BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
大阪シンフォニカー交響楽団 特別演奏会「感動の第九」

終わってみれば大熱演の演奏会戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 特別演奏会「感動の第九」
2001年12月27日(木) 19:00 ザ・シンフォニーホール

モーツァルト: ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595
ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱」

ピアノ: 谷 千鶴

ソプラノ: 湯浅 契、アルト: 星野 隆子、テノール:小餅谷哲男、バリトン:田中由也
合唱: 大阪シンフォニカー感動の第九特別合唱団(合唱指揮: 清原浩斗)

指揮: 曽我大介

終わってみれば大のつく熱演で一年の幕を閉じたコンサートだった。 とにかく力の入った第九、これにつきる。 集中力も高くて、うねり・叫び・そしてとうとうと流れ出てくる音楽はどこまでも熱く、非常に聴き応えのある演奏ではあった。 しかし視点を変えると、ストレートすぎるほどに力を漲らせた結果、懐の深さや抑揚といったものをあまり感じさせないオケと合唱となっていた。 しかしこれが真摯で真っ直ぐなシンフォニカーらしいといえばシンフォニカーらしい演奏で一年を締めくくったことになる。 蛇足かもしれないが、演奏終了後に指揮者に指名されも立たなかったホルンの細田さん、第3楽章のソロが遠いなぁ・・・と思っていたら落ちてしまったのだろう、指名されても立たない謙虚さに代表されるように、どこまでもシンフォニカーらしい演奏会だったと思う。 なおこれに先だって演奏されたピアノ協奏曲は、谷さんのピアノが平板でかつフレーズの繋がりが悪い、というかきちんと弾ききれていないように思えた。 丁寧に細かく弾こうとして失敗して一本調子になっているのかなと思っていると不自然な力みも見せるところもあってバラバラ・・・ オケもヴァイオリンが練習不足からか早いパッセージで微妙に揃わなかったりして合わせていますといった感じになっていたよう。 しかしそれもこれも終わってしまえば第九の迫力にかき消されて印象に残らなくなってしまった。
そのピアノ協奏曲は8型(Vn各8名、Va:6名、Vc:5名、Cb:4名)という編成。 舞台左袖にTVカメラが出てきた。 1台だけだったしこの曲のみ収録していたので谷さんが記念として持ち込んだものだろうか。 さて演奏は申し訳ないが、個人的には全く失望した演奏となってしまった。 プログラムにはソリスティ・ディ・プラガ(Discoverレーベルに録音があるヴィルトージ・ディ・プラガと同じ団体か?)とモーツァルトの協奏曲を共演とあったので期待したのだが、体調が良くないのか、冒頭から響きに深さがなくて驚いた。 おまけにフレーズが唄わないので音がバラバラに区切られたようになって感心しない。 細かく丁寧に弾こうとしているようで、やたらにペダルをちまちまと操作していたが、フレーズに歌がないからせせこましいだけにしか感じない。 さてオケだが、序奏はまろやかな響きで始まったと思ったが、いかんせんヴァイオリンが細かく速いパッセージになると微妙に揃わない。 練習不足なのでは? と思っていたあとに先のようなピアノが始まったので、早々にリタイア気分になってしまいました。 カデンツァを少々期待したけれど、ここも歌いたくても歌えないようなもどかしさを感じるばかり、このあとのオケもやや一本調子でこの楽章を終えた。 第2楽章は切れ切れなソロで始まり、オケもそれに合わせてゆっくりと無難にこなしているようで室内楽が得意なのかな、と思ったけれどそれでもモーツァルトらしいウィットや煌びやかさは感じなかった。 またオケはヴァイオリンの響きが単調で薄くなる場面もあって何が起きたかと思う場面もあった。 第3楽章はちょっとゆったりとした始まりだったが、ここでも細かく弾いてペダルをちょこまかと操作しているが肝心の音が転がっていかずメリハリに欠けているのはこれまで同様。 カンデンツァも響きがどこか単調で深みも煌きも感じられない(努力しようとしている風だったが)、かといって晩年のモーツァルトの諦観を感じるなんてことはまるでなくこの曲は終わった。 個人的にハードルの高いモーツァルトのピアノ協奏曲ではあることを差し引いてもちょっとねぇという感じだった。
さて、休憩をはさんでメインの第九は、モーツァルトを払拭するかのような気合の入った集中力の高い演奏であった。 うねり・叫び・そしてとうとうと流れ出てくる音楽はどこまでも熱い。 合唱もまたストレートで力強く前へ前へと出てオケをも圧倒しかねない迫力があった。 一年の最後をしめくくるにふさわしい大熱演といって良いと思う。 ただ、少し視点を変えると懐の深さや抑揚といったものをあまり感じさせないオケと合唱となっていた。 しかしこれが真摯で真っ直ぐなシンフォニカーらしいといえばシンフォニカーらしい演奏で一年を締めくくったことになると思えた。 第1楽章の冒頭、気力を充実させての開始、とても集中力の高い演奏であった。 大きなうねりをもって恰幅の良い音楽である。 厳しさと雄大さを併せ持っており、しばし流れ出てくる音楽に酔わされた。 しかしこの楽章も後半にさしかかると曽我さんが顔を真っ赤にさせて更に盛り上げる熱の入れようで、やや若さが先走った感じも受けた。 フィナーレもベーレンライター新版のようにすっと消え入るようではなく、自信をもって堂々と力を溜めたような終始。 もうちょっと引くような面も欲しい感じがしたが、それを強く思ったのが第2楽章。 力強いティムパニの打撃により始まった音楽も、弦楽器が腫れぼったいような熱気に包まれている。 コントラバスが轟々と鳴っている。 ここはもうちょっとストイックに纏めて欲しいところである(時計じかけのオレンジのように怖いほどにして欲しいのだが)。 重い弦の音とタイトなティムパニに対比され、シンフォニカーの真骨頂でもある木管楽器群がまろやかなハーモニーを聴かせながら、やはり力を漲らせたフィナーレに突入し、ズンと重くこの楽章も終わった。 少々疲れてきた。 第3楽章が始まる前に、打楽器とピッコロが入場しチューニングを行ってからソリストが登場。 この楽章は内声部とくにヴィオラがしっかりした音で好演、少し熱が冷めたようである。 細かく聞いていると、響きがもっと欲しい面もあったが弦楽器の分奏がなかなか健闘してたっぷりとした音楽が流れていった。 ホルンのソロはやや遠く楽しめない、継ぎ接ぎで音楽が進んでいるようだ・・・と思っていたらホルンが落ちたのだろうか、演奏終了後に指名されてもソリストが立たなかった(謙虚なこの態度に拍手)。 ファンファーレがあって曲が熱くなってきた。 曽我さんは細かく振り分けているが、どことなく大味な印象。 コントラバスがやや鋭角的に演奏するなど、もうちょっと流れるようにもっと美しくして欲しかった。 アタッカで入った終楽章は、曽我さんの鼻息が聞こえるほど力の入った演奏で始まった。 重戦車のように音楽は進むが、コントラバスやチェロがよく引き締まってとてもタイトに聞こえる。 ストレートな迫力は満点。 ただフルート、オーボエがちょっとストレートに響きすぎて、重い演奏だが底がちょっと浅い感じもしたのが残念なところ。 主題もよく纏まって充分に荘重、そこにファゴットが牧歌的に絡んでちょっと解放されたかのように面白く感じた。 バリトン・ソロは声量・声質ともにあって堂々して巧いし、何よりもこのオケにあった声で歌っていて好感が持てる。 合唱は迫力満点だがストレートに突進してくるかのよう。 若干男声パートが突出した部分もあったが、なかなかの迫力である。 コントラファゴットから行進曲調の部分はやや早いテンポで進んだ。 テノール・ソロは声の通りがよくなかったので残念だったが、あとの部分では堂々と歌っていたので緊張があったのだろうか。 とにかく後は力の入った演奏が展開されていった。 曽我さんは身振りを大きくし、また大きな口をあけて歌いながらの合唱指揮をしていた。 そして左手の人差し指を一本伸ばして合唱団の集中力を高めていたようだが、逆にこれをしないと合唱が先走しらんかのような力の入った歌が続いていった。 ソリスト4人の合唱は、よく粒が揃っていて充実していたと思う。 そしてフィナーレは、ティムパニがリズムに乗って叩いて一気呵成に突入。 最後を飾るに相応しいこれまで以上に力の入った演奏で盛り上がって駆け抜けての幕となった。 大変な熱演であった。 もうちょっとメリハリがあって懐の深さも欲しいとは思えるのだけれど、素直にこの一年本当によく頑張ったなぁ、と思えるような感慨深さをも感じた演奏だったと思う。 一年の最後を締めくくるにふさわしい曽我大介と大阪シンフォニカーの第九演奏であった。