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芦屋交響楽団 第58回定期演奏会

重厚かつ繊細、熱くそして美しい合唱戻る


芦屋交響楽団 第58回定期演奏会
2002年9月8日(日) 16:00 ザ・シンフォニーホール

R.シュトラウス: 4つの最後の歌
ブラームス: ドイツ・レクイエム

独唱:松下 悦子(S)、小玉 晃(Br)

合唱:2002ドイツレクイエムを歌う会

指揮: 黒岩 英臣

シンフォニーホールでの芦響の定期演奏会。 ブラームスのドイツ・レクイエムという渋いプログラムだったのですが、合唱団がとても素晴らしかったですね。 合唱団はこの演奏のために集まってきた有志であることもあり、この演奏に賭ける集中力は凄かった。 重厚で繊細、熱くそしてまた美しい合唱でした。 個人の歌がまとまって合唱になるってことは当たり前のことなのですが、各自の歌に曖昧さがないため、合唱としての凝縮度がすごく高く感じました。 また速いパッセージでも、勢いだけでワッと歌っているのではなく(僕が耳にする合唱団ではこのようなのが多いのですけれど)、速いけれどきっちりと歌っているとても素晴らしい合唱でした。 またオーケストラの演奏も、黒岩さんの指揮のもと、音を繋いで響きの隙間を無くした密度の濃い演奏でした。 そして合唱と見事に絡みあってこちらもじつに素晴らしかった。 いつものテクニックの冴えと縦ノリのリズムでガンガンいく芦響のイメージじゃなかったです。 弦のプルトの最初から最後まで、機械的にカチっと揃っているような堅さはなくて、きちっと揃ってビロードで敷きつめたような豊かな響きを堪能しました。 そんな合唱とオケが合わさってとても密度の濃い演奏になっていました。 素晴らしく充実した演奏会でした。

R.シュトラウスの4つの最後の歌は、松下さんの諦観を持ったような滋味な歌唱と、豊かに波打つようなオケの弦楽合奏が素晴らしい演奏でした。 黒岩さんはフラダンスのように腰をくねらせ、左手を波打たせるようにして音を紡ぎだすような感じでした。 松下さんの静かな感動がひたひたと押し寄せてくるような歌とマッチして綿々と音楽が続いいきました。 「春」から聞き惚れているあいだに、あっという間に終わった、という感じもしました。 「夕映え」の冒頭ではアルプスの光景がすっと浮かび、慈しみながら曲が進んでゆき、最後の音が静かに消え入ったあとのちょっと長い沈黙もよかった。 静かな感動がひたひたと押し寄せるような演奏でした。
ブラームスのドイツ・レクイエムは、とにかく素晴らしい合唱に圧倒されました。 「T:悲しんでいる者たちは幸いである」では透明感を持った歌いだしからゾクゾクときました。 合唱の美しさからくる敬虔な音楽に圧倒されるばかり。 オケも抑制がよく効いていて、管楽器のアンサンブルもしっとりとしていてとても素晴らしかった。 また「Y:この地上に永遠の都はない」では、勢いでワッと歌ってクライマックスを築くのではなく、各自がきちんと歌っていて、地に足がぴったりと着いて、底力のある合唱が感動的でした。 またオケもここでは激しく燃える演奏になってぴったりと合唱に寄り添って音楽を高揚させていました。 黒岩さんは終始前曲と同じようにフラダンスみたいにちょっと腰をくねらせ、左手を波打たせるようにしていました。 このためか音と音の隙間が無くなって音の密度がとても濃くなっていたように思いました。 前日のかぶ響は小編成でしかも音をスパっと切るようで推進力のある響きが素晴らしかったのですが、芦響は18型の大きなオケの前から後ろのプルトまで綺麗に揃ってビロードのような響きを出してしたのも素晴らしかったです。 2日でこんなにも両極端に巧いオケを聴けたのは良い勉強になりました。 さて最後の「Z:今この後、主にあって死ぬ者は幸いである」は、大きくかつ繊細に歌う合唱・それにぴったり寄り添うオケによって、音楽は常に熱く、エンディングへと導かれていきました。 弦のピチカートの暖かい響きに、トロンボーンの音が静かになって曲を閉じました。 この音が鳴り終わると同時に待ちきれぬように拍手が起きましたが、個人的にはもうちょっと静寂が欲しかったように思いました。 が、これは仕方ないところですね。
ソプラノの松下さんは前曲とおなじく滋味あふれる声で豊かな情感を出していたように思いました。 バリトンの小玉さんがよく透るけどちょっと堅い響きの声で朗々と歌っておられました。 また芦屋交響楽団というと冴えたテクニックで近現代音楽をガンガン演奏することが巧いという印象がとても強かったのですが、まったく別の面を見たようでした。 しかし何よりこの演奏会の主役は合唱団でした。 重厚かつ繊細、熱くそして美しい演奏にとても充実した時間が流れてゆきました。