BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
大阪シンフォニカー特別演奏会 ”Who & Who ”

誰かさんと誰かさん戻る


大阪シンフォニカー特別演奏会 ”Who & Who ”
2000年5月11日(木) 19:00 いずみホール

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」作品80 前奏曲〜糸を紡ぐ女〜シシリエンヌ〜メリザンドの死
サン・サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」から”あなたの声に心は開く”
ガーシュウィン:歌劇「ポーギーとベス」から”サマー・タイム”
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から第1幕への前奏曲と”イゾルデの愛の死「優しくかすかな彼のほほえみ」”
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」

指揮・構成・お話:牧村邦彦
独唱:並河寿美(S)

誰かさんと誰かさん... 曲目に「と」で並べられた人名が並ぶ曲目で構成された演奏会。 指揮者のマッキーこと牧村邦彦さんが企画・構成におしゃべりまで行うプログラム。 牧村さんのファンにとっては素敵な演奏会であったはずだが、雨が今にも降りそうな生憎の天候のせいもあり、7割程度の入りだっただろうか。 ちょっと淋しい状態の客席だった。

さっそうと出てきた牧村さんが、勢いよくルスランとリュドミラの序曲を始める。 しっかりと低音が響いてくる。 軽妙なタイトルだが、音楽は気合を入れていますよ、というような意気込みが感じられる。 しかし、僕の座席が左隅ということもあるかもしれないが、全体的に勢いや推しの強さはあるが、切れ味が感じられない。 花石さんのティムパニの響きにもどこか締まりがない。 ライナー/シカゴ響の演奏に馴染んでいるせいもあり辛くなってしまうが、もどかしい、そんな感じ。 次のフォーレの組曲は、スピーチではフランス音楽らしく捕らえどころがない音楽で眠くなるかも... とのことだったが、句読点のはっきりした演奏だった。 ここでも低音がビンビンと聴こえてくる。 曲に対する気合は感じるのだが、いかんせん洒脱さ欠けていてはフォーレらしくない。 そんな中で光っていたのがシシリエンヌでの末原さんのソロ。 どことなく懐かしくもあり、これは素晴らしかった。

そんな牧村さん、歌の伴奏になると何故か本領発揮... と感じてしまう。 最後のチャイコフスキーのロメオとジュリエットも十分な力演であったことは否定しないし、オケのメンバーのソロも十分に美しくはあったのだが、オケ全体がうねるような感じ、音楽の奥行きを感じさせるような深みにはちょっと乏しい。 音が十分に前には出ているのだが。

で、話はもどって、これが伴奏になるとのびやかだ。 またワーグナーでは第1ヴァイオリンが10名の編成なのに音が十二分に粘ちっこくなる。 単に的確な伴奏を付けている、そんなのではなく、ソリストものせてしまうような巧者ぶり。 音楽にも底光りがする。
並河さんの歌はサン・サーンスの曲の後半から調子が出てきたかな。 そしてガーシュウィンのサマータイムが絶品。 オケのメンバーの共感あふれるサポートぶりも素晴らしかった。 ふっとダイアン・ウィットリーさんを指揮者に迎えた演奏会のことを思い出した。 あの時、この若いオケのメンバー各自が持つスイング感のようなものが良く出ていてとても楽しかったし、またオケ全体の纏まりもよくて驚いたのだが、ここでの牧村さんもまた見事だった。 オケのメンバーの自発性を引き出していて楽しいし、そして要所をきちんと締めているのでけっして粗雑にならない。 そして何より並河さんの歌も堅苦しくなく見事だった。 僕の席から見た並河さんの横顔がどこかキャスリーン・バトルにもかぶって見えた。 巧かった。 この演奏を聴けたことが最大の収穫だったと思う。