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スィトナーのシューマン「春の交響曲」

薄皮を一枚剥いだ「春」(戻る


シューマンの交響曲第1番は、1841年2月20日に完成したのち3月31日初演されたあと、この年の末に改訂されて初版のパート譜(総譜は1853年)が出版されています。 このスィトナーさんの交響曲第1番の演奏は、ワシントン国会図書館にある3月31日の初演時の自筆総譜による演奏です。 よって通常耳にしている交響曲第1番「春」とはちょっと異なった演奏であり、このことに思い馳せながら聴いてみるのも面白い演奏だと思います。

スィトナーさんは、珍しい版の好んで演奏を取り上げるような指揮者ではないことは御存知のところです。 しかしそのスィトナーさんが、あえて自筆総譜を採用した録音を残したということは、通常演奏される版よりも良いところを見出したからであると思います。 シューマンには、同じく1841年に初演されて後に交響曲第4番となっているものもありますが、スィトナーさんはこちらは採用していません。

さてその「春の交響曲」ですが、冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレが3度低い(マーラー版と同じ)こと以外にもいくつもの違った点があります。 その中には主題の歌わせ方など解釈の部分も含まれてしまうのでしょうが、明らかに主題の持ちまわり方やフレーズの終わらせ方、終結部の音型の違いなどさまざまな違いが散見されますが、中でも第4楽章の冒頭にある鳥のさえずりのようにフルート・ソロが舞い上がるのがとても印象的です。 確かにアレ・アレって思えたり、ずっこけそうになるような響きの薄さや逆にダンゴ状態となる部分があってバランス悪く、よく言われるシューマンの管弦楽法の未熟さという言葉が頭をよぎります。 しかしそんな点を含めてみても、総じてうきうきとした気分にさせてくれる演奏に違いなく、けっこう気に入っています。

なおシューマンのこの交響曲の自筆総譜の第1ページ目には「春の交響曲」と書かれているそうです。 よってシューマンがこの交響曲を春をテーマとした標題音楽として作曲していたことは疑いの余地のないところです。 そのようなことを考えると第4楽章冒頭のフルート・ソロや主題の中に見え隠れするフルートやホルンの響きにも納得がいきます。 このスィトナーさんの演奏が、通常の「春」の演奏から薄皮を一枚剥ぎ、春の息吹を感じさせるためにあえて「春の交響曲」と明記された楽譜を採用した録音を残したのではないかということに思い至るのです。

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