BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
奈良女子大学管弦楽団 第31回定期演奏会

リズム感の良さ、気持ちの良さを感じた演奏戻る


奈良女子大学管弦楽団 第31回定期演奏会
2000年12月16日(土) 18:30 奈良県文化会館国際ホール

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
リスト:交響詩「前奏曲」
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

(アンコール、ブラームス:ハンガリー舞曲第5番)

指揮:井村誠貴

前回のサマーコンサート以来の奈良女オケの演奏会。 前回は1階席4割程度の入りという悲しい状況だったが、今回の定期演奏会は6割程度だろうか。 そんな1階席にはわき目もふらず、このホールでは勝手に指定席と決めた2階席の最前列(前回の奈良交響楽団と同じ席あたり)に陣取った。 この席からはオケの全貌が見渡せることと、何より弦楽器の分奏がきちんと聞き分けられるのが有り難い。 さて、相変わらずの寂しい客席の状況には関係なく、昨年の定期演奏会同様井村さんの指揮のもと、その指揮に応えたオーケストラによる気持ちの良い音楽が提供された演奏会だった。

コリオラン序曲、冒頭の集中力の高さと反比例してやや弦楽器がガサついて聞こえたのが残念だったが、その堅さもしだいに取れて潤いと熱気を孕んだ音楽になった。 特にビオラとチェロにリズム感を持たせて弾かせているので、力だけに頼らない恰幅の良さみたいなものを感じた。 これはこの演奏会全体に通じて言えることであり、井村さんの特質であるように思う。 オケもそれによく応えていたと思う。
リストの前奏曲、おごそかな出だしからチェロが軸になって進行する、戦いの主題の前までやや遅いテンポ設定だったろうか。 少し歌うようでもあり粘るように旋律が受け継がれていく。 このあたりも気持ちよく聴けるのはリズム感の良さだからだろう。 戦いの主題でも絶叫することなく、この後の木管アンサンブルがよく決まっており、弦楽器もしめやかで、のどかさを充分に感じさせていたのが印象的だった。 クライマックスの金管ファンファーレが多少乱れたのが残念だったけれど、フィナーレは充分な高揚感があったが抑制が効いているため騒々しく感じないのも好ましい。 ただエンディングはスパッと切って終るのだけれど、この演奏なら少々引っ張ったほうが印象が強くなったようにも感じた。 ちょっと唐突に終った、そんな印象を持ってしまった。
ブラームスの交響曲第4番、緻密に書かれた大曲であり、これまでにもCDや実演で何度も聴いているため、個人的には結構ハードルの高い曲である。 しかし結果として大熱演と言って良く、満足した演奏であった。 第1楽章の冒頭にオケがざわついてハラハラしたが、第2主題あとのチェロあたりからエンジンがかかってきたように思う。 フルート、オーボエは好調。 しかし緊張からか全体的に弦楽器群に潤いが乏しく、またトランペットが強奏する面もあったのだが、終結部に来るとようやくこなれてきたみたい。 思い切りの良いティムパニに導かれ、抑制のよく効いた熱気を孕んだ音楽となってこの楽章が閉じられた。 第2楽章の冒頭のホルンも決まって、ファゴット、クラリネットに加え、締まりのある弦楽器のピチカート、アンサンブルがしっかりと受け継がれていく。 ことにピチカートにリズム感があるのと、第1・2主題の裏を支える弦楽器が対位法的に絡んでくるあたりはちょっと感動的でもあった。 再現部も熱っぽく、低弦の下支えがあるため軽薄にならない、ティムパニがややクレッシェンドをかけながら追い込みをかけているのもよかった。 第3楽章、迫力のある主題提示。 ここでもティムパニと低弦が芯を押さえているためヒステリックにならない。 ことに低弦楽器をやや鋭角的にきっちりと弾かせている。 これが中心となって弦楽器の分奏がきちん行われていることもあって、勢いにまかせて突っ走ったり、野放図に鳴り響くことがないのが素晴らしい。 再現部では熱演のあまりティムパニのマレットを片方飛ばしてしまうというアクシデントもあったが、大勢にはまったく影響なく、熱演に花を添えた感じであった。 最後の第4楽章にきて熱気も余計に高まる。 井村さんもこれまでになく大きく振りかぶるなどオケをグイグイと引っ張っる場面もあった。 そのせいか冒頭で絶叫調になる場面もあって少々残念に感じたがこれはすぐに挽回した。 ここでもアンサンブルの要になるビオラ、チェロがしっかりしていることが大きい。 また思い切りの良いティムパニが要所をきちんと締めているため音楽にメリハリがついて気持ちが良い。 木管楽器群が好調だったこと、金管楽器も総じて抑えが効いており大熱演と言って良いだろう。 第2楽章あたりまでは、鳴りの悪いオケを駆使して音楽を創る井村さんの姿を感じもしたが、後半はオケも充分にのってきたのだろうか充分にエネルギッシュになり、この曲を閉じた。
先日の大阪シンフォニカーのひまわりコンサートではすべて期待どおりで不満を感じたことを書いた。 しかしこの日の奈良女オケは期待を遥かに超えた出来であった。 この奈良女オケと大阪シンフォニカーとを単純に比較する気は毛頭ないが、こと音楽を聴く楽しさはテクニックだけに止まらないのだから面白い。 この日の井村さんの指揮する音楽に対しての見晴らしの良さや指示の的確さ、またそれに応えようとするオケの演奏内容についての満足度は大きい。 とても気持ち良い演奏内容であって、晴れ晴れとした気分で帰路につくことが出来た。