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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第11回定期演奏会

ヴァイタリティのあるスケールの大きなピアノ戻る


奈良フィルハーモニー管弦楽団 第11回定期演奏会
2002年9月15日(日) 13:30 奈良県文化会館国際ホール

チャイコフスキー: ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

独奏: 高雄 有希

指揮: 井村 誠貴

奈良フィル定期に久しぶりに井村さんが戻ってきました。 チャイコフスキーのピアノ協奏曲と悲愴交響曲といういわゆる通俗名曲の組み合わせなんですが、このオケにはちょっと重たいプログラムだったように思いました。 しかしどちらの演奏も熱演が展開されました。 ピアノ協奏曲は何といっても、高雄さんのヴァイタリティのあるスケールの大きなピアノが印象的でした。 輝きのある強いタッチが魅力的で、強打でも響きが全く濁らず煌びやかなピアノ協奏曲になっていました。 フィナーレはあれよあれよという感じで急激に盛りあがり、力強く華麗な幕切れにブラボーが飛んでいました。 ただ個人的には第2楽章で、奈良フィルの持ち味である柔らかい管楽器が期待どおりに素適だっただけに、ここで少々堅いタッチのピアノがキンキンした感じに聴こえたのは残念でした(やまと郡山城ホールの響きだと違って聴こえたかもしれません・・・そう、会場というとこの楽章のとき会場が何となくザワついていたのも残念でした)。 悲愴交響曲も井村さんの指揮を見ていると大変に力の入った演奏でしたが、ピアノ協奏曲でも思ったのですけれど、ヴァイオリンの数の少なさ(1Vn:11,2Vn:9)からくるのか、ヴァイオリンの響きの厚さともう少し粘っちこさが欲しいように思いました。 アンサンブルがピタッと合っているのは素適で要所では金管楽器の響きの凝縮度や、木管楽器の柔らかい響き、そして田中さんのティムパニが要所を締めて効果的だった(ピアノ協奏曲でもそう思いました)のは大書しておきたいと思います。 総じてとても力が入っていてよく纏った演奏でした。 ただ個人的には第3楽章のラストの盛りあがりに我を忘れるほどの高揚感が欲しかったのと、終楽章のフィナーレはもっと寂寞として陰鬱な感じが欲しかったですね。 この前の情熱的な盛りあがりが熱い渦のようになっていただけに、フィナーレはもうちょっとあざといほど色をつけるなどの対比が欲しいように思いました(あくまでも個人的な希望です)。 もっともこのあたりの対比はトーマス・ザンデルリンクさんの話でも結構難しいところがあるようなのですけれど。 これも最初にも書いたとおりもうちょっとヴァイオリンの数を増やして欲しかった(オケの予算の関係もあるからあまり無理言えませんが・・・)のと、響きの豊かなやまと郡山城ホールだったらもっと印象が違っていたかもしれません。 次回はブラームスの交響曲第2番とのこと。 この曲は室内楽的でもあるのでこのオケには合っているかもしれません。 大いに期待したい思います。

簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。 ステージで楽器の手入れをしていた若干のオケ・メンバーが引っ込み、定刻になって整列入場すると会場から温かい拍手が起きました。 最近あまり見かけない光景のような気がしますが、この演奏会への期待からでしょう。 さて、そんな期待を担ったピアノ協奏曲ですが、東谷さんのタイトによく締まって力強いホルン、重厚さはちょっと欠けるけれど芯のある強い響きの弦楽器による充実した開始でした。 指揮台はヴァイオリンの方向に向いて設置されていたのは、ヴァイオリンの響きを統一させるつもりだったのでしょうか。 またコントラバス5本は前2列、後3列で、オケの内側に配置されたチェロ7本の後方に位置し、指揮台に向ってまるで楔を打込むような感じになっていました。 この効果からか、演奏会全体を通じて、低弦がオケの響きの芯となっていたのが印象的でした。 さて高雄さんのピアノは響きに輝きがあり、タッチが強くなっても濁らない煌びやかさで、ぐっと会場を惹き付けました。 井村さんはちょっと大振りでスケール感を出そうとしているようでしたが、響きが拡散することなくて、よく締まった音楽になっていました。 田中さんのティムパニが重量感があってメリハリをつけていたのがとても印象に残りました。 高雄さんのピアノは終始切れ味鋭く、カデンツァは急緩をつけていたようで、ここではちょっと忙しなさも感じました。 高雄さんの切れ味の良さに合わせたようで、オケの管楽器のフレーズも短めに切って寄り添っていたようです。 豊かに歌うというよりもカチっと纏めたような演奏でした。 第2楽章は、柔らかいピチカートとフルートソロによる開始。 このあとも奈良フィルの持ち味である柔らかい管楽器ソロ・アンサンブルの巧さが光っていました。 しかし高雄さんのピアノが煌びやかなのはいいのですが、どこかキンキンと響いてきたのは会場の響きのせいでしょうか、ちょっと残念でした。 ほとんど休みなく入った終楽章は、冒頭ピアノが感情に任せたような少々暴れ気味な感じで始まりました。 やや速いテンポの開始だったように思います。 オケは締まった響きで集中力高くサポートしていましたが、もうちょっとヴァイオリンの響きの厚さが欲しいようにも感じました。 オケもピアノも徐々に煌びやかさを増して、エネルギー感が十分で、エンディングはあれよあれよという感じで急激に盛りあがる華麗な幕切れでした。 会場から熱い拍手とブラボーが飛び出すほどの熱い演奏でした。
休憩を挟んでの悲愴交響曲。 井村さんがしばし指揮台の上でうつむいて集中力を高めてからゆっくりと振り始めると、先ほどと同じくチェロとコントラバスの引き締まった重音の上でファゴットの主題が響きました。 が、ここではちょっとファゴットの音が大きかったように思いました。 暗くうごめくような感じではなく、はっきりとした主題の呈示といった感じだったでしょうか。 この後、温かく柔らかい感じで曲は進むのですが、やはりヴァイオリンの響きが透明で綺麗なのですけど、ここももうちょっと厚みが欲しかったですね。 でも音楽はとてもよく纏っていて、フルートの原さん、クラリネットの山本さんも相変わらずの温かく柔らかい響きが素適でした。 第2主題の呈示のあと一気に引き締まってガツンと盛りあがって熱い音楽になるあたりは井村さんの持ち味が存分に出ていて感動的な盛りあがりかたでした。 第2楽章は、流れるようなワルツの旋律に井村さんが踊っていたのが印象的でした。 歌わせるところはたっぷりと歌わせて、抑えるべきところはぎゅっと引き締めていたようです。 中間部では、脈打つような弦の響きに、今度はちょっと堅めのティムパニが芯になっていたのも良かったですね。 第3楽章は導入部から速くて綺麗な弦アンサンブルが次第に熱を持って盛りあがっていきました。 第2主題の弦楽器と管楽器の掛け合いもよく、全体的に抑え気味で徐々に集中力を高めて綺麗にまとめて盛り上げていった感じでしょうか。 終結部は地に足が着いた感じで大きく熱く纏めあげましたが、個人的にはここはもっと破天荒な位に盛り上げて欲しかったですね。 あと印象なのですが、この楽章はなんとなく手順を踏んで纏めていたようにも感じる場面もありました。 さて終楽章は冒頭から響きの豊かな弦楽器、続いて哀切のこもったファゴットやホルンによって始まりました。 素晴らしい始まりでした。 しかしこのあとは音楽がちょっと単調に流れていったというか、やはりヴァイオリンの響きが薄いせいなのかな、もうちょっと抑揚が欲しいようにも感じました。 コンマスの八軒さんは懸命に全身を使って弾いておられたのですが、いかんせん数が少ない、そんな感じもしたのはちょっと残念でした。 それでもクライマックスではかなり熱く燃えるアンサンブルになりました。 弦楽器の集中力を高めて、重い旋律を切れ切れにして演奏したあたり、井村さんの鼻息が聞こえてくるほどでした。 そして重い響きのティムパニと金管も加えてぐっと盛りあがったときは、会場に熱い音楽が渦を巻いているように感じました。 ここ、とても素晴らしい盛りあがりでした。 このあと井村さんは棒を置き、中低弦に向ってゆっくりとエンディングに向っていきました。 曲が終わっても長い静寂が続いていたのはよかったのですが、個人的にはもうちょっとあざといほどの色をつけたエンディングが良かったかな、と思えたのですけれど。
なんかすっと終わったようにも感じてしまいました。

色々と書きましたが、最後のアンコールの定番となっている「故郷」を聴きながら思ったのですが、井村さんが指揮されると他の方の指揮よりもぐっとくるものがあるんですね。 今回は残念ながら、なかなか型を超える高揚感といったものを感じることは少なかったように思えたのですが、次回はテンペラメントに燃えるブラームスを期待したいと思います。