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神戸市民交響楽団 第48回定期演奏会

熱気ほとばしる大盛況な演奏会戻る


神戸市民交響楽団 第48回定期演奏会
2000年7月30日(日) 15:00 神戸文化ホール(大)

外山雄三:管弦楽のためのディヴェルティメント
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16

(アンコール) ショパン:ワルツ 嬰ハ短調 作品69の1

チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

(アンコール)ヨハン・シュトラウスU世: アンネン・ポルカ 作品117
(アンコール)ヨゼフ・シュトラウス: ポルカ 憂いなし 作品271
(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ト短調
(アンコール)ルロイ・アンダーソン:舞踏会の美女

指揮:田中一嘉 独奏:原田英代(P)

会場の神戸文化大ホールの定員は2073名なのだそうだが、立ち見も出るほど大入り満員。 いつも大入り満員になると聞いていたが、特に今回は2週間後にせまったドイツでの演奏会のための壮行会とも言える演奏会でもあり、会場中が熱気に包まれていたようだ。 そのようななかメインのチャイコフスキーのでの熱演のあとにアンコールが4曲も出るという大盛況の演奏会であった。

今回の演奏会の曲目はドイツでの演奏会と同じプログラムであるとのこと。 まずその序曲として、日本の外山雄三の作品が並べられている。 民謡ドンパン節や木曾節がモチーフとして現れたり、祭り太鼓や祭り囃子の笛の音など、日本的な懐かしい感じがする曲である。 演奏では、冒頭のホルンの素朴で力強い響きから一糸乱れぬ弦楽器のピッチカートまで、各ソロパートともによく訓練され、練り上げられたような印象を強く受けた。 ことにパーカッションが身体全体で取っているリズム感が見事であって、思い切りの良さに好感が持てた。 ただ、あえて言わせてもらうならば、少々クソ真面目すぎる感じを受けたところだろうか。 アマチュアオケにそこまで要求するのは非常に酷ともいえるとけれど。 裏を返せばそのレベルにまで達していたと言うことである。

次はコンチェルト。 有名な曲を、というのが選曲理由だそうで、それでグリーグのピアノ協奏曲。 ソリストの原田さんはドイツ在住だそうで、ドイツでもソロをとられるとのこと。 その原田さん、全般的に力強いピアノであった。 ことに第1楽章のカデンツァでのヴィルトージォぶりや、第3楽章の冒頭のハリングの部分のうねった感じなどが素晴らしかった。 オーケストラは、そんなピアノにしっかりと寄り添っていた。 オケで特筆するならば第2楽章でのいぶし銀のような弦楽器の響きとホルンだろうか。 ピアノも両端楽章とは違って抑え気味に演奏されており、非常に叙情的な楽章となっていた。
この曲の全体に感じたことだが、 座った席(14列46)の関係からか、全般的にチェロとコントラバスの響きにどことなく芯が感じられなかったことである。 確かに解釈として音を抑えていたようであるが、第1楽章のチェロによる第2主題の旋律の歯切れがいまいち良くなかったのが少々残念であった。 次のチャイコフスキーでは低音弦がズンズンと響いてきたので、余計に惜しまれる。

さてメインは、チャイコフスキーの交響曲第5番。 ドイツでドイツ音楽を演るほどバカじゃないので元気な曲を... ということが選曲理由だそうだ。
ここまでこのオケと指揮者を聴いてきて思ったことだが、概して派手に開放的に鳴り響かせるのではなく、弦楽器を軸に、落ち着いた渋い表現を目指しているようである。 この5番の交響曲もまさしくそのような演奏となっていた。 やや速めのテンポながら地に足が着いて底光りするような演奏であった。
田中さんはこのオケをよく知っているのだろう。 決して無理をさせずオーケストラの全力を出させることに成功していたようである。 グリーグの時とは違って、チェロやコントラバスも十分に響いてきた。
特に印象に残ったのは、壮大なコーダの部分はおいておいて(ここは盛りあがって誰でも感動してしまうので) 第1楽章での高音弦と低音弦それぞれの表情付け・対比、第2楽章での第1主題の哀愁漂うホルン、第2主題の可憐なオーボエから金管楽器の強奏に対向する弦楽器の力強さだろうか。 あと第3楽章でも思ったことだが、ピッチカートが非常にリズミカルに響いていたこともこの演奏の大きなポイントになっていたように思う。 金管のファンファーレを十分に受けとめている弦楽器が常に主導権をしっかりと握っていたようである。 そしてアタッカで入った第4楽章も、冒頭こそやや速めのテンポ設定だったように思うが、決してお祭り騒ぎにはならない。 コーダも十分に壮大であり、金管楽器だけが突出することなく見事にオケ全体が盛り上がって締めくくられていた。 ブラボーもかかり、これには納得。
田中一嘉さんという指揮者を聴くのは初めてだったが、指揮者の中には自分の意思を通すタイプと、オーケストラの能力との接点を掴んで纏め上げるタイプがいると思うが、田中さんはまさしく後者であろう。 各パートに終始的確な指示を与えていたようだ。 アマチュアなので多少の事故はあるけれど、オケの音が整理されているのと、十分に訓練されているので、聴いていての安心感はバツグンである。 間違っているかもしれないが、第4楽章でのホルンの難しいパッセージのところなどちょっと速度を落としたりしていたのではないだろうか、実に手堅い演奏、という印象を受けた。
それに比べ、アンコールでの田中さんはのびのびと振っていた。 オケもまたそれによく反応し楽しいアンコールであった。 神戸のオケにはシュトラウスがよく似合う、と思ったのだが、当たっているのではないか。 ちょっと面白い発見をした気になっている。 そんなこんなで4曲ものアンコールを終えて会場を後にしたが、会場の外でも、巧かったねぇ、よかったねぇ... という多くの人たちの声と笑顔に包まれていた。