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京都府立医科大学交響楽団 第78回定期演奏会

素晴らしいの一言につきるチャイコフスキー戻る


京都府立医科大学交響楽団 第78回定期演奏会
2002年10月26日(土) 19:00 長岡京記念文化会館

ロッシーニ: 歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ボロディン: 歌劇「イーゴリ公」より ダッタン人の踊り
チャイコフスキー: 交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

指揮: 井村誠貴

チャイコフスキーの交響曲第4番に痺れました。 前2曲とは響きの充実度がまるで違っていました。 相当な練習を積まれてきたのではないか、と想像するほどチャイコフスキーらしい粘ちっこい表情やリズムなどが見事に演奏に練りこまれていました。 そして感動的なフィナーレの高揚感でも、常に我を忘れずしっかりとした演奏が最後までビシッと決められていて痺れました。 確かに細かなことを言うと、途中には多少の事故というか纏りに欠けたような部分、特に響きが薄くなる部分では脆さも感じたりもしたのですが、チームワークの良さでカバーしたアマチュアオケらしい総力戦での勝利だったと感じました。 細かなことは抜きにして感動させられました。 実はこの曲あまり好きではなく、CDなどでボリュームを上げて聴くと、けっこう安っぽく感じたりするのですけれど、これほどまでにわくわくさせてくれるような演奏は滅多にないでしょう。 本当によく練りこまれた感じで、指揮者・オケが一体になって一心にチャイコフスキーの音楽を演奏していた素晴らしい演奏でした。 実演の素晴らしさを存分に堪能させていただきました。 このところ体調がすぐれず、またいつ雨が降ってもおかしくない感じの天候のなか、何度も行くのを止そうかと思いましたが、そんなことなど見事に吹き飛ばしてもらいました。 そんな音楽の力をまざまざと感じつつ帰路につくことができました。 繰り返しますが、素晴らしいの一言につきる演奏でした。 皆さんありがとうございました。

演奏会を簡単に振り返ってみます。 開場30分前に到着したので、隣りの公民館で本を読んでいたのですが、開場時間になって吃驚、長蛇の列が交差点まで延びていました。 最後には立ち見も出るほどの大盛況の演奏会でした。 会場のあちこちから「今回は(人が)多いねぇ」との声が漏れていました。 これもこの夏の井村さんのマーラーの第9演奏会の影響からかなと一人思っていました。 さてオケメンバーが揃いチューニングも終わってもホール内は明るく、井村さんが出てくるのと同時に照明が落ちました(一瞬この明るいまま演るのかな、と思ったほど)。
さて冒頭の「セビリアの理髪師」序曲はそんな中で演奏しても良かったような感じの明るい演奏でした。 ヴァイオリンのゆったりした合奏がとても綺麗で、ビロードのようだったのが印象的。 ただ前半は全体的に堅さが感じられ、後半のロッシーニ・クレッシェンドなどはよくのってきた感じでした。 全体的に響きが薄くて、コントラバスが頑張って弾いているのは見ていてよく分かるのですが、動きほどに響いてこなかったのは、そんな感じで纏めたのかな、とも思えました(セビリアの理髪師の作曲は1815年なんでベートーヴェンの第9よりも前ですので古典派的に簡素に纏めたのかな、と・・・素人の私見です)。
ダッタン人の踊りは、フィナーレの畳み掛けるようにしてオケと会場を盛り上げてグィと惹き込むあたり井村さんらしい乗せ方でした。 冒頭がちょっと纏りがなく感じたのと、男達の踊りの場面では型どおりだったかな(とあくまでも私見)と感じたところもありましたが、学生オケですからね、もっとエキゾチックにというのも酷なのでしょうね。 しかしオケは、井村さんによく反応していました。 派手に飛ばすところもきちっと抑えられていたし、暖徐部分では井村さんがくねくねと踊りながら表情を付けていたのにもよく反応していました。 増えたコントラバスの効果もあって弦アンサンブルがとてもよくなっていました。 全員の踊りと少女の踊りのコントラストからフィナーレの盛りあがりまで素晴らしかったです。
休憩をはさんだチャイコフスキーの交響曲第4番の充実度は前2曲を遥かに上回っていました。 練習時間の大半はこちらにさかれていたのかと直感するほど響きの充実度が違いました。 第1楽章の序奏部の金管ファンファーレはゆっくりめでしっかりしたものでした。 そして上記のように直感した主題の弦楽器の響きの陰鬱さが素晴らしかった。 そしてこれに絡んでくる木管楽器、そして響きが拡大されていく中に情熱の炎が見え隠れするようにも感じました。 第2主題のクラリネットは深みのある響きでしたが、そのあとの弦楽器の響きに粘りがあってじわじわっと感動に結び付けていきましたが、もうここまでで今日の演奏は成功間違いなしと確信しました。 劇的な盛りあがりも熱くたぎるような感じですが、ティムパニがタイトな重い響きで冷静にリズムを打ちつけていたのが印象的で、けっしてはやったりせずに地に足がついた演奏になっていました。 展開部に入って、井村さんは指揮棒を左手に持ち、右手でしきりにヴァイオリンに表情を付けていたのが演奏にもよく反映されていました。 そして嵐のようなクライマックスでは低弦にもカツを入れて若さを武器にした速くてタイトな盛りあがりで、弦楽器の皆さんは凄まじい速さで弓を動かしていました。 第2楽章冒頭のオーボエによる旋律はちょっと噛んで含めるような感じでしたが、このあとに続いたチェロも同じく噛んでふくめるような感じ。 ゆったりと進んでいきました。 井村さんは、ここでも左手に指揮棒を持って右手で表情を付けていました。 響きが薄いとちょっと脆さを感じる場面もありましたが、アンサンブルが揃うと情感がぐっと増します。 ヴィオラのメロディにヴァイオリンが絡んできて素晴らしいアンサンブルになっていました。 オケはやっぱりチームワークなのだな…と感じました。 曲が明るくなるところから指揮棒による指揮となりましたが、ここでもゆったりと大きく情感を練りこんでいくような感じでした。 静かになってファゴットや弦楽器がしみじみとした感じで、最後はすっと(ちょっと唐突な感じで)終わりました。 第3楽章は響きの豊かなピチカートがまさしくチャイコフスキーらしい厚ぼったい感じでした。 リズム感・表情の付け方などわくわくさせて分かり易い感じです(井村さんの指揮姿を見ていても分かり易いからかも)。 木管アンサンブルの舞曲風の旋律、金管アンサンブルの行進曲風の旋律も最初はちょっとぎこちない感じでしたが、だんだんと乗ってきて、最後はこの3つが見事に合わさってチャイフスキーのバレエ曲のようなノリの良さでした。 そしてアタッカで入った終楽章は凄い迫力で突入(井村さんの鼻息も十分に聞こえるほど気合が入っていました)。 しかし音楽そのものは息咳きっているのではなく、きちんと統率されていいました。 リズム感がよく、力強さもあり、そして切れ味が鋭い停止。 場面転換も見事に決まっていました。 スケールの大きな演奏になっていました。 これに対する第2主題のオーボエは端正な感じでゆったりとしていて、学生オケだから淡白に感じたのか、対比としてそうさせているのか、よく分かりませんが、井村さんは大きないつもの身振りで表情をつけていて、オケもそれによく応えていました。 第3主題、そして冒頭の運命の動機へと登りつめていくあたりもスケールの大きな演奏ですが、ここをスパッと切り捨てる潔さ。 そして充実した弦楽器の響きに痺れました。 明るいホルンの旋律からだんだんとオケに力が漲ってエンディングになだれこんでいきましたが、音は十分に出ていても暴走しているのではなく、力強さと情熱と冷静さが見事にコントロールされた感動的なフィナーレを形成していました。 素晴らしい演奏でした。 終わるやいなや待ちこがれていたようなブラボーと大きな拍手の嵐に包まれました。 実に感動的なエンディングでした。
この演奏会、チャイコフスキーの第4番で全てが覆い尽くされてしまったようです。 確かにこの演奏も細かな部分では事故というか纏りに欠けたような部分も感じたりしたのですが、チームワークの良さでカバーしたアマチュアオケらしい総力戦での勝利でした。 本当にチャイコフスキーらしさがよく練りこまれた感じで、指揮者・オケが一体となった素晴らしい演奏に、お開きになってから、いっしょに来た友達と「よかったなぁ」「凄かったなぁ」と会話をする声をあちこちで耳にしながら会場を後にしました。 多くの人々に感動を与えてくれた演奏でした。 皆さんありがとうございました。