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豊中市民管弦楽団 第25回定期演奏会

谷野さんの指揮によく応えた誠実で全力投球の演奏会戻る


豊中市民管弦楽団 第25回定期演奏会
2001年10月21日(日) 14:00 豊中市民会館大ホール

エルガー:序曲「コケイン」(ロンドンにて)作品40
J.S.バッハ/レスピーギ編:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

指揮:谷野 里香

前回の定期演奏会のオール・フランス音楽プログラムでは爽やかで全力投球の演奏を聴かせてくれたが、今回のドイツ音楽もまた全力で誠実な演奏を聴かせてくれた。 谷野さんの指揮は振りが小さく、煽ったり、妙にテンポをかえて見栄を切るようなことはない。 どの曲もとても誠実にリードし、オケもそれによく応えていた。 とくにメインのブラームスの交響曲第4番は、アマオケなのでしみじみとした枯淡の境地にまではちょっと至らないけれど秋のブラームスの雰囲気は充分。 そして後半の楽章はため息をつくかのような弦・管楽器に熱が帯びてきて高揚感もあった。 広い会場に4割程度の入りであったが、今回もまた谷野さんの指揮によく応え全力投球の演奏を聴かせてくれた。

このオケの過去の演奏記録を見るとなかなか実演では聴けないような曲が散見され、これは聴く側にとっては大きな楽しみでもある。 今回はイギリス音楽のエルガーのコケインがそうで、誠実にロンドンの街を描写したような演奏だった。 やや繊細な感じで始まり、淡々と曲を進めていったが途中の管楽アンサンブルを主体にしたブラスバンドの部分での盛りがなかなかよかった。 そしてフィナーレのやはりブラスバンドの部分からロンドンっ子のテーマは更に力強く粘りも出ていたようだ。 座った席の関係からか(やや左寄り)弦合奏に艶があまり感じられなかったのが残念なこともあるが、全体的にもう少しエルガーらしく厚みが欲しかったような気がした。 しかしアマオケでここまで要求するのは酷だと思うが、そう感じたので言っておきたい。
レスピーギ編曲によるバッハのパッサカリアとフーガは、先のコケインとは違ってオケに厚みが増した。 低音金管楽器のうごめくような音に、すすり泣くかのような弦楽アンサンブル、とくに低弦が芯となっており、このオケ特有の誠実な演奏で曲を進めていった。 この曲で何と言っても光っていたのはビオラのソロだろう。 泣くかのように思い入れたっぷりな演奏で、この曲によくマッチしていたと思う。 全体的に弦合奏は鈍色(にびいろ)といった感じだろうか、華麗さを意識して抑えた演奏に終始していたようだ。 また各管楽器のソロ・斉奏も奥ゆかしい響きで、けっしてオケから突出することがないのがよい。 フィナーレの金管セクションも主体となって、派手さを抑えてバッハの世界を大切にするかのよう。 響きを内に満たした演奏となって終わった。
メインのブラームスの交響曲第4番も、全体的に鈍色の響きで誠実に曲を進めていったが、後半の2つの楽章は、これに熱が帯びてきて、ため息をつくかのような弦・管楽器による演奏に高揚感があっった。 誠実な熱演という感じの演奏であった。 各楽章を振りかえると、第1楽章は力を込めず優しい雰囲気での開始。 緊張からか弦楽器が少々ガサつき気味だったし裏で付けているホルンも僅かに乱れたのはご愛嬌。 さすがにオケのメンバーは緊張していたのだろうけれど、なかなかに柔和なブラームスといった感じとなって曲が進んでいった。 クライマックスでは、次第に熱が帯びてきたが決して性急にならないところが良い。 第2楽章の冒頭、ホルンと木管による序奏はばっちり決まり、第1主題のピチカートも息づいていた。 低弦の響きが終始芯になってしみじみとフリギア音階の部分を進め、ややフレーズをやや伸ばし気味にしながら、なだらかに曲を進めていったようである。 ホルンの斉奏などクライマックスは力強いものがあったが、やはりなだらかに戻り、木管楽器によるアンサンブルもメランコリックにこの楽章を終えた。 第3楽章は、これまでと違って力の入った金管楽器を主体とした主題の提示が印象的。 これまでとは随分と音の厚みが違ったのも印象的であった。 しかし音の厚みや大きさが増しても、谷野さんの指揮は小ぶりで煽るようなことはしないし、感情に任せるようなことなども無論なく、変わらず淡々と曲を進めていくような感じがした。 そしてティムパニの持続音を支えにし、息咳きらず、地にしっかりと足がついた音楽を進めてゆき、充実したフィナーレに結びつけた。 終楽章は、フルート、オーボエ、トロンボーンによる主題の呈示を見事決め、この楽章もまた充実した響きが展開された。 ここでも弦楽器はコントラバスが芯になっており、ヴァイオリンなどはややため息をつくかのようにフレーズを進める。 木管楽器のメロディの受け渡しも自然であった。 そしてフィナーレは各パートとも熱演となり、高揚感もこれまで以上であった。 しかし谷野さんの指揮はあくまでもコンパクトでよく纏めているという印象が強い。 そして盛りあがったフィナーレをスパッと切るかのような終結方法でこの曲を終えた。 会場からはブラボーも飛び出した。 前半はやや淡々としすぎているようにも感じたが、後半の楽章は高揚感もあって聴きごたえのある演奏内容となった。 オケは谷野さんを信頼し、谷野さんについていっているような印象ももった演奏会であった。