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グリーン交響楽団 第13回定期演奏会

優雅かつ誠実な熱演戻る


グリーン交響楽団 第13回定期演奏会
2001年11月23日(金) 18:00 ザ・シンフォニーホール

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」 序曲
ドビュッシー:交響詩「海」〜3つの交響的素描〜
サン・サーンス:交響曲第3番 ハ短調

オルガン:久保田 真矢

指揮:船曳 圭一郎

グリーン交響楽団の1年ぶりの定期演奏会。 昨年は十束さんの指揮、長谷川陽子さんのチェロで力強い演奏を聴かせてくれたのだが、反面大味な印象も持った演奏会であった。 しかし今年は船曳さんの指揮のもと、じつに優雅でかつ誠実な熱演を聴かせてくれた。 なかでもドビュッシーの「海」は、各パートがしっかりとしており横の連携も見事に決めて非常に聴き応えのある演奏だったと思う。 サン・サーンスのオルガン交響曲もまた誠実で力強い演奏が展開されていった。 全体を通じ、まろやかな弦楽器、特にヴィオラ・チェロ・コントラバスがしっかりとオケを支えていたし、管楽器もまた抑制をよく効かせてコンパクトに纏めあげていたのが印象的。 やや野放図にも聞こえた昨年とはうってかわったように優雅でかつ誠実な熱のこもった演奏だった。
タンホイザー序曲は、冒頭のホルンがわずかに震えたのが惜しかったが、クラリネット、ファゴットとのユニゾンからチェロに繋ぐあたり、ゆったりとした音楽が流れていった。 トロンボーンが主題を吹いて最初のクライマックスになるあたり、ヴァイオリンが鋭角的にならず優雅に伴奏を弾いていたように、全体的にまったりとした印象であった。 フィナーレでのシンバルも響きを早目に止めて豪快さよりも悠然した音楽となって幕をとじた。
交響詩「海」については、たしか中学の頃、音楽鑑賞の時間に始めて聴いてぐっときた印象が強いのだけれど、その後どんなレコードやCDで聴いても掴み所のない音楽として自分の中で定着してしまった曲である。 今回の演奏会前にもCDで予習をしたけれどこれを崩すことはできなかったが、今回の演奏会でようやく突破できた。 各パートがきちんと分けられ、しかも横の連携も見事に決まっていた充実した演奏で、ぐいぐいと惹き込まれていった。 とくに第2曲が移ろいやすい光りをよく演出できていたと思った。 先のタンホイザー同様にまろやかな弦楽器に、きらめき感を出したトランペットもよく調和していた。 この楽章、なかなかの熱演であったと思う。 さて前後するが、第1曲は叙情的な開始、活気づいてきたあとのオーボエとヴァイオリンのソロはとても繊細な感じ、このあとのフルートも巧かった。 第2部のチェロの主題は優雅な感じだったがコーダの金管コラールはティムパニととも力強く締め上げていたのが印象的。 第3曲は、低弦の締まった響きにより誠実な音楽になっていた。 ヴァイオリンはやや線が細いように感じたられたが、弦楽器全体がきちんと纏まって響き、そこに管楽器が熱っぽく演奏していた。 これほどまでに聴き応えのある「海」を聴けるとは思えなかったので、少々興奮気味で拍手をしたのだが、会場の拍手は最初こそ熱っぽいものだったがすっと引いてしまったのが残念に思えた。
サン・サーンスのオルガン交響曲もまた抑制がよく効いて、誠実な熱演であった。 第1楽章第1部の開始は透明感のあるヴァイオリンが印象的。 冒頭部はコントラバスの力強い響きにリードされた高揚感、オケが一糸乱れない切りかえしも素晴らしかった。 第2部は棒をもたない船曳さんのリードにより、豊かに響くオルガン・弦楽合奏にチェロ・コントラバスが参加するあたりがとても充実していた。 このあとヴァイオリンが主題を装飾的に弾くところが若干乱れて惜しかったが、コントラバスから始まるピチカートから冒頭の主題が再現されるあたりのオルガンと弦楽器の和音がなんと優しいこと。 第2楽章の第1部はよく纏まった充実した開始。 ピアノと打楽器は少し抑え気味。 再現部を見事に決め、このあと抑制をよく効かせたティムパニと金管ファンファーレから静寂が戻る。 第2部のオルガンの荘厳な和音がホール中に響く。 続くピアノはまた抑え気味。 ゆったりとあせらず音を重ねているよう。 フレーズをスパスパと切るように曲を進めているよう。 ミュートを入れたホルンにやや惜しい部分もあったが、弦楽器とくにチェロが雄弁で力強く終結部に向かって進んでいった。 フィナーレはコンパクトに叩くティムパニと誠実できちんと纏められたファンファーレによって力強く纏めあげて終わった。
全体を通じて、刺激的な効果を避けて誠実に音楽をつくりあげているという印象を強くもった演奏会であった。 見かけの壮麗さではなく、誠実に一つの音、一つのフレーズを積み重ねていった、そんな演奏でとても充実した気分で会場を後にした。