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大阪市民管弦楽団 第56回定期演奏会

真摯でかつ流麗なラフマニノフの交響曲の世界に陶酔した演奏会戻る


大阪市民管弦楽団 第56回定期演奏会
2001年9月2日(日) 14:00 ザ・シンフォニーホール

リスト:交響詩「前奏曲」
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 作品56a
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 作品27

指揮:清水宏之

アマオケらしく真摯でかつ流麗なラフマニノフの交響曲の世界に陶酔した演奏会であった。 指揮者の清水さんは終始大きな分かりやすい指揮ぶりでオケをリードし、各パートにたっぷりと表情を付けて、またオケもそれによく反応した大熱演であった。 甘美なメロディもアマオケらしい真摯な演奏で甘さが抑えられた歌謡的な面と、機能的で器楽的な両面がしっかり描き分けられた素晴らしい演奏となって展開されていた。 また前半プログラムもとても充実した演奏内容で、全体としてレベルの高い演奏会であった。

まず特筆すべきメインプログラムのラフマニノフの交響曲第2番は、個人的にスヴェトラーノフ/ボリショイ劇場オケのロシア的な土俗的な演奏、またラトル/ロス・フィルのすっきりとした都会的な演奏ともに好きではあるが、今回の大阪市民管の演奏は、基本的に後者で都会的な洗練された音楽であったが、内に秘めた演奏にかける情熱はまさしく前者というべきであろう。 非常に充実した演奏内容であった。 さて第1楽章の冒頭、指揮棒を持たない清水さんが集中力を高めて振ると、低弦による少々くぐもった深い響きが会場に流れた。 自信に満ちた充実した響きである。 それに続く管楽器の呼吸、透明感のあるヴァイオリンと、ああ今日はいい演奏になるな・・・と直感したが、まさしくそのとおり、どの楽章も抑制がよく効いて、かつ歌う部分はしっかりと歌うとても聴き応えのある演奏が展開されていった。 特にこの楽章では、長大なメロディもぐいぐいと惹きつけて離さない集中力があった。 また全奏での盛り上がりも単に機械的に吼えるのではなく、じっくりと間合いを保って充分に惹きつけているため軽薄に響かないのが素晴らしい。 またそれに対立するような甘美なメロディとの対比や、各楽器間の響きの描き分けが見事で長さを全く感じさせなかった。 このような演奏を先導する清水さんの自在なコントロールもさることながら、指揮を実現したオケ全体の纏まりが素晴らしかった。 そして、めくるめく演奏の最後はコンパクトに叩いたティムパニに裏打ちされてすっと終わった。 第2楽章のホルンによる「ディエス・イレ」のメロディは力強く雰囲気充分。 これに続くヴァイオリンの疾走、金管ファンファーレも自信に満ちていて素晴らしい。 ただ個人的にはヴァイオリンがもう少し力強いのが好みであるが、決して弱くはない。 中間部もビシっと決まって、ズンズンと響く中低弦がオルガンの音のようでもあった。 スネアドラムが力強く入って緊張感が高まる。 主題が一段と力強く戻ってきても相変わらず音切れが良く、音楽がもたれることがなく、高い集中力を持続したままこの楽章を終わった。 第3楽章の前、クラリネットのトラブルのために少々間合いを置いてからの開始となったが、さすがに待たせただけのことはあって美しい響きにうっとりとした。 そしてこのクラリネットのようには目立たないが、しっかりと付けていたファゴットもせつせつと美しく見事であった。 また弦楽器群もこれらに負けじと分奏がきちんと仕分てメロディを受け継ぐ。 この楽章の清水さんは、これまで以上に全身で感情をこめてた指揮ぶりであった。 オケもまたそれにアマオケらしく真摯な響きで応え、甘美で少々もたれそうなメロディであっても内に秘めた熱い情熱を吐露するかのように真正面から訴えかけてくるようであった。 そのような美しく真剣な響きに余韻を充分に保ちながらこの楽章は閉じた。 先の楽章では指揮棒を持たなかった清水さんは、終楽章は指揮棒を力強く振ってリードする。 オケも力のこもった弦、響きが豊かなファンファーレ、コンパクトに叩いて要所を締めあげるティムパニなど、これまでと基本的には同じだがやや開放された感じで応えていた。 しかしいささかも音楽が弛緩することなどなく力強く歌いあげてゆく。 曲調が変わっても全員音楽が衰えることはなく充実した響き、そして集中力を高めてクライマックスに上りつめる。 わずかにヴィブラートをかけた甘いトランペットの行進曲のメロディが印象に残った。 そしてエンディングはゆっくりと力強く、全員一丸となって決然とこの曲を閉じた。 ほとんど誉めてばかりだが、掛け値なしに素晴らしい演奏で、真摯でかつ流麗なラフマニノフの交響曲の世界に陶酔した。
これに先だって演奏されたリストの前奏曲もまた、出だしから、深くしっとりとしたピチカートと、ほのかに明るさを感じさせる管楽器が見事に合わさって、CDなんかの録音では聴くことのかなわない生きた音楽を感じさせてくれた。 抑制のよく効いた管楽器、弦楽器の分奏もきちんと決まっていたのはラフマニノフと同じ。 ただ清水さんの指揮は大きな縦振りが基本であったこともあってか、やや教科書的にも聞こえるような面もあったのだが、ここまで言うのは酷であろう。 ラストの盛りあがりは響きを充分に内包させてスパッと終わってカッコよかった。
ブラームスのハイドン・ヴァリエーションは、とにかく明るく爽やかな印象である。 重厚さよりも纏まり感を重視したような演奏であり、各パートともに巧くこなしておりまたメロディの連携も見事であったのだが、やや迫力に欠けるようにも感じた。 巧いけれど上品でインパクトにはやや欠けるといったところか。 これもまたアマオケとしては贅沢な望みだと思う。 ともにラフマニノフが熱演であっただけに霞んでしまった感がある。 それほどに質の高い演奏会であった。