BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
大阪シンフォニカー交響楽団 第75回定期演奏会

ガブリリュクくんの超絶技巧の結婚行進曲に驚かされた戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第75回定期演奏会
2001年7月13日(金) 19:00 ザ・シンフォニーホール

ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488

(アンコール:メンデルスゾーン/リスト編曲:結婚行進曲<ホロヴィッツ版>)
(アンコール:ベルリオーズ/リスト編曲:ラコッツィ行進曲<ホロヴィッツ版>)

メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 作品90「イタリア」

ピアノ独奏:アレクサンダー・ガブリリュク
指揮:曽我大介

今回の定期演奏会では、ガブリリュクくんの超絶技巧の結婚行進曲に驚かされたことと、メンデルスゾーンのイタリアの中間楽章以外は特にピンとくるところがなかった。 別に悪い演奏ではないし、皆さんそれぞれに大変に巧いのだけれど、それぞれに想い入れのある曲でもあって、個人的なハードルを超えることはできなかった。 思いかえすと、ザンデルリンクが就任したころの大阪シンフォニカーなら、鳴らないオケが叱咤され、倒れんばかりで猛進するような演奏に感動もしたのだが、現在のシンフォニカーの巧さなら勢いがあっても個人が巧くてももう満足できない。 プラスアルファに期待したい。
リエンツィ序曲は、プログラムにあったようにイタリアを意識したような演奏であった。 出だしは集中力を高めるたためかやや神経質に響いていたように思う。 リエンツィの祈りの曲となる主題はゆっくりめだったろうか、重い響きのティムパニも加わるがあまり重厚な感じがしない。 弦楽器・管楽器・打楽器が響きがきちんとブレンドされていないようにも思えた。 ズレているという問題ではなく、互いの奏者を意識せずにただ前に向って音を飛ばしているような感じに聞えた。 マーチの出だしも軽めであった。 盛りあがってきてもやはり音はより前に飛んでくるため重厚さは感じられず音圧による元気さだけを感じる。 そしていつものパワフルな鳴らせかたで終わった。 決して下手な演奏ではないが満足はできなかった。 纏まり感があまり感じられなかったのもイタリア的だったからだろうか。 それならもう少し伸びやかにやって欲しかったように思った。
モーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、フェスティヴァル名曲コンサートでの佐々由佳里さんのピアノとザンデルリクの指揮による霊感を感じるほどの演奏が未だに忘れられない。 このため、これを基準に聴いてしまうと今回の演奏もよくやってはいたが、満足できるものにはならなかった。 そもそもこの曲は、ピアノ、弦楽器、管楽器がチャーミングに会話しながら一体となって進むところが好きなのだが、ガブリリュクの柔らかいタッチのピアノと曽我さんの指揮による勢いはあるがアンバランスに響くオケの響きではいただけない。 これは年季の差だろうか。 ただ常に積極的に演奏されていたために眠くはならなかったのが幸いだった。 第1楽章はやや早めの開始だったがどこかせかせかとした感じがした。 しかし独奏が入る前にヴァイオリンが執拗に主題を繰り返す部分では逆にフレーズの切り返しが甘く処理されてことで、今回の演奏の魅力は半減。 次ぎにピアノ独奏だが、ガブリリュクはタッチがとても柔らかいのが印象的だった。 これも僕がこの曲に持つイメージとはちょっと違う。 ややスタッカート気味でケレン味のないピアノが好きなのだ。 しかしガブリリュクは非常に丁寧にこの曲を演奏しようとしていたようで好感が持てたのだが、ややもすると元気のあるヴァイオリンの音に覆われてしまいそうになっていた。 あと不思議に思ったのは、何故か封じ込められたように囁く管楽器ソロである。 終始管楽器は裏方のように響いていた。 これでは会話もうまく成り立たないではないか。 このアンバランスさは結局最後まで続いた。 あとを簡単にふりかえると、第2楽章は哀愁よりも寂しさを感じた楽章だった。 オケの響きは間引かれたようだったし、ピアノはタッチが軽いためか深く沈まない。 深刻にならなくていいといえばいいのだが。 第3楽章は一転して力強いピアノになったが左手のリズムにあまり芯が感じられない。 あと速いフレーズになるとピアノが少々荒っぽく聞えた。 しかし管楽器が押さえ込まれたままなので冒頭のファゴットのフレーズも遠い。 残念。 足早になると弦楽器の透明感がより少なくなり切り返しは甘い。 ピアノ、弦楽器、管楽器この三者の会話は時間的には合っているのだがバラバラな印象のまま足早に演奏が終わった。
吃驚したのがアンコール。 ガブリリュクくんって単にタッチの柔らかいリリシズムの溢れる青年かと思ったら、その実は超絶技巧の持ち主だった。 結婚行進曲の後半は圧倒的な演奏だった。 速くそして力強くなっても少々くぐもったような響きが変わらず全く騒がしく感じさせないのが凄い。 モーツァルトを丁寧に弾いていた反動で、このような技巧的な曲を2曲もアンコールしたのだろうか。 完全にモーツァルトが消し飛んでしまうほどのアンコールであった。 会場からの拍手もモーツァルトよりも格段に大きく、そして満足した拍手喝采であった。
イタリア交響曲も思い入れのある曲である。 勢いと丁寧さを併せ持った演奏を期待していたが、こちらはほぼ満足のできる内容であった。 弦楽器と管楽器も見事にブレンドされていた。 これまでのは単なる練習不足による練り込みが足りなかっただけなのだろうか。 なおこの曲では特に第2・3の中間楽章の演奏が充実していたと思う。 勢いよりも丁寧さを基調にしたような演奏に好感が持てた。 しかしこれはこれでよかったのだが、そのためかフィナーレがややあっさりと終わったことで、感動もやや薄くなったようでもあった。 なかなかに難しいものである。 さて第1楽章は弾けるように始まってグィっと惹きつけられる。 ここでもやや足早で駆け出しているのだが凝集力があるのでモーツァルトの時のような不満は感じられない。 また管楽器もよくブレンドされているし、ヴァイオリンも透明感があって低弦のピチカートも芯を感じさせるように綺麗に揃っているので気持ちがいい。 アンバランスさも微塵も感じられない。 そして何より勢いで流さないような意気込みを感じるのが素晴らしい。 ここでは速いフレーズになるとやや鋭角的にも響く面も感じられたが、続く中間楽章では透明感のある演奏に仕上がっており満足した。 第2楽章ではヴィオラの響きが充実していて魅力的だったことに加え、巡礼の歌とも言われるコントラバスの響きが明瞭であって期待どおり。 やはり曽我さんがコントラバス出身だからだろうか、この楽章はこのコントラバスが芯にならなくては満足しない。 おまけに木管楽器もまろやかに加わってきたので大満足。 続く第3楽章もまた低弦が芯となった力みのない弦楽アンサンブルが見事であった。 非常に丁寧なメヌエットで、ホルンの響きも非常に柔らかかったのも印象的。 トランペットも刺激のない響きで応えており、この2つの楽章はとても充実した演奏であった。 アタッカで入った終楽章は力強くキレのよい開始。 ここでもヴィオラパートが奮闘していたことが印象に残っている。 ただここでは曽我さんは勢いをクールに制御していたようであった。 思わずオケ全体が駆け出しそうになるところを曽我さんが押しとどめてような感じであったろうか。 あくまでも丁寧に演奏しようとしているようであった。 いつものシンフォニカーならもっと鳴らすのだろうが。 しかし反面後半の速いパッセージではやや低弦が薄く感じられたこともあり、どこかあっけなくあっさりとフィナーレを向えて終結してしまったようであった。 最後はもうちょっと見栄を切ってもよかったのではないかな。 なんとなく感動が薄くて惜しい感じがした。
勢いがあったらあったで深みに欠けるように思うし、あっさり終わると感動が少ないと言うなんてフトドキ者なのだが、個人的な思い入れが多く、聴き馴染みのある曲でもあっただけにハードルが高かったということで今回はご勘弁願いたい。