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京都大学交響楽団 第169回定期演奏会

これまでと違う京大オケの印象戻る


京都大学交響楽団 第169回定期演奏会
2001年6月18日(月) 16:00 吹田メイシアター・大ホール

シューベルト:「ロザムンデ」序曲
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
ブラームス:交響曲第1番 ハ長調 作品68

指揮:北原幸男

金聖響さんや阪哲郎さんの指揮のもと、舌をまくような技量とパワフルな熱演・爆演を聴かせてくれた京大オケであったが、今回は北原さんの指揮のもとで非常に緻密で上品な響きのオケに変身していたようだ。 力がいっぱいに漲るような場面においても、北原さんの指揮のもとで常に響きを統一し上品に纏めあげていたのが印象的であった。 しかしブラームスではここまで個々人が巧いとなると更に全体をたっぷりと響かせて人生の哀歓のようなものまで欲してしまうのが(学生オケに対しては)ちょっと間違っているのかな... などと思えてくるほど丁寧できちんとした演奏が展開された。 これまで数回聴いてきた京大オケとはまた違う面を聴かせてもらった演奏会であった。
まずはロザムンデ序曲、ぐっと抑えられたような開始。 弦楽器は爽やかで、オーボエ、クラリネットなどが穏やかで上品な響きで色を添える。 ただ開演10分前に会場に到着したこともあって1階席の後から5列目しかも右隅の席のためかやや音像が遠い。 いつもならもっと音が前に飛んでくるのに... と思っていたが、曲が進んでもいつものように力で押すような場面はなく、実に丁寧に音楽を展開して終わった。 若干その丁寧さを乱すような京大オケらしくないミスがあったのが残念だったが爽やかに演じきったような演奏であった。 ちょっとこれまでと印象が違うなぁ... と思っていたが、次ぎのローマの噴水もまた絢爛豪華になるかと思っていたが、北原さんの趣向であろうか、この曲もとても丁寧で緻密な演奏であった。 オケにとっても可哀想だったのは、最後のメディチ荘の噴水で夜の帳がもどってくるエンディングでフライング拍手があったこと。 せっかくの深い夜の雰囲気が醸し出され、もっと堪能したかったのだがいたしかたない。 さて最初のジュリアの噴水は、丁寧な木管アンサンブルと緻密な弦楽合奏によって冷やりとした朝の雰囲気がよく現れていたのが印象的。 なかでも柔らかい音のクラリネットが素晴らしかった。 トリトーネの噴水はなんと言ってもホルンの斉奏が力強くて巧い。 しかし金管によるファンファーレも力で押し切るのではなく、力よりもきらびやかさで上品に纏めあげていたのが印象に残った。 トレヴィの噴水も先の部分と同じく力強さのなかに常に上品さを漂せていた。 そしてクライマックスまで弦楽器も一糸乱れず弾ききっていたのも印象的だった。 最後のメディチ荘の噴水では独奏ヴァイオリンが郷愁を感じさせる響きで好演していたがやはり席の関係からか音像が少々遠かったのが残念。 フルート、クラリネットの物憂げなメロディに弦楽器の深い響きによって夜の帳がもどってくるエンディングは実に見事であった。 上品で丁寧にまとめあげた総決算のような演奏であったのだが、最後の最後にフライング拍手があって興をそがれてしまったのが返す返すも残念。 もっともっと余韻を楽しみたいような上品で素敵な演奏であった。
さて気を取り直して聴いたブラームスの交響曲第1番は、さすがに熱のこもった音楽が展開された。 しかし個々のソリストの技量は高く、また弦楽アンサンブルも実によく纏まっていたのだが、少々行儀よく無難に纏められたような印象も持った。 京大オケならではの巧さに加え、熱演・爆演を期待していたせいもあって、ちょっと聞き手との方向性が違っていたみたい。 それに聴き慣れた曲であっただけにハードルが高いこともあると思う。 しかし決して下手だとかやる気がないという問題とは正反対であることを付け加えておく。 さて、第1楽章は堂々として熱の篭もった開始だったが、情や勢いに流されない確固たる自信のようなものを感じる。 全曲を通じて思ったのだが、ティムパニの音に表情が感じられて実に巧いのが印象的だった。 オケを纏める要のパートであり、ここがしっかりしているので曲の纏まりが実に良くなっていたと思う。 さて北原さんはややフレーズを短く切るように曲を進めていったようだ。 オケの若さも手伝うのだろう、もたれるような部分がなく、クライマックスでも低弦がきちんと揃って芯になり余力をも感じさせるエンディングであった。 第2楽章はそんな低弦のずしりと重い響きから粘りを出してきた。 オーボエのソロが巧かったのも印象的。 ヴァイオリンのソロは艶やかであって繊細であるが線の細さを感じさせず全体によくマッチしていたと思う。 あとホルンもとうとうと吹ききって立派であった。 第3楽章はやや抑え気味の印象を持ったが、木管アンサンブルとくにクラリネット、ファゴットが優しい響きの巧さで光っていた。 あと弦楽器の裏で吹くホルンが巧かったのも印象に残った。 アタッカで入った第4楽章はピチカートがよく揃って気持ちよく、場面転換もスパッと決まっている。 個々のソロは巧くまた弦楽アンサンブルも乱れずに巧いからかちょっと行儀の良さを感じてしまう。 クライマックスにかけて北原さんはヴァイオリンパートに煽りをかけ多少開放された感もあったがやはりオケ全体がよく整えられてのエンディングとなった。 よく纏まってはいたが多少の食い足りなさを感じたのも事実。 そもそも、ここまで個々人およびオケ全体が巧いなると更に全体をたっぷりと響かせて人生の哀歓のようなものを欲してしまうのが(学生オケに対して)ちょっと間違っているのかな... などと思えてきた。 それほどに丁寧できちんと纏め上げられたようなブラームスであった。