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小澤征爾/トロント交響楽団の幻想交響曲

音楽への一途な情熱(戻る


若いって良いことですね、なんて思ってしまう幻想交響曲です。 自分はこう思っている、こう演りたい、そんなものがほとばしり出ていますね。 そしてそれが変な独り善がりの演りたい放題になってなく、誠実できちっと纏めてあげているところに小澤さんの手腕の高さを感じさせます。 時に1967年、小澤さん31歳の時の録音。 潤いやコクには欠けるけれど、それを上回る若い情熱をストレートに感じる幻想交響曲です。 とにかく今の小澤さんに批判的な人であっても、この録音は聴き応えのあるものだと感じるのではないでしょうか。

小澤征爾さん、ウィーン国立歌劇場とも上手くいっているようで、契約延長となるようですね。 あの指揮している姿、楽器が出来ない僕にとっても、見ていると非常に判りやすく演奏しやすいのだろうなぁ、と思います。 また一生懸命なんだろうということも見てとれるのですが、出てきた音楽はというと・・・ちょっとゴメンナサイしたい気分になってしまいます。 巧いか下手かというと前者なのですけれど、何故か惹きこまれるものをあまり感じないのが正直なところです。 別に嫌いとか悪いとは言ってませんので間違わないでくださいね。 あれほど忌み嫌っていたカラヤンでさえ今はお気に入りになっていたりもしますので、この気持ちも変わることも大いにあります。 ただ小澤さんの最近の音楽についてピンと来ていないということです。

でもこの31歳の小澤さんによる幻想交響曲は実に面白いものです。 とにかく自己主張がはっきりした演奏です。 常に音楽の主要旋律を浮かび上がらせていて、その対になる旋律にもきちんとスポットライトを当て、常にこれらが絡みあうように音楽を進行させています。 冒頭から、おっ〜こんな旋律があったのか、とちょっと耳からウロコ状態です。 聴きなれた曲なのに新鮮で、ぐっと惹きこまれてしまいます。 第2楽章はハープを左右に振り分けて対比させ、第3楽章の前半の室内楽的なアンサンブルも実に面白く聴けます。 第4楽章から終楽章にかけてはもう一気に突き進むといった感じでしょうか。 句読点をきちっとつけているので安心感があり、ドライブ感のあるオーケストラ・コントロールはさすが世界の小澤を充分に予感させるものです。 あ、断頭台の鐘もくっきりと聞こえます(始めて買ったクリュイタンスのレコードではこの部分が奥に引っ込んで聞こえたのが悔しかったので、この部分は余計に注目してしまいます)。

全編を通して若いって素晴らしいことだなぁ、と素直に思える情熱的な演奏です。 ただし若いぶん、はやる気持ちがあるのか、若干音楽が前のめりになって聞こえてくるのですが、しかしそんなことも許せる気持ちなります。 音楽への一途な情熱を取りたい、そんなことを書くと今の小澤さんは情熱が無いのか・・・と指摘されそうですけどね。 とにかく若さの特権を行使できない年齢にいることは事実でしょう。 小澤さんには晩成を期待するとして、サイトウキネンよりも前の演奏を聴いていきたいですね。

1995年発売のソニー国内盤1000円シリーズの1枚(2003.10.26現在まだ売れ残ってます)→ココ