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大阪シンフォニカー交響楽団 特別演奏会 新春コンサート

本名流によるワルツ・ポルカ、そしてトロンボーンも戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 特別演奏会 新春コンサート
2001年1月6日(土) 14:00 いずみホール

J.シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」序曲
J.シュトラウス2世:南国のばら
J.シュトラウス2世:シャンペンポルカ
J.シュトラウス2世:加速度ワルツ
J.シュトラウス2世:ポルカ「クラップフェンの森で」
J.シュトラウス2世:コヴェントガーデンの思い出

J.シュトラウス2世:ウィーンかたぎ
J.シュトラウス2世:ポルカ「雷鳴と電光」
J.シュトラウス2世:農民ポルカ
J.シュトラウス2世:エジプト行進曲
J.シュトラウス2世:ハンガリー万歳
J.シュトラウス2世:皇帝円舞曲

(アンコール:J.シュトラウス2世:美しく青きドナウ)
(アンコール:H.フィルモア:シャウティ・リザ・トロンボーン : トロンボーン四重奏曲)
(アンコール:J.シュトラウス:ラデツキー行進曲)

指揮:本名徹次

恒例のシンフォニカーの new year concert も本名さん指揮では最後の演奏会になるだろう。 大阪シンフォニカーに新風を吹き込んでくれた本名さんがどのような演奏を聴かせてくれるのかを楽しみに会場に到着したが、さすがに本名さん、コントラバスを舞台正面奥に4本並んで立たせるムジークフェライン風の配置(もちろん弦楽器は対向配置・管楽器は通常配置)で、おもわずニヤリとしてしまった。 そして演奏は、実際に踊ることを拒否し、しかしも心を掴んで躍らさせるような意思の強いものであった。 自在に伸縮するリズム、アクセント、そしてたたみ掛けるような迫力など、どれをとっても本名流。 おまけにアンコールでは、ご自身も参加されてのトロンボーン四重奏曲の披露など、随所に本名さんらしさのよく出た素敵な演奏会であった。

冒頭の「ジプシー男爵」の序曲から8型のオケとは思えない分厚い響きで圧倒された。 濃厚な響きの中でクラリネット、オーボエのソロがシンフォニカーらしく可憐に響き、フィナーレも圧倒的。 どこをとっても本名流を感じさせる気合の入った始まりであった。
指揮台に向かう本名さんに花石さんから1本の紅いバラを受け取るパフォーマンスのあとの「南国のばら」。 ここでも底鳴りのする導入から変幻自在に繰り出されてくる音楽に圧倒される。 実際に踊ることは無理だろう。 全体に渡って言えることだが、コンサートマスターのバブアゼ氏のヴァイオリンがオケからやや浮き上がって聴こえてくるのもまた素敵であった。 実に表情豊かに歌うようであり、リーダーシップの確かさを感じる。
「シャンペンポルカ」の前に乾杯するはずのシャンペンが見事にひっくり返してしまうというアクシデント。 このせいか、これまでの2曲にあった力みが消えたようだ。 太鼓の太い音が印象的。
「加速度ワルツ」でもバブアゼ氏の洒落た音が魅力的であった。 曲は踊るためのワルツではなく完全にコンサートピースとして自在に伸び縮むリズムにフィナーレの追い込みもまた激しい。
「クラップフェンの森で」では鳥の扮装をした女性が2階席に登場してハト笛を吹く。 トリの縫いぐるみを棹にブラさげた人も出てくる楽しい舞台だったが曲としては散漫な印象を受けた。 パフォーマンスも良いが、これが先行すると音楽に集中できなくなるきらいもあるため難しい。 もっともそんなことを考えずにたた楽しめば良いのだろうが。
「コヴェントガーデンの思い出」は臼田氏のトランペットの柔らかい音色が印象的。 本名さんは細かな指示を繰り出し、オケもそれによく応えている。 厚い響きなのだが音楽の切れ味がめっぽう良い。
さて、休憩を挟んで「ウィーンかたぎ」。 バブアゼ氏のソロが終始明るく素敵。 要所でコントラバスの低音が響くのはムジークフェライン風の配置からだろうか。
団員2人が赤と青のオニの被りものを付けての「雷鳴と電光」は低く締まったティムパニのロール(雷鳴)を強調した演奏。 曲が進むにしたがって団員が傘をさしはじめ、最後は本名さんに傘を手渡し傘を持っての指揮。 さすがに音楽の勢いは衰えないが精彩を欠いてくるあたりが面白い。
「農民ポルカ」は明るいリズムに乗って、お馴染みのお百姓さんが上手から登場し下手にひっこむ。 ウィットに飛んだリズムの処理が見事。 決して紋切り型にならない。
「エジプト行進曲」もお馴染みのエジプト人にスフィンクスの面を被った事務局長が登場。 静から動への転換が見事で全奏での力強さが凄まじかった。
「ハンガリー万歳」では「雷鳴と電光」以降離していた指揮棒を持ってインテンポで快速で駆け抜けたという印象。 さすがにハンガリー人の扮装は出来ないのだろう。
メインプロの最後の「皇帝円舞曲」は元気が取り柄のシンフォニカーらしい演奏。 たたみ掛けるようなドラムに時折唸りをあげるコントラバスなど、伝統に捕らわれない新しい力を感じさせるような明るさ・強さを感じる演奏であった。
アンコールでの「美しく青きドナウ」もリズムの処理に主体を置いた演奏だったが、メロディーラインは随所に本名流の伸び縮みが施されていたようだ。 お決まりのアンコールのあとに開けて吃驚玉手箱のような本名さんも参加したトロンボーン四重奏曲。 トロンボーン特有の明るくユーモラスな響きによって、客席もオケの団員からもオオウケ。 これを聴けたのは本当に儲けものであった。 来てよかった、アンコールを待っててよかった。 そして最後はもう定番となった花石氏のスネアドラムが客席を一周するラデツキーで幕。

自在に伸縮するリズム、アクセント、そしてたたみ掛けるような迫力など、どれをとっても本名流がよく出た素敵な演奏会だった。 常任指揮者を離れても本名さん指揮による大阪シンフォニカーをもっと聴きたい。