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奈良女子大学管弦楽団 '02スプリングコンサート

アマオケによる音楽の醍醐味を存分に味わった演奏会戻る


奈良女子大学管弦楽団 ’02スプリングコンサート
2002年5月18日(土) 14:00 奈良県文化会館国際ホール

ドヴォルザーク: スラブ舞曲集より第9番、第10番、第6番、第8番
シューベルト: 交響曲第9番 ハ長調「グレート」

指揮:河崎 聡

昨年のサマーコンサートと同じく河崎さんの指揮のよる演奏会。 昨年はカリンニコフの交響曲第1番ではこの曲自身が持っている甘さが少々鼻につく場面においても叙情に流されることなく常に真摯な演奏態度によって爽やかさを演出してくれたが、今回のグレートは終始速いテンポ設定から堂々とした演奏であった。 申し訳ないがこのような密度の濃い演奏になるとは予想だにしなかった。 河崎さんは全体をよく聞いて纏めあげていくのがとても上手いようである。 気配りの行き届いた指揮、そんな感じがするほど恣意的にオケを煽る場面はなく、終始にこやかに、オケの主体性に任せるように指揮しながらも自然とオケをぐいぐいと乗せていったようだ。 特に後半の楽章ではメンバーが一斉に譜面をめくるバサッという音のなんと大きく力強いこと。 譜面をめくる時間も惜しいほど一心に演奏に打ち込んでいる様子がありありと伝わってくる。 またオーボエのメンバーは常に二人が一組になって同じように左右に揺れながらの熱演でありこれはまた木管のほかのメンバーも同様、8人が同じように左右に揺れながらの熱演は聴いていても見ていても気持ちがいいものである。 とにかくグレートは走りすぎた感もあるけれど、このオケから初めて聴くような豊かな響きとスケール感をもった大熱演であった。 アマチュアオーケストラによる音楽の醍醐味を存分に味わい、とても満足した気分。 素晴らしかった。

会場の奈良県文化会館大ホールの2階席中央最前列に陣取る。 1階席は3割程度の入りだろうか、2階席にいたってはパラパラという感じでいつもながらの寂しい客席である。 河崎さんがにこやかに登場してドヴォルザークのスラブ舞曲集から4曲が演奏された。 いずれも薄味でストレートに纏め上げたような感じの演奏だった。 第9番は、元気のある演奏だったが、中間部の民族的な味付けはさらりと流していた感じ。 第10番は、静かな悲しみをたたえたような開始だったがもうちょっとヴァイオリンに透明感があるとより素敵だったろう。 しかしチェロがいい感じだし木管アンサンブルもよく全体的にはよく纏まっていた。 第6番は、弦楽器の艶が増してとてもいい感じ。 ホルン、木管楽器も好調。 後半のオケの伸縮や主題の受け渡しも見事で今回の曲の中では一番良かったのではないか。 第8番は、前半最後の曲だからか元気な演奏となり音が前に前にと出てくるストレートな演奏だった。 よく纏まった熱演で幕となった。
休憩を挟んでのグレートは、冒頭こそざわついた感じがあったが主部からぐいぐいと調子を上げてきて、最後はこのオケから初めて聴くような豊かな響きとスケール感をもった大熱演で幕を閉じた。 その第1楽章の冒頭、ホルンの素朴な響きによる開始は決まっていたが、ちょっと速いテンポの序奏に統一感の無さを感じた。 ずいぶんと緊張していたのだろうか、盛り上がるにつれて徐々に調子をあげてきて主部に入ると演奏に熱もこもりこなれてきたようだ。 ティムパニの音は重いが控えめな音で曲を支え、トランペットが輝かしい音でアクセントをつける。 盛り上がるにつれて集中力が増してきて、のってきた、というのが手にとるように分かる。 河崎さんは、終始にこやかに全体をよく聴きながら「さあ、あなた」「はい、あなた」「そう、いいですよ〜」(と言っているのかは分からないが)全体を巧くまとめてオケを見事にのせているように見える。 決して煽ってはいないのだが、どんどんとオケの響きが増してスケール感が増して大熱演となってこの楽章を終わった。 演奏が終わったとき、聴いている僕もふっ〜と息を吐いてしまうほどだった。 第2楽章はそんな熱気をはらんだまま力強いチェロとコントラバスによる開始、艶のあるオーボエのメロディが素敵。 この楽章も速いテンポでぐいぐいと進んでいった。 途中やや金管と弦楽器のあいだに隙間を感じる場面もあったが、音楽に推進力があるので苦にならない。 力をこめたクライマックスでぐっと盛り上げてピタッっと止めて弾力のあるピチカートもカッコ良い。 シューベルトらしい美しさを感じさせながら熱っぽく終わった。 第3楽章は力強い。 これまでよりも響きに厚みが増すとともに少々荒っぽさも感じるほどほどの若さを前面に出したよう。 音楽は少々せっかちになっているけれど、バサッ一斉にめくる譜面の音が大きくオケのメンバーは一刻も先に進めたいという気持ちが勝っているようだ。 もう少しタメが欲しいとか、もうちょっと歌って欲しいという気もするけれど、譜面をめくる姿を見ていると、若さがあっていいじゃないか、と許せてしまう。 そんな熱気や一生懸命さをはらんで曲は進んでエンディグをバシッと決めた。 終楽章はぐいぐいと力を漲らせた大熱演となった。 オーボエの2人が同じように身体を左右に揺らせる、木管の8人が同様に左右に身体を揺らせる、見ていても気持ちがいいし全員一丸となったなった演奏は響きが厚くて素晴らしい。 弦の分奏も決まっているしリズム感もよく抑揚も充分についたクライマックスに金管も加わって集中力は高いままこのオケから初めて聴くような豊かな響きとスケール感をもった大熱演を形成して曲を閉じた。
終始走りっぱなしの演奏で、テンポ設定やら自分なりに好きな演奏の雰囲気とは全く違っていたし、また技術的な面でも飛びぬけて巧いとは思わないのだが(失礼)、そんな細かな色々なことが許せてしまうようなとても熱い演奏だった。 聴いていてとても気持ちが良かったし、アマチュアオーケストラによる音楽の醍醐味を存分に味わって満足した気分で演奏会場を後にした。