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大阪シンフォニカー交響楽団 第78回定期演奏会

叙情性に富んだピアノと情感にあふれたオケによる素晴らしいラフマニノフ戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第78回定期演奏会
2002年1月16日(水) 19:00 ザ・シンフォニーホール

チャイコフスキー: イタリア奇想曲 作品45
プロコフィエフ: 交響曲第1番 ニ長調 作品25 「古典交響曲」
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30

(アンコール) ショパン: 夜想曲第13番

独奏: エピファニオ・コミス

指揮:曽我 大介

コスミ氏のナイーブで叙情性に溢れたピアノとオケの真摯な響きにうねりがブレンドされて素晴らしいラフマニノフのピアノ協奏曲だった。 終始、甘美なメロディも情にほだされて甘くなりすぎることなく、また情熱的な場面でも乱暴に弾き飛ばすことはない。 綿密に計算された音楽なのだが、情感があふれでてくる久しぶりに充実した大阪シンフォニカーの演奏に酔った夜だった。 ただ前半の2曲は個人的な嗜好性が合わないためにやや不満。 とくに古典交響曲はこの曲こそ所謂シンフォニカーらしい突撃を期待していただけに妙に抑えた表現になっており、アイロニー表現したかったのだろうが期待はずれだった。 しかし、終わり良ければすべてよし、といった演奏会だった。

イタリア奇想曲は、ロシア人が見たイタリアへの憧憬が現れている、とのことだったが、表面的な音楽の羅列に聞こた。 いわゆる(悪い意味での)チャイコフスキーらしい特に内容を感じさせないメロディが次々と現れてきた。 その範疇のなかで色々とテンポを変えて特徴つけようとしているようだったし、またソロはそれぞれに巧くて聴かせてはくれるのだが、空疎というか何というか・・・ 最後は激しい勢いで盛り上げていつものジャーンでは、いつものシンフォニカーやねぇ。 もっとも、それだけの曲なのかもしれないけれど、憧憬はどこいったのかな。
古典交響曲は、弦楽器を絞って(Vn1:10,Vn2:8,Vc:6,Cb:4)いたので、ここはシンフォニカーらしく飛び出してくるのか・・・ と期待していたら、ちょっと抑え目で優しいフレーズに吃驚。 バーンスタイン/NYPの録音に固執するわけではないが、ここはもうちょっとリズミカルにやってほしいところ。 気をとりなおして聴いていたが、フレーズに抑揚感があまり感じられず淡々と音楽を流してみたい。 後半ずいぶんとこなれてきたように思ったけれど。 第2楽章は、ゆったりとした音楽となり、端正さが感じられる。 中低弦のふくよかさが心地よかった。 第3楽章もたっぷりした音楽に起伏もあって面白くきけた。 終楽章は軽めの出だしにちょっと慌てる。 ここは疾走するとプログラムの解説にも書いてあるがそんな感じはしない。 かといって抑揚させている風でもなくどこか中途半端。 しかし音楽の縦の線をきちんとあわせながら曲を進めていくが、フレーズの区切れの部分でのフルートのキィ!という音が悲鳴に聞こえて耳障り。 終わってみると、なんだかなぁ、という感じだった。
ということで、あまり期待もせずに聴き始めたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番だったが、冒頭の重みを感じる弦としっとりしたピアノの響きで曲に没入し、あとはめくるめくラフマニノフの世界に陶酔していた。 ナイーブで叙情性に溢れ、しかし情に流されないコスミ氏のピアノと、真摯な響きにうねりもブレンドされた素晴らしいオケのサウンドが緊張感をはらみ、これらが最後まで途切れることなく素晴らしい演奏だった。 第1楽章の冒頭から重みを感じる弦としっとりしたピアノの響き、これに朴訥としたファゴット、憂いを含んだチェロがからんきて雰囲気充分。 めくるめく世界が始まりだった。 透明感のあるヴァイオリンも甘いメロディを聴かせる。 カデンツァは繊細で甘くかつソフトに奏でる部分には情感があふれ、ヴィルトージョ的な力感をもった部分では響きに深みを持たせた対比のさせ方をしていたようだ。 コスミ氏は基本的に前者の部分により多くの注意を払って演奏をし、どの場面においても、感情にまかせるようなことはなかった。 さて、主題がもどって再現部、ピアノの後ろでさざ波のように奏でられるヴァイオリンが心地よい。 しみじみとしたピアノにぐっときていたが、少々オーボエの音が突出したのにちょっと閉口する場面もあったが、しかしとても満足した。 第2楽章は哀愁ただよう弦楽器からオーボエソロ、そしてヴィオラの素朴な響きが続いた序奏に憂いを帯びたピアノが主題を奏でる。 情感があふれていてぐっとくる。 弦楽器もちょっと粘るようにしっとりと優しくピアノに絡みながら曲は進んでいった。 フィナーレに近づいてオケ全体がリズミカルに躍動を始めると、聴いている自分の身体も揺れてくるほど自然な盛りあがりとなり気持ちがいい。 たっぷりとした音楽であるがサラリとしている。 決然と終楽章に入ったところはシンフォニカーらしい思い切りの良さである。 ピアノは粒立ちが良いがよい、ちょっと小ぶりで強引さがないのがコスミ氏の特徴だろうか、しかしオケも華やかだが抑制がよく効いていてよく合っている。 とくにヴァイオリンに透明感があるのが素敵だ。 そして色々な主題が現れては消えるが流麗でニュアンスに富んでいてあきることはない。 そして最後の主題の盛りあがりはもうちょっとスケール感が欲しい気がしたが、それは欲張りなのだろう。 エンディングに向けて徐々に盛りあがってくると、ややティムパニがはやり気味だが全体的によく締めあげた音楽となり、力感あふれた終結となった。 ピアノ、オケともにじつに素晴らしい演奏で、ひさしぶりに大阪シンフォニカーの演奏会で酔わせてもらった。