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ならチェンバーアンサンブル 第54回定期演奏会

英国音楽の花束、珠玉の音楽・演奏戻る


ならチェンバーアンサンブル 第54回定期演奏会
2000年6月17日 14:00 なら100年会館中ホール

パーセル(ブリテン編):シャコンヌ ト短調
ディリアス(フェンビー編):二つの水彩画
ウォーロック:カプリオル組曲
エルガー:弦楽のためのセレナード ホ短調 作品20
ブリテン:シンプル・シンフォニー 作品4
(アンコール)アイルランド:メヌエット

指揮:今村 能

まさかまさか奈良でこのような英国音楽を堪能できるコンサートが開催されるなんて... そんな期待どおりの幸せなひとときであった。

生憎の雨模様。 おまけに開演前にはちょっと強く降りだしてきたこともあってか会場の100年会館中ホールに半分ほどの入り。 ギャラリー席を除いて6割位だったろうか(定員446名だそうで、ざっと250名位かな)

ならチェンバーアンサンブルについては、名前はどこかで目にしたことはあった程度だったが、奈良市が市制90周年の1988年に結成した奈良市の室内管弦楽団とのこと。 だからこの演奏会の主催が奈良市だったのも頷ける。 音楽療法をいち早く取り入れ、子ども達へのわらべ歌の活動など、意外と奈良市は音楽に積極的だとは思っていたが、なんと室内管弦楽団を持っていたというのは初めて知った。

さて、期待の今村さん指揮による英国音楽の数々。 そのどれもこれもが今村さんの的確な指示による珠玉の音楽たちであった。 冒頭のパーセルこそ、若干硬さがあり、どことなく杓子定規的にも感じられたが、2ndヴァイオリン、ヴィオラがしっかりと曲を支えていて、これからの曲の数々も安心して聴けるとの期待が膨らんだ。 ディリアスもまた内声部の2ndヴァイオリン、チェロがしっくりと噛み合い、丹精込めて描かれた水彩画となっていた。 特に1曲目から2曲目への対比が見事で、景色がパッーと一瞬にして明るくなり、心も晴れるようだった。 ウォーロックは一転して1曲目のバス=ダンスの冒頭から力強い。 どことなくヴィクトリア王朝風(?)にも感じるところがウォーロックらしさか。その 4曲目ブランルの高揚感は見事で(ここで思わず拍手が出たのも頷ける、多分曲目変更に気付かなかった人が終わったと思ったのもあるだろうが)、続く5曲目ピエザンデールでの音の広がりと繋がりに気を配った演奏で(指揮はほとんど横方向にのみ動く)緊張感が漲っていたのも見事。 ただ終曲マッタシンは戦いの踊りだそうだがやや力不足、というか抑え過ぎたのか、若干尻すぼみのように感じてしまったのがなんとなく残念な気がした。 まぁ借り物のCDで予習しただけなので曲をよく知らないで言うのもなになのだが。
休憩を挟んでのエルガー。 穏やかで上品な第2楽章、そこはかと香るような調べが折り重なる第3楽章が素晴らしかった。 チェロも控え目なのだがそれとなく雄弁に演奏していたのも見ていて気持ちよかった。 そして最後はブリテンのシンプル・シンフォニー。 ここまで来るとオケも開放されたのか、第1楽章から音が力強く、大きい。 ただ第2楽章ではそれがちょっと裏目に出たのかな、陽気なピチカートというよりもちょっと騒々しいピチカートのようにも感じられた。 これはちょっと残念。 しかし第3楽章では見事に持ち直して抑揚を充分につけた恰幅のよい音楽。 そしてそのまま力強い終曲へと結び付いていった。

さすがに演奏される音楽の種類として大声でブラボーをかけるような曲たちではないが、このような意欲的なプログラムを見事に演奏しきった今村さんとならチェンバーの皆さんに心のなかでブラボーと言わせてもらいました。 今村さんも初めて聴いた指揮者なのだが、繰り出す指示は的確で神経の行き届いたものであった。 見るからに解釈で聴かせるタイプ。 評判いい指揮者だよ、という友人の言葉どおりであった。 この組み合わせでシリーズ化して欲しい。 そんなことをアンケートに書いておいた。
そしてアンコールはその今村さんの説明によると国の名前とおなじアイルランドという人のメヌエット。 さすがにアンコールでの気楽さも手伝ったのかアンサンブルにも幅が出てきて香りたつような場面も随所に見られた。 うーんんん、メインプロにもこのような気楽さ・洒脱さがちょっと欲しかったような...

最後にこのホールについて。 このホールに初めて入ったのだが、スクエア型であるがちょっと天井が高いホールだと思う。 おまけにホールがガラス張りというちょっと雰囲気も異様。 まぁオープンといえばオープンなのだが。 ガラスで音が鋭く反射するかな... とも思っただが、なぜか音が拡散しているような感じであった。 特に今日は雨降りでもあったので、明快に響くという風ではなかった。 まぁ曲が英国音楽だったので、演奏される曲自体の押し出しが強くなく、どことなくウェットな響きだからこれはこれで良かったのかもしれない。 と、そんなことを考えながら、ならチェンバーの会員申込みをし会場を出た。 雨はほとんど降っていず、煩わしい傘をさすこともせず、心地好い余韻を楽しみながら駅にむかって歩き出した。