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奈良交響楽団 第41回定期演奏会

ホールの豊かな響きだけではない堂々としたブラームス戻る


奈良交響楽団 第41回定期演奏会
2002年5月19日(日) 14:00 やまと郡山城ホール(大ホール)

シューベルト: 交響曲第1番 ニ長調 D.82
ブラームス: 交響曲第1番 ハ短調 作品68

(アンコール:ブラームス:セレナーデ第1番作品11よりメヌエット)

指揮:藏野雅彦

朝からの雨も昼過ぎにはちょうどあがり、やまと郡山城ホールでの奈良交響楽団の定期演奏会に出かけた。 やまと郡山城ホールに入るのは始めてだったので、開場よりもちょっと早めに着くようにしたのだけれど長蛇の列が出来ていたのに吃驚。 1階席は早々に諦め、慌てて2階席に移動して中央左寄りの最前列に納まり、ようやくあたりを見渡す余裕もできたが、さすがに新しくて綺麗なホールは気持ちがいい。 廻りの皆さんもとても嬉しそうに見えるから不思議だ。 そしてステージ上のオーケストラの配置は、前回藏野さんが指揮された第38回の定期演奏会と同様に対向配置であり期待に胸もふくらむ。 さて1階席がほぼ9割、2階席も8割近く入って開演となったが、演奏は新しいホールの響きの豊かさに対向位置の効果もあって、低音の響きがズンズンとひびいてくる堂々とした演奏となり期待に応えてくれた。 特にコントラバスとティムパニが弾力のある響きで演奏を終始支えており、失礼ながらこれが奈良交響楽団の響きかと一瞬見まがうほどだった。 シューベルトは全般的にテンポを遅めにとったゆったりとした演奏だったが、ブラームスは振幅を大きく取って堂々とした演奏で、最後はオケが一丸となった熱演となって演奏会の幕を閉じた。 上からオーケストラを見ているのでよく分かるのだが、ブラームスではコントラバス前列の女性奏者の方が実に大きな身振りで弾いておられるのがとても印象に残った。 低音の豊かさはホールの響きだけではなく、このような熱演に支えられていたのだろう。 とても力の入った演奏会であった。

シューベルトの交響曲第1番だが、あれ!? これが奈良交響楽団の音? と失礼ながら思ってしまうほど、いつもとは違う響きに聴こえた。 響きが違うせいもあって個人的にはもうちょっと軽快に演奏して欲しい気がしたのだが、演奏自体は非常にたっぷりとした演奏で充足感のあるものだった。 対向配置というオケの配置から、チェロ、コントラバス、ティムパニといったオケの屋台骨となる部分の響きが芯になっていたことによるものと思う。 ただ配置上の問題として、全般的に第2ヴァイオリンが隠れ気味になっていたのが惜しい。 活発な第1ヴァイオリンとうまく対比できていたら・・・と感じた。 第1楽章はたっぷりとした響きによって始まって、分厚い弦の響きにチャーミングな木管が溶け合った序奏となって流れてゆく。 弾力をもったティムパニから軽快にヴィヴァーチェの主部に入ったがちょっと遅いテンポだろうか。 これまたチャーミングな第1主題とゆっくりと歌うような第2主題。 藏野さんはこの曲をゆったりと歌わせようとしているように思えた。 ちょっと間をもたせて入った再現部からまた堂々となって、ちょっと力のこもったコーダでこの楽章を結んだ。 個人的にはもっと軽快にやって欲しいところだったが、第2楽章もまたゆったりと響きを持続させるかのようなアンダンテであった。 中間部もゆったりとして慈しむように進められていた。 第3楽章は堂々としたメヌエットで、どこかベートーヴェンっぽさも感じる。 弾力のあるティムパニと芯のある低弦の響きによってそう思わされたのかもしれない。 中間部のトリオからはまたよく歌って流れるようになった。 アタッカで入った終楽章は第1ヴァイオリンによる軽快な出だし。 展開部あたりでゆっくりと歌ってからメリハリをもたせたヴィヴァーチェとなって盛り上げて、少々熱気を孕んだコーダとなって締めくくられた。 藏野さんは終始ゆったりと歌わせようとしておられたようで、オケもそれによく応えていたと思う。 ただ繰り返しになるが個人的にはもうちょっと軽快に演って欲しいような気がしたが、たぶん奈良県文化会館でこの演奏を聴いていたならもっと違った印象になったのではないだろうか。
ブラームスの交響曲第1番は、響きを内包した堂々とした演奏で、最後は熱演となって結ばれた。 上から見ているので、オーケストラのメンバーが必死に頑張っておられる姿が手にとるように分かるのだが、何といってもコントラバス前列の女性奏者の方がとても大きな身振りで弾いておられるのが強く印象に残った。 隣りの男性奏者の倍ほどの運動量だったのではないだろうか(倍とはちょっとオーバーだけれど)。 低音の豊かさはホールの響きだけではないこのような熱演に支えられていたと思う。 第1楽章は、ティムパニの弾力ある響きから充実した導入部であった。 響きを常に内包した合奏による序奏からコントラバスが力いっぱいの熱演でアレグロの主部になだれ込んだ。 弓使いに凄い気迫がこもっていて、しばらくこの女性奏者から目を離すことができなかったほどである。 しだいにオケもこなれてきたのか縦ノリのリズムを思わせるノリで展開部・再現部と進んで大きくもりあがったあとふわりと着地した。 第2楽章はゆったりとした振幅の大きな曲づくりが印象的だった。 オーボエやクラリネットのソロは綺麗で弦楽器もゆったりとした響きである。 ヴァイオリンソロは透明感のある可憐な響きでホルンの朴訥とした響きともよくマッチしていた。 第3楽章は明るく開放的な響きで始まったが、しだいに緊張感を増して盛り上がっていった。 後半、主題がもどってきたあとの盛り上がりでは若干力に任せたのか透明感が少し落ちたようにも感じる面があったが、アタッカで入った終楽章は、じっくりと腰を据えた響きの導入部からゆっくりと踏みしめるように曲を進めていった。 ホルンのソロは朗々とした響きであった。 藏野さんは終始ゆったりと大きく振ってオケもそれによく応え、じっくりと音楽を練り上げていた。 第1主題はここまで聴いてきた中で最高と思われるほど充実した響きとなってホールに響いた。 これまで隠れ気味だったビオラや第2ヴァイオリンもよく奮闘していた。 そして徐々にオケの速度が速まって力を増してくるとコントラバスの女性もまたすごい熱演を披露し、当然オケ全体もまた一丸となった熱演を聴かせてくれる。 そして主題が一回り大きくなって戻ってくると、藏野さんはより抑揚を大きく付けてオケを振幅させ、ロマン的な色彩を濃くした演奏でまたぐいぐいとオケを盛り上げて感動を呼び起こさせる。 そして最後は更に壮大で輝かしいフィナーレを形成して全曲を終わった。 最後はとても力の入った演奏で、藏野さんはずいぶんと疲れておられる様子だったが、とても充足した笑顔を見せられ、会場から、またオケからも盛んな拍手に応えられていた。 またオケの皆さんもとても満足した表情が印象に残った演奏会であった。