BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
かぶとやま交響楽団 第27回定期演奏会

見事なまでの演奏の統一感、凝縮された音楽戻る


かぶとやま交響楽団 第27回定期演奏会
2002年9月7日(土) 18:30 伊丹アイフォニックホール

チマローザ: 歌劇「秘密の結婚」序曲
ストラヴィンスキー: 「プルチネッラ」組曲(1920/1922/1949)
ドヴォルザーク: 交響曲第7番ニ短調 作品70

指揮: 柳澤 寿男

いつか聴いてみたいと思っていた、こだわり集団との噂の高い「かぶ響」こと「かぶとやま交響楽団」の定期演奏会に行ってきました。 演奏の自発性や自主性のため、団内指揮者による演奏会を行っていて、こだわりの選曲にウィンナホルンを揃えた演奏などなど・・・しかし、今回はそんなかぶ響の14年の歴史の中で初めてのプロ指揮者による定期演奏会であったとのことでした。 指揮者は新鋭の柳澤さん。 昨年大阪フィルでデビューし、年末には新日フィルの定期演奏会にも登場されているとのこと。 まさに1回毎の演奏に勝負を賭けてキャリアを登り詰めようとされている方でしょう。 そんなかぶ響の演奏会は、やはり期待に違わぬ実に素晴らしいアンサンブルの連続で舌を巻きどおしでした。 個人のテクニックの巧さもあったし、また小編成オケならではの纏まりの良さがよく出ていたとしても、響きの透明感、調和といったものが並のオケとは比較にならないほど素晴らしかった。 そして何より演奏全体に統一感があります。 自分たちが演奏しようとする音楽のイメージがしっかりとしていて、そして、そこに向かってメンバー全員が目標とする音楽に凝縮させようという努力がびんびんと伝わってきました。 まさに噂どおりのこだわり集団というのが頷ける演奏会でした。

さて、この演奏会では、ストラヴィンスキーのプルチネッラが一番素晴らしかったように思います。 このオケにとって、ストラヴィンスキーは手馴れた作曲家なのでしょうが、冒頭のシンフォニアの響きの豊かさと演奏のキレの良さ、またウィットに富んだ表現など感嘆ものでした。 これに続く部分も、オーボエのウェットな響きや、弦楽器の細かな表情付け、はっとするほどの思い切ったピチカート、快活な弦楽器ときちんとした管楽器のアンサンブルの妙などなど・・・ずっと巧いなぁと思いながら聴いていましたが、何より「凄い」と感じたのは、休みになったパートでも休んでいないところです。 単に数を数えて待っているのでもなく、他のパートの音をきちんと聴いて追いかけている姿勢を強く感じられたところです。 これにはちょっと感動しました。 なかなか出来ていそうでも出来ないことだと思います。 とにかく実に素晴らしいプルチネッラの演奏でした。
これに対してメインのドヴォルザークの交響曲第7番は、好き・嫌いの問題になると思いますが、僕にはしっくりこない演奏になりました。 確かにこの曲をこんなに巧く演奏しているのを聴いたことはありません。 またストラヴィンスキーのところで感じた演奏のキレの良さ、響きの調和、力強さもありましたが、縦ノリのリズムでダッ!と最後まで駆け抜けたような演奏でした。 巧い演奏だったので文句などつけようも無いなずのですから、これは好き・嫌いの次元だと思ってください(蛇足ですが、決して良い・悪いという問題ではありません)。 第1楽章の序奏の部分から低弦の切り返しが素早くて流れをスパスパと切っているかのように感じました。 またフルートのフレーズなども媚びないなぁと思って聴き始めたのですが、このまま最後まで駆け抜けていったのには少々驚きました。 また終楽章がやけに早いテンポでした。 拍をズラす場面でも、弦のアンサンブルが一糸乱れず、凄い速さで駆け抜けてゆきました。 その巧さには舌を巻くものがありましたが、逆に「そんなに急いで何処に行く」という思いも禁じ得ませんでした。 柳沢さんは、この曲だけでなく、すべて暗譜で振っておられましたが、振りが小さく全体の響きの調和に精力を注がれていたように感じました。 そのために旋律の流れよりも、その場の響きをコンパクトにきちんと纏めて推進力を持って次に次にと進んで行こうとしているように感じました。 終楽章で、ヴァイオリンに向かってさぁーと左手を横に伸ばしてもスッと断ち切ってしまうなど、明らかにそんな意思を持った演奏を心がけておられたのだと感じました。 最後まで豊かに歌うような場面はなくて残念に思いましたが、技巧的にはとても巧いドヴォルザークの演奏でしたし、統一感を最後まで維持しつづけたこと、そして何より大変な熱演であったことは特筆すべきと思います。 ただ(繰り返しになりますが)僕にはもうちょっとほっとするような場面が欲しかったなぁ・・・ということですね。
なお冒頭のチマローザの序曲も、基本的にこれまでと同じような演奏でした。 こちらはより小さなオケの編成でしたので(Vn1:5,Vn2:4,Vc:3,Cb:2)、ちょっと現代音楽風なクールな纏まりを感じさせた演奏になっていたようです。 なかなかお洒落な演奏だったと思いました。
いろいろと書きましたけれど、またいろいろな意味で興味深いオーケストラでもありました。 また機会があれば聴いて自分の感じたことが正しかったのかを確かめてみたいと思っています。