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オルガン名曲コンサート すべての道はバッハへ

土橋さんの技が冴える戻る


オルガン名曲コンサート すべての道はバッハへ
2000年7月23日(日) 15:00 ザ・シンフォニーホール

南から−地中海の風 (菅藤 泉)

J.S.バッハ:協奏曲 イ短調 BWV.593
カバニーリェス:皇帝のバタイヤ(皇帝の戦争ファンファーレ)
カバニーリェス:コレンテ イタリアーナ
コレア・プラガ:バタイヤ 第6奏法
J.S.バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578
クープラン:「教区のためのオルガン・ミサ曲」から"グラン・ジュの奉献唱"
マルシャン:「オルガンのための作品」から"レジ"
(アンコール) J.S.バッハ:フーガ ハ長調

北から−バッハへ続く道(土橋 薫)

スウェーリンク:いと高きところにいます神にのみ栄光あれ
トゥンダー:キリストは死の絆につながれし
ブクステフーデ:トッカータ ニ短調 Bux WV.155
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
J.S.バッハ:おお人よ、その罪の重きに嘆け BWV.622
J.S.バッハ:バビロンの流れのほとりに BWV.653
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ BWV.552
(アンコール) J.S.バッハ:汝わがもとに

演奏とお話:土橋 薫/菅藤 泉
司会:浦川泰幸(ABCアナウンサー)

シンフォニーホールのオルガンだけの演奏会である。 オーケストラとの競演と言うよりも、オーケストラ作品にオルガンパートのある曲なら、土橋さんのオルガン演奏も何度か耳にはしているが、オルガンだけ、オルガンが主役の演奏会は今回が初めての挑戦であった。 おまけに昨日までの旅行の疲れをおして出かけたオルガン名曲コンサートだったのだが、土橋さんの見事なオルガン演奏でその旅の疲れも忘れた演奏会であった。

始めに菅藤さん。 菅藤さんはバルセロナに在住9年、とのことだそうである。 スペインでオルガン?? と不思議に思うかもしれないが、スペインはドイツよりも先にオルガンが発達したところなのだそうだ。
その菅藤さんが、スペイン・フランスからドイツに繋がる音楽を担当されたのだが、今一つ乗り切れないような演奏であった。 スペインらしい珍しい音色が生きた曲もあったが(2曲のバタイヤではともタンバリンを大きくしたような太鼓まで出てきての演奏だったが)、今ひとつリズムに乗リ切れなかった。 またバッハでは各音の響きに押し潰されているような感じもあり、協奏曲の第2楽章などもたついていたように聞こえた。 またことに前半に演奏された4曲では(失礼だがかなり)眠かった。 期待していたバッハの小フーガも全く乗り切れなかったのが残念であった。 このホールのオルガンに馴れていないせいだろうか、それともこのホールが初めて緊張していたのだろうか... 音がすっきりと整理されたマルシャンの曲ではメリハリもあったし、また半ば強引に始めた感のあるアンコールでのバッハ演奏ではリズムも生きてきただけに残念だった。

それにひきかえ、土橋さんのオルガン演奏はじつに見事なものだと思った。 まず選曲が年代順であって、ドイツより先に発達していたオランダのスウェーリンク、その弟子のドイツ人のトゥンダー、そしてトゥンダーの娘婿のブクステフーデ、さらにブクステフーデに憧れたバッハへと繋がっている。 さらにバッハの曲も時代順に配列してあるという心配り。 オルガン演奏の発達史、そしてバッハの成熟の過程が味わえるものであり、まさに名曲コンサート。 初心者にとても分かりやすい構成であり、土橋さんの解説も代表的なフレーズを交えての説明で、非常に分かりやすいものであった。
その土橋さんのオルガン演奏は、菅藤さんよりも一枚も二枚も上手(うわて)であったようだ。 手馴れた演奏と言っていいのだろうか。 どの曲でも音の歯切れが良く、重奏になってももたつくように感じることはなかった。 逆にそれぞれの音の対比が見事に描き分けられており、とても耳に心地良いものであった。 スウェーリンクからバッハに繋がる演奏で、しだいに響きが重厚になっていくありさまや、バッハの演奏での、左右の手と足で演奏される分ける音の受け渡し、それらの音の対比が見事に表現されていて、ああぁバッハっていいなぁ... と素直に思った。 また派手な曲だけはなく、バッハの「おお人よ、その罪の重きに嘆け」での落ち着いてしみじみとしたような表現も素晴らしいものだった。 ご自身の解説のなかでも「敬虔な気持ちになってしまう」と言っておられたが、そのような雰囲気が会場全体に満ちていたと思う。
さすがにこのホールのオルガンを知り尽くした土橋さんのオルガン演奏の奥深さをまざまざと感じたような演奏会であった。