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大阪シンフォニカー交響楽団 第3回いずみホール定期演奏会

柔らかな響き、巧くなった新生大阪シンフォニカー合唱団に拍手戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第3回いずみホール定期演奏会
2002年9月23日(月・祝) 14:00 いずみホール

モーツァルト: フルート協奏曲第1番 ト長調 K.313(285c)
モーツァルト: フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K285 より 第1楽章
ハイドン: ミサ曲第7番 ハ長調「戦時のミサ」Hob.XXU-9

独奏: 末原諭宜(fl)

合奏: 末原諭宜(fl)、釋伸司(Vn)、ザザ・ゴクア(Va)、野村朋亨(Vc)

独唱: 前田佳世(S)、江藤美保(A)、波多野均(T)、萩原寛明(B)
合唱: 大阪シンフォニカー合唱団

指揮: 曽我 大介

久しぶりの大阪シンフォニカーの演奏会でした。 大阪シンフォニカー合唱団を聴くのも昨年末以来ではないかしら、とても巧くなっているのに吃驚しました。 合唱団の定期演奏会も立ち上げて(仕事の都合で行けませんでした)、新しい試みが始まっているのは知っていましたが、なんと音楽監督に曽我さん、合唱指揮に船橋さん・松沼さん、合唱指導に田中由也さんやボイストレナーとして並河寿美さんなども加わった素晴らしい指導体制が敷かれ、新生大阪シンフォニカー合唱団という感じでした。 さて「戦時のミサ」はその新生合唱団がメインになった演奏でした。 曽我さんももっぱら合唱指揮に従事していたふうで、きっちりと曲を纏めあげていて、合唱団もそんな曽我さんにぴったりとよく付いてきて素晴らしい演奏になっていました。 またソロ歌手はいずれもオーディションで選ばれただけあって、全体の響きにもよくマッチした粒揃いで、なかでもバスの萩原さんのちょっと甘さのあるよく透る声と、ソプラノの前田さんのとても柔らかい声質の歌がちょっと目立っていたようですね(聴かせところがあったせいでもありますが)。 オーケストラの伴奏も抑制がよく効いてて、アニュス・デイのティムパニなども響きをもたせながらもコンパクトに叩いたのが良かったし、ここのトランペットの響きも派手になりすぎず、すべてが同じ色調の響きのなかに綺麗におさまっていたようでした。 これが何よりこの演奏の素晴らさだと思いました。 強いていうならば、強弱・急緩をつけて、音楽にはメリハリもあり、息づいていたように思うのですが、どこかしら予定調和的に感じられて、おおっ! とか はぁ! なんていう感じ(上手く言えなくてすみません)での感動が押し寄せてきたかと言うとそれほどでもなかったのも事実でした。 決して下手な演奏なんかじゃないし、部分部分を見ているとどこでも一生懸命に演奏しているのはよくわかるのですけどね。 もうちょっとリラックスした表現とか、端正さを感じさせる部分がもっとあってもよかったのかな、なんて思いながら帰ってきました。 このあたりは嗜好の問題のような気がしますけれど。
さてこれに先だった末原さんによるモーツァルトのフルート協奏曲は、基本的にはギャラント風なんでしょうが華美になり過ぎない端正さと上品さをもった素敵な演奏でした。 終楽章のコーダでは伸び伸びと演奏されていたのも印象的でした。 またフルート四重奏曲は、この曲に似合ったフレンドリーな演奏でした。 こちらも素適な演奏でしたが、終わってみればミサ曲の熱演に覆い隠されてしまったような感じになってしまいました。

ざっと演奏会をふりかえってみたいと思います。
フルート協奏曲は、ぱっと始まる潔さで、冒頭からいい感じのスタートでした。 オケの強弱もきれいについていて、神経のよく行き届いた演奏だったと思います。 そしてフルートによる第1主題の提示は落着いた色彩で上品でした。 そんな演奏にオケも生き生きと寄り添ってきています。 フルートは華美になりすぎることがなく、また音が跳躍してもまったく刺激的な響きにならなくて素適でした。 メリハリがきちんとついてて所謂ギャラント風な演奏だったと思います。 カデンツァも柔らかい音色でしたが、でも力が入っているのか最後には末原さんの足音のおまけまでついていました。 第2楽章はより伸びやかな響きになって始まったようです。 オケもこれに合わせて柔らかな伴奏。 透明なヴァイオリンと芯のある低弦がほどよくブレンドされていて心地よかったし、ここでのカデンツァは端正な感じでした。 終楽章は曽我さんと目を合わせての開始で気合が入りました。 しかし気合を入れても軽く覇気を感じさせる程度なのでモーツァルトらしくって素晴らしかったですね。 オケもフルートもビロードのような響きで、コーダでは伸び伸びと演奏されていたのが印象的でした。 最後はふわっと着地したような感じでした。 モーツァルトって旋律は綺麗なんだけど、終わり方がいつもちょっと不細工なんだよなぁ・・・って思うほどにモーツァルトらしかったです。
フルート四重奏曲は、先ほど同様に華麗なんですが華美になりすぎない末原さんのフルートを中心に、独特の音色とたっぷりした響きの釋さんのヴァイオリン、時折笑みを浮かべてのめり込む感じの野村さんのチェロ、しっかと内声を支えるザザさんのヴィオラ。 仲間意識を感じさせるフレンドリーな演奏がこの曲によくあっていました。 堅苦しさのない素適な演奏でした。
休憩を挟んでの「戦時のミサ」ですが、舞台右手にトランペット、ファゴット、ティムパニを置き、左手にはオーボエ、クラリネット、ホルン、トロンボーンを振り分けて配置。 合唱団の前(通常管楽器奏者の位置)にソリスト4人が座りました。 さて演奏が始まると、冒頭の柔らかな響きの合唱に吃驚しました。 巧い。 力強い場面でも突っ込んでバラけることもないし、指揮者にも的確に反応しています。 よく纏まっていて、本当に巧くなったなぁ・・・というのが率直な感想です。 さてソリストの皆さんもオーディションで選ばれただけあって、全体の響きによくマッチしていて、粒そろいな4人という感じでした。 なかでもソプラノの前田さんは柔らかい声質が魅力的でしたし、バスの萩原さんはちょっと甘さを感じさせるよく透る声も魅力的でした。 アルトの江藤さん、テノールの波多野さんもともに見せ場は少なかったけど、曲によくあった柔らかい響きで好演していたと思います。 さてキリエはそんな柔らかい合唱と、一転してドライブ感のある部分の対比が見事な演奏で、力強い場面でも全く刺激的にならず余裕すら感じるほどでした。 グローリアは、ちょっとだけ止まってから力強い音楽が始まりました。 以前なら、とにかく突っ走る感じだったんですが、曽我さんの指揮にそってきちんと反応していて、充実した響きが醸し出されていました。 Qui tollis peccata mundi の部分の野村さんのチェロは相変わらず思い入れのこもったちょっと甘めの響きのあとバスの萩原さんのソロが魅力的だったし、オケも控えめながら好演してて全体を通じてこのあたりが一番よかったんじゃないでしょうか。 Quoniam tu solus sanctus で元気のある合唱が戻ってきました。 曽我さんは自らも口を開けて歌いながら合唱の各パートに的確に表情を与えていて、オケはまったく添え物といった感じの扱いでしたが、一体となった伴奏で力強くグローリアを終えました。 クレドはティムパニの響きと低弦が芯になり行進曲調で進んでいきました。 Et incarnatus est ではバス、ソプラノ、テノール、アルトとソロが歌い継がれていきますが、いずれも落ち着いた色彩でゆったりとまとめていった感じでした。 かといってのっぺりとした雰囲気ではなく強弱の変化をうまくつけていたようです。 Et resurrexit tertie die では力の入った部分ではコントラバスが全力で速いパッセージを弾いていたのが印象的でした。 Et vitam venturi saeculi,amen の独唱もよく揃っていたし、合唱もこれまでのようにただ突っ走るのではなくきちっと歌っている力強さがとても良かったですね。 サンクトゥスではヴァイオリンの響きに透明感があってよかったですね。 ただ全体的にはちょっと突っ込みすぎたように感じた面もありました。 ベネディクトゥスは、左右に振り分けられた管楽器とティムパニや、ヴァイオリンとコントラバス響きの対比が付いていてメリハリのある音楽でした。 Osanna in excelsis がぐっと力強く歌われたのもちょっと感動的でした。 最後のアニュス・デイはほとんどアタッカで入りましたが、ちょっと神経を使った感じから徐々にクレッシェンドしてきてティムパニの連打になったのですが、ここはもっと思いっきり鳴らすのかと考えていたのですが、きちんと音楽の中にはまった響きでした。 柔らかくて響きの重さを出していたのは当時使われていたであろう羊の皮を張った太鼓を想定してのことでしょうか。 とても感じ入りました。 またこのあとのトランペットも全体の響きにまろやかに溶け合ってて素晴らしかったですね。 演奏全体は力の入ったものになっていきましたが、急緩・強弱もきちんとついたメリハリのある演奏によく纏まった合唱も合わさってフィナーレとなりました。 終始纏まった合唱を聴かせてくれた合唱団に拍手を送りました。 またオーケストラも充実した演奏でこれを支えていたように思います。 ただ何故かしら、ぐっと迫ってくるような感じが少なかったように思われたのが残念でした。 とてもよく考えられた演奏だったし、きちんと纏まっていたのですけれど。 もうちょっとリラックスした表現とか、しみじみとした端正さを感じさせる部分がもっとあってもよかったのかな・・・ なんて思いながら帰ってきました。