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ユーリー・シモノフ/RPOのチャイコフスキー「1812年」ほか

大砲の乱れ打ちが疑問(戻る


ワゴンセールで売られているロイヤルフィル・コレクション42『チャイコフスキー「ロメオとジュリエット」「イタリア奇想曲」/他』のCD。 ユーリー・シモノフの指揮によって以下の曲目が収録されています。

幻想序曲「ロメオとジュリエット」
イタリア奇想曲 作品45
歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「ワルツ」
歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「ポロネーズ」
祝典序曲「1812年」

いずれの曲も、ロシア的な雄大さや力強さ、ほの暗い情感がよく表現された演奏です。

最初の「ロメオとジュリエット」の冒頭から、これから始まる悲劇を十分に予感させる暗い表現など、とても充実した音楽になっています。 シモノフさんのお国もの、と言えばそれまでかもしれませんが、けっして土臭くなく、見事に統率が取れた洗練された演奏になっています。 この曲でこんなにぐいぐいと惹きこまれていったのは初めてです。また一種軽薄な曲にも思えてしまうことのある「イタリア奇想曲」も素晴らしい。 ロシア人がイタリアに持つ憧れのようなものをロシア的な情緒でもって巧く描いているように感じますし、また「エフゲニー・オネーギン」ではカラフルさと力強さ(ロシア的な粘ばっこさのようなもの)、これがみごとにマッチングした演奏で、ロシア宮廷の華やかさをふっと想像してみたりもします。
いずれの曲、どの部分をとってもそれぞれに納得してしまうような聴き応えがあります。 本当に素晴らしい演奏だと思います。 たぶんこのシリーズ屈指のCDではないでしょうか。

ただし、このCDの疑問点は最後の1分です。

「1812年」のクライマックスに大砲の発射音の録音を使うのは、ドラティ/ミネアポリス響の録音からのよくある手法ですが、楽譜を無視した乱れ打ちには正直コケてしまいます。 ヒュ〜という風切り音が左から右に飛ぶのには苦笑を禁じ得ません(打ち上げ花火?)。 そして極めつけは曲の最後の音に合わせ、ドッカ〜ンと大砲の音がかぶるのはいかがなものか(c)鈴木宗男。

しかし演奏そのものは、冒頭の弦楽器の豊かな和音、とても充実した演奏が展開されていて、演奏そのものは聴きものだと思います。 大砲の事を欠きましたが、演奏自体はけっしてメリハリをつけただけのウケ狙いのようなものではありません。 弦楽器主体で情感をたっぷりととった演奏です。 なお演奏時間は16分27秒なので、これだけからしてもちょっと遅めの演奏だと思いますし、戦闘場面の演奏もとてもよく締まっています。 たっぷりとした迫力もあり、軽薄な感じなど全くしないだけに、この最後の場面、これら大砲の音だけがとても疑問です。

面白いCDが欲しい方にはお勧めしますが、これ以外の部分もとても素晴らしい演奏だと思いますので、くれぐれも大砲の音だけで満足しませんよう。

ロイヤル・フィルハーモニックコレクション No.42 売価 \780円程度