声とラッパがかけあう部分などまったりと過ぎていくのも許せます。 血気盛んなオッサンだった当時の僕では間が持たなかったのかもしれません。 音楽がダメなのではなく、自分が良さを気付けなかっただけ・・・まさにそおいうことでしょうね。 

なおオマケで入っている2曲目の「主日のための晩祷「ヴェスペレ」イ長調 K.321」はオルガンの響き(たぶん小型オルガン)とソプラノが要所を見事に締めた素晴らしい演奏。 3曲目の「教会ソナタ・ハ長調 K.328」は合奏曲で、やはり小型オルガンが小気味良く華やかな演奏で、ともに5分ほどの小曲なんですがともに聴き応えのある演奏でした。