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小澤征爾/サンフランシスコ響の新世界

前向きで新鮮な響き(戻る


小澤征爾さんの指揮される音楽については、あまり多くを聴いていないのでめったなことは言えないのですが、何故かぐっと感じることが少ないのです。 生来のへそ曲がりのマイナー志向ゆえに敬遠してしまっていることもあると思います。 でも実際にベストセラーになったウィーン・フィルとのニューイヤーコンサート、僕は途中でリタイヤしてしまいました。 確かに「とんぼ」の演奏など、どこからあのような響きが出てくるのか、と吃驚したのですが、演奏を見てしまうと日本人の勤勉さがストレートに出すぎていたようで、もうちょっと気楽に演ってほしかったなぁ〜というのが正直な気持ちでした。 どこかまだ日の丸を背負っている世代なのかもしれないなぁ、とも感じてしまったこともありました。

さてそんな小澤征爾さんについて、最近の演奏は何がやりたいのかよく分からない、などと非難する人が多くいます。 が、僕は冒頭にも書いたとおり多くを聴いていないため傍観者とならざるをえません。 でも自分の乏しい経験から言わせてもらえるならば、小澤さんもカラヤンやバーンスタインの演奏でも感じたとおり若い頃の演奏のほうが実に面白いと思っています。 特に、1975年、小澤さんが40歳のときに録音したドヴォルザークの新世界交響曲は、清新な解釈による素晴らしい演奏です。 

若さの特権による覇気のある演奏・・・といえばそれまでなのかもしれませんが、決してそんな我武者羅さだけが取り柄の演奏ではなく、たぶんに斎藤メソッドに裏打ちされた緻密さをも兼ね備えた演奏になっています。 各楽器がきちんとコントロールされていますし、響きが開放的であるのは西海岸のオーケストラであるからだけではないと思います。 自分の考えを音にして常に前向きに音楽を進めている、そんな感じのする新世界交響曲です。 これは響きを整えようとして神経を尖らせている(ように思える)今の小澤さんの演奏とは大きく異なる点ではないかと思えるのですがどうでしょう。  

個人的にぐっときているのは、第4楽章のコーダに入る前の部分。 各楽器が懐かしむように旋律を織り成してゆく場面、情に流されることなく、各楽器が主張し響き合い、コーダへと結びついてゆきます。 そしてコーダで盛り上がったあと、最後の一音を長くずーっと引っ張っていますね。 この部分、LPレコードとして発売されたときに楽譜どおりに演奏した手垢にまみれていない新鮮な解釈だと随分と話題になったことも記憶しています。 ちょっと小ぶりかもしれませんが、本当に新鮮な響きと感動に満ちている新世界交響曲の演奏です。 今の小澤さんしか知らない人たちには是非とも耳を傾けて欲しい演奏だと思っています(アマゾンではまだ入手可能のようです)。

ユニヴァーサル・ミュージック(PHILIPS) 1999年発売のアンビエント・リマスターによる日本独自企画エロクエンスの1枚(1,300円)