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けいはんなフィルハーモニー管弦楽団 演奏会

熱い思いが伝わってくるブラームス戻る


けいはんなフィルハーモニー管弦楽団 演奏会
2002年12月22日 (日) 14:00 京都コンサートホール 大ホール

ストラヴィンスキー: バレエ音楽「カルタ遊び」
ブラームス: 交響曲第4番 ホ短調 作品98

アンコール: ルロイ・アンダーソン: そり滑り

指揮:田久保裕一

休日出勤の仕事を午前中で切り上げて大阪から京都・北山にある京都コンサートホールに向かった。 初めてのホールに行く期待と、このところ続いている仕事の気分転換もあって、ちょっとした小旅行気分をともなっての演奏会通いとなった。 京都・北山って遠いと思っていたけれど1時間弱で行けたし、自宅への帰りも1時間だったので意外と通えるホールのようだ。 新しくて響きのたっぷりとしたホールだったので、また機会があれば訪れてみたいと思う。
さてそんなホール1階席には約7割の人が入っていただろうか。 ちょっと見渡してから、2階席に移動することに、案の定そのはガラガラだったので最前列に陣取ることにした。 シューボックス型のホールなので、ステージからちょっと遠いけれど、オケを見渡しながら聴けるのが嬉しい。 なおステージを見るとオケは対抗配置となっていた。
演奏だが、ブラームスの交響曲での田久保さんのスマートに振り分ける指揮に熱い思いが伝わってきて、オケもまたそれによく呼応していたのが印象に残った。 そのオケは中低弦がしっかりと曲を支えている弦楽器アンサンブルがよかったこと、トランペットやトライアングルなども柔らかい音で呼応し、十二分に熱い演奏なのだが必要以上に声高になって叫ぶことのないブラームスであった。 ホール全体の響きが深いことや、絞り込んだ人数のために、この曲にスケール感を求めたむきには少々物足りなかったかもしれないが、充実した演奏だった。 またこれに先立って演奏されたストラヴィンスキーは初めて聴く曲だが丁寧な音楽造りだった。 少々ホールの響きが深いせいか(聴いていた位置が遠かったせいかもしれないが)、バシッと揃っていても演奏のキレのよさというものが少々犠牲になっていたようにも感じた。 アンコールを聴いて感じたのだが、あのように少々弓使いがバラけて見えるほうがかえって躍動感が出るのかなぁ〜などとも思えたので、なかなか難しい曲なのかもしれない。

ストラヴィンスキーの「カルタ遊び」は初めて聴く曲である。 新古典主義の曲で歯切れの良さを期待したが、全体的に穏当な感じにまとめられた感じがした。 それは指揮者のせいなのか、ホールの深い響きのせいかのかもしれないが。 第1ラウンドは冒頭こそ勢いよく飛び出したが、全体的には柔らかく全体をまとめたような感じで、低弦がよく響いていたのと、途中のフルートとファゴットのソロが素敵だった。 第2ラウンドも着実に音楽を進めていっているよう。 弦楽器ソロの響きや管楽器ソロもきちっとしていたが、2階席は遠いせいか少々遠慮気味に聞こえたのが残念だった。 田久保さんはスマートな指揮で的確に指示を繰り出し音楽を進めていた。 第3ラウンドになって元気の良さが感じられるようになったが、音量が増しても響きが深いせいかノリの良さをいまいち感じないうちにエンディングとなった。 丁寧に演奏しすぎたのだろうか、バレエが付けばまた違った印象になるのかもしれない。 初めて聴く曲はやっぱり難しい。
休憩をはさんでのブラームスの交響曲は、ちょっと見スマートに振り分けている田久保さんの指揮にはすごい熱気がこもっていて、オケもそれによく反応した演奏だった。 ただ小編成であることでスケール感を求めるむきには物足りなかったかもしれないが、しっかりしていて十二分に熱い演奏だった。 第1楽章の序奏は上質な響きによる開始から音を繋ぎ大きく抑揚をつけていた。 金管楽器は抑え気味だったが中でもトランペットはかなり神経を使って抑えこんでいたようだ。 主題に入ると、中低弦がカクカクと音型を短めに区切っていた。 伸ばすところ、切るところのメリハリがついている演奏は次第に熱くなっていたが、ここでは全体のパワーで豪放に鳴らすのではなく内部に秘めた熱気を音楽に載せているといった感じ。 ぎゅっと纏まっていて、スケールを求める向きには少々食い足りないかもしれないが、なかなか熱い演奏に満足した。 第2楽章は第2主題のチェロに優しく絡むヴァイオリンのあたりがとても美しくてよかった。 このあと力を内部に溜めた盛り上がりから重層的な再現部、柔らかく的確なティムパニのロールなど、優しさと熱気が入り混じった後半がよかった。 第3楽章の冒頭はやや駆け足気味な始まりだったが、しだいに落ち着いていった。 トライアングルの見せ場だが、柔らかい響きで全体に溶け込んでいたのが素晴らしかった。 力と熱のこもった第1主題、それをなだめるかのような第2主題がきちんと対比されて音楽が進行していく。 エンディングは、トランペットも軽く吹いて歯切れよく締めくくられた。 そのまま終楽章に突入するのかな、と思ったけれど、ちょっと間合いをはかってから入った。 ティムパニはこれまでの深い響きではなくタイトな響きだった。 フルート、オーボエ、トロンボーンによる主題の提示から力の入った演奏で、熱気溢れるコーダまで一気に演奏された。 たっぷりした弦、哀愁ただようフルートなどもあって音を着実に重ねながら進んでいったが後半になって音楽はぐっと盛り上がった。 田久保さんは、何度も左足を大きく踏み出す力の入れようだが、感情に押し流されるのではなく、的確な指示を与えていた。 音を伸ばしたり、抑揚をつけてもわざとらしさが全くなく音楽に媚びないのが田久保流だろうか。 オケもそれにじつによく応えていたと思う。 コーダではティムパニがまた深い響きとなりトロンボーンの斉奏も決まり、エネルギッシュに盛り上げたあとすっと終わった。 このあたりにも煽動的にならない姿勢を見ることが出来た。 スケールの大きな演奏が好きな人にとってはつまらないかもしれないけれど・・・
さてアンコールはクリスマスも近いこともあって、ルロイ・アンダーソンのソリ滑り。 田久保さんはサンタの赤い帽子をかぶるサービス付き。 音が出てびっくりしたが、それまで響きが深いと思っていたが、意外と弦楽器にも軽やかさが感じられて楽しい気分になった。 これまでの演奏は余所行きだったのかしら・・・ 弦楽器の弓の動きを見ていると、なんか微妙に揃っていなくて各自演奏を自分なりに楽しんでいるみたい(特にコントラバスの方の一人は弓の動きも大きくて楽しそうだった)。 ストラヴィンスキーもこんな感じだったらもっと面白く聴けたかもしれないなぁ〜 と思いつつ会場を後にした。