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大阪大学交響楽団 第78回定期演奏会

金洪才さんの人柄の滲み出た響きの厚い音楽戻る


大阪大学交響楽団 第78回定期演奏会
2002年1月14日(月・祝) 14:00 尼崎市総合文化センター アルカイックホール

ブラームス:大学祝典序曲 作品80
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

独唱:基村昌代

指揮:金 洪才

今年初めての演奏会は、穏やかで温かく人間味溢れる指揮者というイメージのある金洪才(キム ホンジェ)さんと、初めて聴く大阪大学交響楽団の演奏会となった。 大阪大学交響楽団は響きの厚いしっかりした演奏で金さんの良い面をよく出していたと思う。 そして素晴らしかったのはワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と愛の死。 前奏曲におけるオケ全体で表現した抑揚感や密やかさが素晴らしかったが、基村さんの素晴らしい歌唱による愛の死がとても見事で陶酔してしまった。 失礼だが、このような情感をたたえた素晴らしい音楽が聴けるとは思っていなかった。 今年始めての感動である。 演奏はどの曲もしっかりとしたもので、とくに芯の通った重厚な弦の響きが印象的で、金さんらしいヒューマンな音楽を聴かせてくれた。

大学祝典序曲はよく揃ったきっちりとした開始。 これはイケル、というのが最初の印象だったが、この予感どおり、最後まで充実した演奏となって曲が展開されていった。 このオケので印象に残ったのは弦の響きの厚いこと。 ただそれも曖昧でもたれたような響きではなく、芯がある。 よく訓練されているので、分奏がしっかりしていて、重厚さに寄りかかることがない。 学生オケらしく各声部をきっちりと弾いているので清々しい。 真摯な演奏だった。 またフィナーレでは打楽器の響きをきちっと抑制させているのでオケ全体がまろやかに響く。 力に任せて暴走せず、内に熱気をはらんでのフィナーレ。 最初から見事な演奏だった。
「トリスタンとイゾルデ」は、基村さんの深い響きによる歌とオケの厚い響きが実によくマッチした見事な演奏で、このような素晴らしい演奏が聴けるとは思ってもいなかった(失礼)。 まず前奏曲では前曲同様にチェロを始めとする弦楽器が大健闘。 抑揚があって密やかさもある。 どこかの楽器が突出することなく、オケ全体の響きが統一されているのが素晴らしい。 金さんの人柄も出ているような音楽であった。 そして前奏曲のフィナーレでのチェロ、コントラバスの響きの纏めかたも息を殺して聴くように見事だったのだが、このあとの基村さんの歌の素晴らしさに耳を奪われた。 基村さんの声の響きがオケの響きとよくマッチし、安定した歌唱はもちろんのこと深い情感のこもった歌が実に素晴らしい。 失礼だがこの演奏会で陶酔するとは思わなかった。 クライマックスの盛りあがり方もごく自然で、そして静かに引いていった。 このときほんのちょっとラッパが乱れたように聞こえたのが少々残念だったが、全体の素晴らしさに比べればささいなことである。 とにかく感動した。
ブラームスの交響曲第2番もよくまとまってヒューマンな感じのする演奏だった。 ただ後半やや演奏にキレがなくなってきたようにも思えたが、これまでどおり終始抑制のよく効いた熱の入った演奏だった。 金さんはさっそうと出てきて、さっと演奏を始めた。 中低弦がたっぷりと響くのはこれまでどおりだが、金さんの出てきかたと同じく、さっそうとした感じで曲が進んでいく。 ホルンもよく健闘しているが、少々他の楽器に比して響きが違って聞こえたような気がする。 木管のアンサンブルはやや控えめだが弦の響きによくマッチしている。 しかしこの曲では金さんはオケの自発性に任せているのか、クライマックスでは少々金管が突出したようにも聞こえた。 元気の良さといったところかな。 第2楽章では冒頭のチェロによる主題が少々ぎこちなく感じたのは気のせいか。 アクセントをかけていたのかもしれない。 この楽章では木管楽器のアンサンブルが素晴らしかった。 あとクライマックスでのティムパニがリズム感がよくソリッドに全体を引き締めていたのも印象的。 第3楽章もまた木管楽器のアンサンブルが素晴らしい。 明るい音色で自然にフレーズが絡みあい繋がりがよい。 弦楽器ではチェロやコントラバスのピチカートが優しい。 縦の線よりもアンサンブルを大切にしたような演奏である。 終楽章もすっと始まった。 盛りあがる部分もすっと盛りあがる感じ。 響きに厚みがあるが、キレがあまり感じられないので個人的には少々物足りない。 もっとも響きは厚いし音量も増してきて雰囲気は充分にありフィナーレに向けてもりあがってくる。 そして渾身の力をこめたフィナーレも感動的で音楽をしめくくった。 ただ個人的には音の切り返しの部分など少々キレが悪いようにも感じたのと、終楽章でうねるように指揮する金さんに対してやや反応が鈍いように感じた場面もあったが、けっして下手な演奏ではなく、充分すぎるほどに巧いオケなので欲も感じてしまうのである。 とにかくどの曲も実によくまとまった演奏で素晴らしく、とくに重厚な弦の響きのなかに金さんらしいヒューマンな音楽を聴かせてくれた。