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吹田市交響楽団 第52回定期演奏会

マーラーの余韻を感じさせた自信に満ちたドヴォルザーク戻る


吹田市交響楽団 第52回定期演奏会
2001年4月28日(日) 18:00 吹田市文化会館「メイシアター」大ホール

ブラームス:悲劇的序曲ニ短調 作品81
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88 (*)

(アンコール:ドヴォルザーク:スラブ舞曲集より第10番)(*)

ヴァイオリン独奏:船津真美子
指揮:新谷 武

指揮:米山 信(*)

ドヴォルザークの交響曲第8番がとても素晴らしく、僕の中では前2曲が完全に飛んでしまった感じの演奏会であった。 1月のマーラーの復活で力演を聴かせた吹田市交響楽団であるが、このドヴォルザークはそれ以上の出来ではないだろうか。 いわば手垢にまみれたような曲だし、牧歌的にやるのかな、と演奏会前には漠然と思っていたのだけれど、あにはからんやオケからは真摯で熱い響き。 それが技巧的にもばっちりと決めて一糸乱れない。 そのためかどことなくマーラーの響きにも似てストイックに感じ、そうかぁ同時代だなぁ... と気付かされた。 この曲を初めて聴くような新鮮な感動を与えてもらい、正直びっくりもしたし感動した。 やはりこのオケでマーラーの復活をやったことで飛躍したのだろうか、掛け値無しで本当に素晴らしいドヴォルザークの交響曲第8番だった。
そのドヴォルザークの交響曲第8番は、棒を持たない米山さんの指揮であった。 音が出た瞬間から、前2曲とは響きの厚さや艶が違う。 音に色を感じる。 そしてその色は中間色よりもやや寒色であろうか。 フルートによる主要旋律の提示も媚びるところがなく、このあとの盛りあがりの部分でもオケの各パートが一丸となって畳み掛けるような迫力である。 とくに弦楽器の各パートがよく揃っているので豊穣な響きがするのだが、切り返しが速くて曖昧さがみじんもない。 フレーズの最後までよく揃っていて、それがややクレッシェンド気味でばっちり合わさっていたりするとどことなくニヒリスティックにも聞こえるのである。 これってマーラーの響きに似ている。 そう思うとオケ全体にうねり感もあってどこかマーラーっぽい。 確かに同時代なのだな、と気付かされ目から(耳から)ウロコが落ちたようであった。
第2楽章のアダージョも冒頭の弦楽器による雄大な旋律がどこかストイックな感じがする。 このあとのフルートやクラリネットも抑制がよく効いて同じような響きで統一されているのが素晴らしい。 この楽章もぎゅっと絞り込んだような印象である。 独奏ヴァイオリンも甘さがなく、展開部の前だろうか、低弦楽器とホルンがよく合っていたのもまた印象的だった。
第3楽章は哀愁よりも自信に裏打ちされたようなワルツ。 各楽器の間の受け渡しもきちんと決まっている。 やはり弦楽器がよく練り上げあげられていたのが印象的で、この楽章ヘタをするとお涙頂戴にもなりかねないのだが、遥かで悠久な感じがしていたのが素晴らしい。
アタッカで入った第4楽章の冒頭のトランペットが輝かしい響きに余韻が加わっていてとにかく巧かった。 これに続くチェロによる変奏された主題とその後ろでつけているコントラバスによる開始も素晴らしい。 この後の舞曲やコーダの部分に耳を奪われがちになるけれど、その部分への提示となるこの重要な部分がきちんとしているので気持ちも自然と高まっていく。 あとはオケの各パートが怒涛のような盛り上がり。 だが各楽器とも野放図に鳴らすことはなく特にティムパニが要所を小気味良く締めていたこともあって見事なエンディングに結びついていた。
さて冒頭のブラームスの悲劇的序曲は、管楽器がやや粗けずりだったのが残念だったが、弦楽器主体の層の厚い演奏だった。 抑えていたティムパニもコーダの部分で待ってましたとばかりの強打が印象的。
続くメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、船津さんの透明感のあるヴァイオリンとそれによくつけていたオケが印象的。 船津さんのヴァイオリンは多少堅さを感じたが第3楽章の冒頭から足を踏み込むなど力も入って音に艶がずいぶん乗ったように思う。 とくにこの楽章でヴァイオリンとオケが会話する場面がオケの各楽器も楽しげな明るい音との会話となっていてとても面白く聴けた。
このように前2曲はほとんど飛んでしまった感じがするが、どの演奏もアマオケらしく真摯な演奏だった。 しかしドヴォルザークの交響曲第8番は完全に次元が違っていたようだ。 じつに素晴らしく自信に満ちた演奏であった。