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奈良女子大学管弦楽団 第32回定期演奏会

女子大オケらしからぬ力の入った演奏戻る


奈良女子大学管弦楽団 第32回定期演奏会
2001年12月15日(土) 18:30 奈良県文化会館国際ホール

ベートヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲
マスネ:組曲第4番「絵のような風景」
チャイコフスキー:交響曲第1番ト短調 作品13 「冬の日の幻想」

指揮:牧村邦彦

女子大オケらしからぬ大音量と迫力をもってチャイコフスキーの「冬の日の幻想」が演奏された。 牧村さんは、大きな振幅をもって曲をリードし、オケもまたそれによくついて熱演を展開していた。 各ソロ楽器は決めところをきちんと纏め、オケ全体としてもメロディを巧みに浮かび上がらせるのは牧村さん真骨頂だろう。 盛りあがりがストレートで大味に感じることもあったが、そこまでこのアマオケに要求するのは酷というものだろう。 とにかく少ない観客ではあったがとても熱の入ったチャイコフスキーであった。
冒頭のフィデリオ序曲は、緊張のためか音楽が流れていかずどうなることかと心配したが、中盤以降持ち直した。 中盤以降は元気の先走ったような演奏でフィナーレをまとめあげた。
マスネの組曲は序曲とはうってかわって潤いのある音楽となった。 冒頭から息づいたピチカートで「行進曲」が始まった。 4つの主題を明るく纏めあげていたが、強音になるとやや荒さが感じられたのが残念であった。 「舞踏曲」は弦楽器と木管楽器の併せがよかったのが印象的で特にチェロによる主部が健闘していた。 「夕べの鐘」では冒頭のホルンによる鐘の音が力強くて牧村さんに押さえるように指示が出されたほど気合が入っていた。 ホルンの健闘もあり全体的に大きくて暖かい音楽となった。 情感をオペラ的にほとばしるように出させるのは牧村さんの得意とするところだろう。 最後の「ジプシーの踊り」は全体的にやや駆け足だった。 少々ヤケ気味にも聞こえる強奏により荒さが感じられたのが残念だった。 しかし総じて女子大オケらしからぬ力強さでよく纏めあげていた。
そんな力強さや熱さをふんだんに持ったチャイコフスキーの「冬の日の幻想」であった。 ソロ楽器もきちんと決めところを纏めて、熱い音楽がとうとうと流れた熱演であった。 第1楽章の冒頭、弦のトレモロからフルートとファゴットによる主題の呈示、ヴィオラから弦に移って徐々に力を増してくるあたりきちんと纏まっていて充実した開始だった。 第2主題のクラリネットと弦楽器の絡みあいもきまっていて素晴らしい。 このあとエネルギッシュに盛りあがる場面も低弦に重量感がある。 ティムパニも呼応するかのように重い響きであった。 欲を言うと音楽がストレートにもりあがって、弦楽器全体にうねり感が欲しいところである。 第2楽章は、ふくよかな導入主題から、フルート、オーボエによる哀愁のある主題にファゴットも巧く絡んで聴き応えがある。 第2主題のヴィオラも健闘し、弦楽器につぎつぎに渡されるメロディは懐かしさをもって暖かい。 牧村さんはここでもオペラちっくに主旋律にスポットライトをあててゆき、オケも十分にそれに応えていた。 そしてコーダのホルン・ソロも少々甘さをもって朗々と吹きはじめ、オケも絡んで徐々に馬力をあげ、唄いあげていくようだった。 第3楽章も熱い音楽がとうとうと流れていった。 とくに中間部のワルツは優雅さをもって抑揚をつける牧村さんとオケが一体となっていたように思う。 コーダのティムパニのソロ、チェロのソロもきちんと決め力強いリズムで締めくくった。 終楽章冒頭のファゴットのソロも哀愁がありオーボエのソロもうまい。 弦楽器にも憂いがただよい、ゆっくりと重く深く進んでいった。 テンポが変わりアレグロ・マエストローソの主部の高揚感も素晴らしく勇ましい。 トランペットとトロンボーンもきりりと締まった響きである。 第2主題のヴィオラも力強い。 ただ弦楽器が全体的に弾き飛ばし気味で、主題をまわす部分の繋がりや全奏での盛りあがったときのパッセージが惜しかった。 牧村さんはコーダの前で大きく音楽を振幅させてここに突入。 ティムパニの連打はコンパクトでなかなか素晴らしい。 全体的に大きな音楽となりがちなところをこのティムパニがよく締め上げて、フォナーレを充実したものにしていた。 そして最後はこれが女子大オケ・・・とも思えるほどの音量を発揮して幕を閉じた。 いつもながら少ない観客で残念だったが、とても熱の入ったチャイコフスキーの演奏に感心したコンサートだった。