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京都・バッハ・ゾリステン バッハ:ミサ曲ロ短調

真摯にバッハに向き合った演奏会戻る


京都・バッハ・ゾリステン バッハミサ曲ロ短調
2000年11月23日(祝) 16:30 いずみホール

J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV232

独唱:松田昌恵(S)、福永圭子(A)、畑儀文(T)、篠部信宏(*B)、岡本雄一(*B) (*成瀬当正急病により代演)
合唱:京都フィグラールコール
演奏:京都・バッハ・ゾリステン
指揮:福永吉宏

京都バッハゾリステンは、主催者福永吉宏さんのもとJ.S.バッハの教会カンタータ200曲を20年かけて全曲演奏を続けられている(現在14年目)団体。 モダン楽器の団体であるが、小編成で変なクセや突出したところのないニュートラル演奏であったように思う。 何より真摯にひたむきにバッハをやっている、そんな感じが客席にびんびんと伝わってきた。 またプログラムによると、バッハゆかりのライプティヒに当時響いているかもしれない発音に近づけるべくクラウス・オッカー教授の助言によりドイツ語訛りのラテン語で歌っていたそうである。 曲の区分・並びもバッハの自筆符どおりであって、モダン楽器を使っているが、バッハに真正面から向き合った演奏だったと思う。 歌では、やはり畑さんが技巧的に抜きん出ていたように思ったが合唱も含め全体的にレベルが高く、また器楽伴奏のどの楽器の響きをとってみても、すべて滋味溢れる響きに統一されていたのが何より見事であった。 ひたむきにバッハ、そのような演奏会であった。

冒頭のキリエ、深い響きをともなった真摯な歌で会場の空気が一変し引き締まったようだ。 そして序奏から5声のフーガでは慈しみを増しながら歌い継がれてゆく非常にレベルの高い合唱であった。 また全曲を通じて感じたのだが、通奏低音(小型オルガン、チェロ×2、コントラバス、ファゴット×2)が見事に一体となり、リズミカルに曲を支えていたのも非常に印象に残った。
ピッコロ・トランペットの前奏から始まるグロリア、刺激的な響きを避けてまるでバンダで吹いているかのような竹森さんのまあるい響きがじつに印象的。 独唱・合唱・器楽伴奏のども楽器も同じ響きに統一されている。 突出して誇示するところがまるでなく、ひたすら同じ目的(バッハ)に向き合っているかのように曲が進んでゆく。
独奏ヴァイオリンのオブリガート付きのソプラノのアリアはアルトパートの福永さん。 含みをもったような声であった。 これに元京都市交響楽団のコンマス辻井さんのまろやかで艶のあるヴァイオリンとが絡む。 弦楽器もことさら古楽器奏法を用いていないのもかえって自然な感じがする。
独奏フルートオブリガート付きのソプラノとテノールの二重唱、平岡さんのフルートも深い響き、テノールの畑さんもほのかに甘くよく透る声で魅了した。 畑さん、はやりソリスト陣の中ではちょっと抜きん出た巧さがある。 ことに休憩前のミサ終曲の輝きあふれた合唱における畑さんのソロ部分では声のコントロールがとてもよく効いていた、巧い。 なおここでは合唱もまたテンポをあげて一気に進むあたり、よく訓練されているなぁ、そんな印象を強く持った。
休憩後のニケア信教・クレドは、声の重なりが何より美しかった。 休憩を挟んだので堅さも取れたのだろうか。 通奏低音もはずむようであり、続く4声の合唱〜ソプラノ・アルトの2重唱までじつに楽しい気分であった。
サンクトゥスは、堂々としたフーガ。 合唱・オケの各パートが自分の持ち場をしっかりおさえ、これらが一体となった恰幅の良い見事なフーガとなって展開されていった。
オザンナ以降は二重合唱の並びに替わったステレオ効果ともあいまって、またオケも力強く、頂点まで登りつめるような圧倒的な演奏となって展開されていった。 これ続くテノールのアリア(ベネディクトゥス)も畑さんの声がじつに魅力的、更に平岡さんのフルートがしっとりとした響きを添える。 ふたたびオザンナが繰り返されてから、しみじみとしたアニュスデイ、音を重ねるような堂々とした荘厳な終曲ドナ・ノビス・パーチェムではティムパニが威厳を示すかのように深く響いて確信に満ちたこのバッハのロ短調ミサが幕を閉じた。

どの声部どの楽器をとっても同じ滋味溢れる響きに統一されていたのが何より素晴らしかったと思う。 そして真摯にひたむきにバッハに向ってバッハを演奏している、そのような感じが客席にびんびんと伝わってきた演奏会であった。