BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
枚方フィルハーモニー管弦楽団 第56回定期演奏会

ほっこりとした気分。 誠実で地道な演奏活動に拍手戻る


枚方フィルハーモニー管弦楽団 第56回定期演奏会
2002年10月6日(日) 14:00 枚方市民会館大ホール

モーツァルト: 交響曲第36番ハ長調 K.425「リンツ」
ロッシーニ: 歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
サン=サーンス: 歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」
チャイコフスキー: 大序曲「1812年」

アンコール: ボロディン: 交響詩「中央アジアの草原にて」

指揮:生島 靖

プログラムによると、今回は「プロムナード・コンサート」の形でのコンサートにしたとのこと。 確かに一番最初にモーツァルトの交響曲を持ってきたのに吃驚しましたが、そのモーツァルトの演奏もまた意外と(といっては失礼ですが)聴かせ所を巧くおさえたものでした。 たぶんオケの皆さんが「モーツァルトを演ろう」という思いが強くあったと思います。 それが巧く伝わってきたので素適な演奏になったのではないでしょうか。 モーツァルトは真面目に演奏しても退屈だし、なかなか難しいと思うのですが、不思議と(なんてのも失礼ですね、すみません)退屈しない演奏だったのは特筆しておきたいと思います。 あとバッカナールもオケの皆さんの演奏意欲がとてもよく伝わってきた演奏でした。 とても面白くかせていただきました。 大序曲「1812年」も熱演でしたが、こちらはもうちょっとハメを外すような演奏のほうが更に良かったかな。 ちょっと真面目すぎたのかもしれませんね。 でも、このオーケストラの魅力は、そんなチームワークの良さでしょう。 団内指揮者でもあるし、オケの仲間がそれぞれに力を出し合って、誠実に音楽を作っているような感じを強く受けました。 また、聴きに来られているお客さんについても、家族連れや友人連れがほとんです。 気楽に音楽を楽しみに来られているような感じです(教養として聴いているのよ、といった感じの着飾ったオバちゃん連れ見掛けなかったような・・・)。 とにかくホールの中は、音楽を楽しもう、という感じがしてて、だから時には子供の声がしたり、お菓子の袋を破る音なども聞こえたけれど、まぁ堅いこと言わずに「この曲なかなか面白いねぇ」などと話しながら聴きましょう・・・ という温かい感じがしました。 だから僕もそんな雰囲気にひたって、ほっこりとした気分になって、音楽を楽しませていただきました。 なお会場は1階席のみでしたが、ほぼ9割は入っていたでしょうか。 このようなアマチュア・オーケストラの地道な活動が、けっして広くはないクラシック音楽の裾野をしっかりと支えているように思った演奏会でした。

さて簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。 モーツァルトの「リンツ」はふくよかな序奏による始まりでした。 しかもキレが良く、期待させてくれました。 主題に入ると3本しかいないコントラバスもよく響いてきて、ちょっとゆったりめの呈示だったと思います。 木管楽器は端正だし、金管もよく抑えられています。 ティムパニはちょっと重めの響きでやや型どおりの叩き方なんですが、かえってこれがメリハリにつながっていたようです。 木管のアンサブルだけになると、ちょっとスカスカした感じの響きになったりしていましたが、けっこうこおいうのもまたほのぼのとした感じですね。 快活さもあったし、意外といけるやん、という感じ。 とにかく楽しいモーツァルトになっていました。 第2楽章はアンダンテらしいアンダンテで、きちっと演っているのですが、ほのぼのとした感じでした。 チェロとコントラバスとファゴットによる主題も自然に入ってきて展開されていきました。 第3楽章は、ゆったりとした感じのメヌエットでしたが、時には指揮者の鼻息も聞えるほどに力が入っていました。 でも聴いていると、かっぷくはいいけど相変わらず気負わずに演奏していたようで、トリオの部分のオーボエも端正な感じでした。 終楽章は気合が入った開始でした。 でもここでもたっぷりとした感じで焦ったりしません。 メリハリをきちんとつけているんですが誠実に音楽を進めているような感じ。 オケの皆さんが「モーツァルトを演ろう」という思いが強くあって、それが伝わってきているのかな〜 なんて思いました。 時にはアンサンブルが緩く感じられる場面もあったように思うのですが、かえってそれがけっこう素適な演奏に転化されているように思えました。
休憩をはさんで「どろぼうかささぎ」序曲ですが、舞台の左右に配置されたスネア・ドラムから始まる元気の良い開始で、はつらつとした演奏でした。 場面転換もきちんと決めて雰囲気をがらりと変えたあたりもよかったです。 盛りあがってもハメを外さない手堅さもありましたが、ちょっと型どおりきれいに纏めたかな〜とも感じたりもしました。 でもなかなか聴き応えはありました。
オケのメンバーの配置換えの時に指揮者の生島さんのお話があり、それを聞いていると親近感をおぼえました。 偉い指揮者の先生という感じではなく、オケのメンバーとともに一緒に音楽を作っているリーダーという感じだったからです。 なるほど、だからこのオケはどこかほのぼのしているのかな、と思ったしだいです。
さて「バッカナール」は冒頭のオーボエによる甘美なオリエンタルなメロディやホルンのおどけた感じやら、なかなか面白い曲でした。 またオケの皆さん、特に木管楽器の皆さんは首をうごかして、ノッて演奏しているようでした。 演奏を楽しんでいるような感じでしょうか。 エンディグはティムパニの連打からチューバやトロンボーンが力強く奏されていましたが、全く崩れることなく、ぐっと盛り上げていたのが素晴らしかったです。
「1812年」の前にも指揮者のお話があり、大砲の模型(ティムパニ奏者の方の自作とか)まで据えつけられての演奏開始でした。 冒頭のヴィオラとチェロの6重奏ですが、あとでプログラムを読んで、なるほどロシアの寒くて広い雪原のような感じでした。 このあとのアンサンブルは、気合は入っているもののちょっとアンサンブルが緩くなっていたような感じもしました。 ちょっと噛んで含めるような感じもしましたが徐々に盛り上げていって、最初の戦闘シーンは力感のある金管を筆頭にスネア・ドラムや木管アンサンブルがきちんと決めて迫力がありました。 特にホルンの斉奏がバシッと揃えていたのが素晴らしかったですね。 このあとの民謡調のところはもうちょっと粘っちこくやったほうが面白かったかもしれませんが、誠実にこなしていった感じで、ラストの戦闘シーンに繋げていきました。 ここでも力感のある金管楽器に重量感のある大太鼓の響きが合わさった熱演になっていました。 でもここでもハメを外さずにきちんと演奏しました、っていう感じかな。 これはこれでいいのですけど、なんとなく型どおりかな、って思ってしまいました。 でも会場からはこの日で一番大きな拍手がありました(本当は演奏前に大砲が出たところで一番会場は沸きいていましたが、これは関係ないですものね)。
アンコールの前にも、指揮者の生島さんが「枚方フィルの演奏会は、アンコールにわっとかばぁっと盛り上がる曲をやって、アンケートにはアンコール曲が一番良かったと書かれるんですけど」と言われてどっと会場を沸かせたあと「いつもの枚方フィルには似合わないけど」と言われて「中央アジアの草原にて」が演奏されました。 このスピーチのせいか、会場はこれまでになく真剣な感じで演奏に聴きいっていたようでした。 ちょっとリズムが堅いような気もしましたが、朴訥とした感じの演奏だったように思います。 でもソロのクラリネットやフルート、オーボエ、コールアングレなどは艶やかな響きで好演していました。 演奏後に生島さん「もう何もありません」と言われてまた会場が沸いてお開きになりました。
生島さんのお話しは、決して立て板に水のような流暢なお喋りではないけれど、このオケらしいほっこり感じで、なんか心温まるような演奏会でした。 会場は1階席のみでしたが、ほぼ9割は入っていたし、地元の皆さんから愛されている存在なのでしょうね。 このようなアマチュア・オーケストラの地道な活動が、けっして広くはないクラシック音楽の裾野をしっかりと支えているように思えました。