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ならチェンバー・アンサンブル 第60回定期演奏会

丁寧で清澄・豊かで緻密なアンサンブル戻る


ならチェンバー・アンサンブル 第60回定期演奏会
2001年12月24日(月) 14:00 なら100年会館中ホール

パッヘルベル: カノン
マンフレディーニ: 合奏協奏曲 ハ長調 作品3-12
ヴォルフ=フェラーリ: 弦楽のためのセレナーデ
プッチーニ: 3つのメヌエット
ハウエル編曲: クリスマス・ファンタジー

指揮:今村 能

ならチェンバーらしく、丁寧で清澄・豊かで緻密なアンサンブルによるまさにクリスマス・ファンタジーなコンサートだった。 今年もまた今村さんの優しい口調による解説によってコンサートが進むアットホームな雰囲気のなか、今村さんは時には大きくうねるような表情をつけることもあって熱い演奏を展開していたが、オケはあくまでも上品で洗練されたアンサンブルでこれに応え、上品さを失わない響きを堪能させてくれた。
第1曲目のパッヘルベルのカノンは、第1・2ヴァイオリンは各3名、ヴィオラ2名、チェロとコントラバスは各1名、それにチェンバロが加わった演奏で、ヴァイオリンとヴィオラは立って演奏するスタイルであった。 若干あっさりした開始で、もっと響きが欲しいと思ったが、次第に演奏に熱が出てきて後半は見事なハーモニーを聞かせてくれた。 今村さんはフィナーレに近づくほどに大きく身体を動かして曲を盛り上げていった。 2曲目以降は、第1・2ヴァイオリン各4名、ヴィオラ3名、チェロ2名とコントラバス1名、それに曲によってチェンバロが加わる編成となった。 マンフレディーニの合奏協奏曲は、第1・2ヴァイオリンのソロの絡みを中心に真摯で敬虔さを感じるアンサンブルを聞かせてくれた。 チェロがガンバのように含みを持った響きとなり、またチェンバロがやや控えめな演奏で優しく木目の細かな素敵な演奏に仕上がっていた。 第3曲のヴォルフ=フェラーリの弦楽のためのセレナーデは、個人的に一番興味があって実演で聞きたかった曲だったが、今村さんはアントワープまで30キロの道のりを自転車でこの曲の楽譜を調べに行かれたとのこと。 期待が大きすぎたせいか、ちょっと冗長に聞こえた面もあって残念だったが、熱く緻密な音楽を聴かせてくれた。 第1楽章は、ばたばたっと飛び出したようで若干軽い出だしになってアレっと思ったが、今村さんは音楽を大きく振幅させながら人柄を感じさせる豊かな音楽に仕上げていった。 第2楽章もまた豊かで大きく優しい音楽で、どことなく懐かしさも感じた。 後半ちょっと冗長かな・・・と感じることもあったのが残念だった。 第3楽章はスケルツォオをおどけた感じで冗談のように・・・と説明されたとおりの演奏で縦ノリの音楽であった。 第4楽章は緻密な分奏による熱演になっていた。 熱演になっても温かみがぐんと増して決して雑にならないところが素晴らしかった。 休憩を挟んで、これも珍しいプッチーニが1930年に書いた3つのメヌエットは、とくに第1曲目が優しくまろやかなフレーズが流れる小粋なプッチーニらしさがよく出ていて、演奏もまたならチェンバーらしく清澄な響きを堪能させてくれてすばらしかった。 第2曲目は前曲と同様な感じの明るいメヌエット、第3曲目は繊細でチャーミングなメヌエットでゆったりと大きく振幅させていた。 いずれも豊かな歌とハーモニーの世界を上品に演出した佳演だった。 最期は、ならチェンバーの前常任指揮者デヴィッド・ハウエルさんが編曲されたというクリスマス曲のメドレー。 第1曲目は「もろびとこぞりて」のバロック調の編曲は、まったりとしたまろやかな演奏、カノン風に旋律が楽器間を渡っていくのが楽しい。 第2曲目は、チェンバロとヴィオラが鐘の音を模して「ジングルベル」のメロディが始まる。 ヴァイオリンの清澄な音もあいまって豊かで落ち着いたハーモニーと、各楽器のソロが素敵だった。 第3曲目はコントラバスがピチカートでリズムをとってジャズ風の「サンタが街にやってきた」、ゆったりとしたメロディとハーモニーで奏でられた「ホワイト・クリスマス」と続いて静かで流れるように曲をとじた。 下手をするとどこか臭くなるかもしれないところなのだが、今村さんとならチェンバーによる上品さを感じさせてくれ、まさにクリスマス・ファンタジーな気分を持って会場を後にすることができた。 来年もまた再来年もこのような演奏が聴けますように。