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芦屋交響楽団 第54回定期演奏会

自信に満ち情熱的なツァラツゥストラ戻る


芦屋交響楽団 第54回定期演奏会
2001年2月17日(土) 19:00 ザ・シンフォニーホール

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏より」夜明けとジークフリートのラインへの旅
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D.417「悲劇的」
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

(アンコール:ワーグナー:ワルキューレの騎行)

指揮:田久保裕一

芦響の2001年最初の定期はツァラトゥストラ。 この仕組まれたプログラムを振るのは大阪シンフォニカーで2度聴いている田久保さん。 大阪シンフォニカーでは伴せものだったので、田久保さんがどのように芦響をドライブするかに興味あったが、とても丁寧な指揮ぶりながら、オケの自発性をよく引き出して情熱的なツァラトゥストラを演出していた。 オケはさすがに機能的でかつパワフル、これがアマオケのレベルか、と思えるほど。 ただシューベルトではほんの若干だが乱れる場面もあってやっぱり人間だったのかと安心したほど(ちょっと大袈裟)。 しかし本当にいつもながら巧いオケであった。

オケは対抗配置(ただし管楽器は通常配置)でコントラバスが9本並ぶ。 ワーグナーはおごそかで落着いた響きで始まった。 ワルキューレの騎行の動機までくると充分に引き締まった響きながら底力のある音楽、旅立ちのホルンも決まって、さりげなく巧い。 弦楽器も自在に強弱が付いてうねるようであって、とにかくオケから出てくる音楽に自信がみなぎっている。 見事なワーグナーだった。
シューベルトの交響曲第4番。 コントラバスが5本になって前に移動し管は2管。 田久保さんがプログラムに書かれた、挑戦的な面に対するオーソドックスな面、機能的な面に対する叙情的な面としての選曲だったが、ここが芦響の弱点だったのか、とちょっと安心させられるような演奏だった... といっても全く崩れていないし弦と木管のアンサンブルなどとても見事だったけれど。 第1楽章はやや明るい音色での開始。 コントラバスが引き締まって1本に聞こえる。 主題が回帰してからのトランペットがやや不安定だったかな。 この楽章も含めて全体的にきっちりと演っているという印象で、ややシューベルトらしい歌に欠けるような感じがした。 第2楽章では指揮棒を離した田久保さん、冒頭のオーボエの対旋律を始め木管と弦楽器のかけあいにオケの巧さが滲み出ている。 ここではホルンちょっと突出した感じに聞こえたのが(ややピッチが高い?)残念だった。 第3楽章で印象に残ったのは吹響の副指揮者の新谷さんのトランペット。 ピストン式に持ち替えて攻撃的な主題を支えていた。 ここまでくるとオケも随分とこなれてきたみたい。 そして第4楽章になると弦楽器と木管楽器の対話がぞくぞくするほどの巧さ。 これにパンチの効いた全奏など、これまでどこか借りてきたネコ的な演奏みたいに聴いていたが自信をもったクライマックスとなった。 芦響は難しいパッセージよりも単純な音型は苦手みたい... そんなことがなんとなくわかって、このオケにも弱点があるのかと変なところで安心もした。
さてその難しいパッセージがわんさと出てくるツァラトゥストラ。 堂々とした「日の出」の場面から芦響らしさが全開。 CDやレコードでよく聴く部分だが、パイプオルガンの重低音からトランペットの主題の絢爛さまで実演にはやはり敵わないのは判ってはいるのだが、これがアマチュアのレベルかといつもながら感心してしまうほどの演奏。 そのあまりの巧さにちょっと呆然として「後の世の人々について」の冒頭を聴き流してしまったほど。 ようやくビオラがとても綺麗に響き、弦楽器とオルガンによる賛美歌風の「宗教の主題」となってとても広々として気持ちで目がさめたみたい。 いやはや。 「科学について」では学問を嘲笑するかのようなクラリネットがエキセントリックな感じにならず、どこか優しさも感じたのは田久保さんの人柄だろうか。 「病より癒えゆく者」での難しいフーガはとても情熱的であったし、ここでの「自然の主題」も力強く堂々と決まった。 病から癒えたツァラトゥストラを嘲笑するかのような木管楽器の響きもあまり冷たくは感じなかった。 「舞踏の歌」ではヴァイオリン・ソロ(西川理紗さん)が厭味のない音色でオケともよくマッチしていたし、この前後のホルンやトランペットのソロも見事だった。 音楽はクライマックスにかけて更に熱を帯びてきたが、決して力にまかせて暴走することはなく、充分に抑制が効いている。 高い集中力がよく持続できるものだと感心しながらのエンディングとなった。
田久保さんは終始丁寧な指揮ぶりであった。 変に見栄を切ったり煽ったりするような派手さはないが、オケの自発性を充分に尊重し、情熱的にツァラトゥストラを演出していたと思う。
さて、次回の定期演奏会は本名徹次さんを迎え、ウェーベルン、ベルク、ツェムリンスキーというまったく芦響らしい挑戦的なプログラム。 これもまた聞き逃せない。