BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
大阪シンフォニカー交響楽団 第4回いずみホール定期演奏会

素晴らしいフィルハーモニア・カルテット・ベルリン戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第4回いずみホール定期演奏会
2002年11月18日(月) 19:00 いずみホール

ハイドン: オーボエ、ファゴット、ヴァイオリンとオーケストラのための協奏交響曲 変ロ長調Hob.I-105
モーツアルト: ヴァイオリン、ヴィオラとオーケストラのための協奏交響曲 変ホ長調K.364(320d)
ハイドン: 交響曲第95番 ハ短調 Hob.I−95

アンコール: ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番 op18−6 第4楽章

ソリスト: フィルハーモニア・カルテット・ベルリン
  ダニエル・シュタープラヴァ(vn)
  クリスティアン・シュターデルマン (vn)
  ナイトハルト・レーザ(va)
  ヤン・ディーゼルホルスト(vc)

新本由美子(ob)、藤崎俊久(fg)

指揮:曽我 大介

この演奏会は白眉は何と言ってもフィルハーモニア・カルテット・ベルリンによるアンコールだろう。 繊細で柔らかく澄みきったアンサンブルによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲が実に素晴らしかった。 目と目で合図し、軽やかに合わせて、音楽を醸し出してゆく室内楽の素晴らしさをたっぷりと味合わせてもらった。 これはちょっとない素晴らしい経験であった。
そのベルリンフィルのコンサート・マスターや首席奏者による協奏曲もまた、オケ・マンとして全体の響きの調和を大切にしたものであった。 協奏交響曲というと、お祭り的な感じがすると曽我さんの解説にもあったし、確かにそのようなギャラント的なものを想像していたのだけれど、派手さよりも、質実とした響きがいかにもベルリンとかドイツ的という感じのする演奏だった。 ただこのように書くといかにも無骨なものを想像してしまうが、そこはトップ・クラスの奏者であって、音楽が軽やかに奏でられ、響きが自然と涌き出てくるのようで素晴らしかった。 特にハイドンの協奏交響曲の第1楽章は、新本さんのオーボエ、藤崎さんのファゴットとのアンサンブルも素晴らしく、まるで夢見心地であった。 特に4者によるカデンツァがとても幸せな時間となって流れていった。
ただ演奏全体としてみると、ハイドンの交響曲を初めとしてオケの演奏には生真面目さが先行し、チャーミングさや洒脱さがまだまだ不足しているように感じてしまう。 特に今回はベルリンの奏者との競演もあったせいか、余計にそのように感じる場面も多かったように思える。 とにかくオケは律儀である。 もっと伸びやかで自発的な演奏になることを願ってやまない。

簡単に演奏会をふりかえってみたい。 まず最初はハイドンの交響曲第95番の第1・2楽章の演奏だったが、響きの深さが特長というか、どこか焦点が定まらないような気分にもなった。 冒頭はキレ味のよい開始だった。 弦楽器、打楽器、金管楽器がいずれも響きが深く柔らかいのが特長的な演奏だった。 おお、上質な響き、と思ったが、演奏のキレの部分は曽我さんがバシバシと切っていくのだが、そこ以外はなんとなく乗り切れない感じがした。 響きの深さは分離の悪さなのかな、とも思えた。 あとコンサート・マスターの森下さんの響きがよく聞こえたのも印象に残った。 第2楽章の冒頭はちょっと雑然とした印象を持った。 ここでも丁寧に演奏しているのはわかるのだが、なんかピントが定まっていないような感じである。 技術的には合わさっていても、心の方向は統一されていない、といった感じなのだろうか。 響きの深さにちょっと埋もれてしまいそうな感じな部分と、一転して大きな音で元気になったりと、もっとチャーミングさが欲しかったな。 野村さんのチェロのソロも甘くて響きが深いものだった。 う〜ん、ここまで全体として一生懸命さはわかるけど、どことなく型どおりといった感じが拭えませんでした(単なる個人的な感想ですので失礼)。
ハイドンの協奏交響曲は、さっきまでのもたつき感はどこに・・・といった軽やかな充実した音楽だった。 特に第1楽章が素晴らしかった。 とても柔らかい開始から、充実した音楽がつぎつぎと出てきて夢見心地であった。 ギャラント・スタイルなのだが、洗練された落着きがある。 もちろん華やかさや覇気もあってぐいぐいと惹き込まれていった。 シュターデルマンさんのヴァイオリンはちょっと線が細い感じもしたが、とても柔らかくて丁寧な感じ。 ディーゼルホルストさんのチェロも押しの強さよりも落着いた音色でこれまた柔らかい。 ともに作った感じのしない自然体の演奏が素晴らしい。 新本さんのオーボエ、藤崎さんのファゴットもオケやソロに溶け込み、時には雄弁にもなって堂々と渡りあっていた。 4者によるカデンツァも、メロディや強弱にもよく揃っていたし、そのあとのフィナーレまでの部分もハイドンらしい洒脱さがとてもよく感じられる素晴らしい演奏だった。 演奏が終わって、思わず拍手もパラパラと出てきたのも納得できる素晴らしい演奏だった。 第2楽章の前、新本さんがしきりに楽器を触っておられたのが気になったが、ゆったりと美感をたたえた演奏始まった。 軽やかでしなやかなヴァイオリン、落着いたチェロ、深みに軽妙さも併せ持つファゴット、よく透るオーボエ(本当はもう少し柔らかくしたかったのではないだろうか、楽器を気にしている新本さんがちょっと可哀想だったかな)が緊密に絡んでいた。 オケのピチカートがボンボンっと息づいていたことや、遠くで響くようなホルンもまた印象的だった。 第3楽章は、力感のある開始で、おおっ元気やな、と思ったけど、ヴァイオリンのソロが入ると柔らかくて丁寧、そして華麗なテクニックが披露された。 その他のソロも特に気負うこともなく、自然体の演奏だったが、オケはちょっと気合が入っていたのが対照的な感じがしたままエンディングになった。 さすがにベルリンの二人は一流のオケ・マンであることも強く感じた演奏だった。 自己主張よりも演奏曲そのものを大切にしていること、そしてその中で自己を自然体で出していること、単なるオケ・メンバーではなく一流のオケ・マンとして演奏全体をよく見渡していることに強く感銘を受けた演奏だった。
休憩を挟んで、ハイドンの交響曲の後半の2つの楽章が演奏されたが、この中にはチェロのディーゼルホルストさんも参加して、素晴らしい心に沁み入るソロを聴かせてくれたのが何よりだった。 ただ演奏自体は、前半楽章と同様に力強い場面が散見されて、先ほどまでの上質さや洒脱さは何処へ…といった感じの第3楽章、アタッカで柔らかく軽やかに入ったものの速度が上がるにつれて突っ走り気味とも思えるある意味ノリの良さが信条の大阪シンフォニカーらしさを感じさせた終楽章。 この間、心地良い軽快さや響きの豊かさを感じさせる面もあったけれど、なんとなくメリハリをつけすぎた感じのした演奏だったように思う。
モーツァルトの協奏交響曲は、ベルリン・フィルのコンサート・マスターであるシュタープラヴァさんのヴァイオリンと、同ソロ・ヴィオラ奏者であるレーザさんとの競演である。 この二人も先の二人と同様に一流のオケ・マンであった。 透明感のあるヴァイオリンと柔らかい響きのヴィオラであったが、ここでも自己主張よりも全体の響きを大切にした演奏を展開していた。 第1楽章は少し柔らかい開始から、コントラバスが弓を弦に叩く音も心地よい軽やかな感じで始まった。 ソロはこれまでも述べたように派手で華麗な自己主張ではなく、オケの響きにマッチしたものだった。 少々硬質な感じのヴァイオリンに柔らかく応対するヴィオラ、といった感じ。 しかしここでもオケが急緩をつけて走りだすと、どことなく響きがダンゴになって型どおりな感じがしないでもなかったのが残念だった。 第2楽章は、憂いを含んだヴァイオリンと、同質だが更により深い響きのヴィオラ、さすがに同じオケで活動しているんだなぁ、というのがよく分かるほど響きの質や息もぴったりと合っているのを堪能させてもらった。 もうちょっとウィットに富んだ感じが欲しくもあったが、オケは更に型どおりっぽく伴奏をつけていたみたい。 第3楽章は、軽やかで弾力のある開始が心地良い。 ヴァイオリンとヴィオラとの絡みもきちっと決まっている。 ただモーツァルトらしい愉快さを満喫するといった感じではなく、ソロ・オケともにどこか律儀に演奏しているなぁ、という感じがしなくもない。 日独合同演奏といった趣きだったろうか、巧いからいいじゃないか… と言われると何も言えませんけれど。 終演となって会場からは割れんばかりの拍手が起こった。
しかし本当の見せ場はこれからだった。 時間は既に9時を5分ほど回っていたが、拍手が続くうちに座席が用意され、更に拍手が大きくなってアンコールに突入した。 これがベートーヴェンの弦楽四重奏曲だったのだが、この素晴らしさは筆舌につくしがたい。 柔らかく澄みきった響きによる開始だった。 どうすればこんな響きになるのだろう、というほどデリカシーに富んだ音が延々と続いていく。 そして次第に楽器がまるで会話するように語りかけもする。 そして重なりあった響きが醸し出され、涌き出てくるよう。 さすがに超一流とはこおいうものなんだ、というのを目の当たりにさせてもらった。 感激した。 アレグレットになっても決して力で押すことはなく、4つの楽器の響きがひとつになったまま、節度をきちんと保っている。 華美にも強引にもなることなはく、そこには音楽があるだけ。 とにかく参りました。 最後にこんなこともあるから演奏会通いは辞められない。

なお、オケの演奏については期待もしているのでちょっと厳しいことも注文してしまうわけで、決していい加減な演奏を指摘しているのではなく(指摘するほどの能力もありません)、逆に個人的にはもっと伸びやかに演奏して欲しいと感じていることを付け加えておきたい。