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プリンツのモーツァルト/クラリネット五重奏曲(Venus)

熟成された音楽(戻る


ウィーン・フィルの首席奏者であったアルフレート・プリンツとウィーン・フィルのメンバーによるウィーン室内合奏団によって1969年頃に録音された演奏です(残念ながら録音年月の記載がありません)。 1stヴァイオリン:ウェラー、2ndヴァイオリン:ヒューブナー、ヴィオラ:シュトレンク、チェロ:スコチッチとなっています。 ウェラーさんが在籍されているので1969年の来日時点での録音と想像しています。 この演奏は、日本の音響メーカーのトリオ(現ケンウッド)によるトリオ・レコードとして日本で制作された名盤のひとつです。 こちらの演奏も先のオイロディスク原盤に劣らない素晴らしい演奏です。 録音のかげんかもしれませんが、全体的により柔らかさを増した響きで包まれてモーツァルトの時代に近付いているのではないかと思いました。

このトリオ・レコード、1973年にウィーン室内合奏団によるモーツァルトのLPを3種類発売しているようです。 アイネ・クライネ・ナハトムジークと弦楽五重奏曲第3番とK136(126a)の入ったレコード、このクラリネット五重奏曲とフルート四重奏曲第1・4番のレコード、弦楽四重奏曲第14・19番の入ったレコードです。 これら3種類のレコードは、ウィーンのモーツァルト協会より、モーツァルトの理想的な演奏としてモーツァルト協会賞というのを受賞していて、日本が制作した国際的な録音の一つになっています。 CDとしては、1993年に徳間ジャパンコミュニケーションズが販売元になり、ヴィーナスレコード株式会社のヴィーナスクラシック1000コレクションという1000円盤CDシリーズのいっかんとして発売されていました。 このシリーズ、個人的に期待していたのですが、市場からすぐに姿を消してしまいました。 しかしようやく昨年(2002年)アート・ユニオンというレーベルにおいて、これらの演奏が3枚組CDとして復活しています。

さて前置きが長くなりましたが、この演奏もまた全編に渡ってプリンツのより柔らかいクラリネットの音色が魅力的です。 先にも書きましたが、録音のかげんからか(アート・ユニオンのCDの音の鮮度は分かりませんが)じつにまろやかで深みのある響きとなっています。 そしてウェラーのヴァイオリンもヘッツェルに比してより柔和な雰囲気を醸し出しているようです。 演奏全体として熟成された音楽といった趣を感じます。 この演奏を聴いたあとにオイロディスク盤の演奏を聴くと、なんと現代的でしゅっとした響きなんだろう、と思ってしまいます。 巷間よく言われるような古き良きウィーン・フィルの響きを残していると思えるのはこちらの演奏でしょう。 ゆったりとした時をすごすのにはこちらの演奏をお勧めしたいと思います。
最後に、このような素晴らしい録音を企画し制作した日本の技術陣に敬意を表したいと思います。

1993年発売のヴィーナスクラシック1000コレクションの1枚