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大阪シンフォニカー交響楽団 第85回定期演奏会

真摯なオネゲルの交響曲第2番戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第85回定期演奏会

2003年3月7日(金) 19:00 ザ・シンフォニーホール

間宮芳生: オーケストラのための 「地球のともだち」(2002) <日本初演>
        (大阪シンフォニカー交響楽団委嘱シリーズ「21世紀の子どもの為に(1)」)
オネゲル: 交響曲第2番
シベリウス: 交響曲第2番 ニ長調 作品43

指揮: 曽我大介


前2回は出張でいけなかったので久しぶりの大阪シンフォニカーの定期演奏会。 いずれの曲ともオケは懸命に演奏しており、シベリウスの交響曲第2番は基本的に熱い演奏で締めくくられたように思うし、オネゲルの交響曲第2番は陰鬱な曲なのだがぐっと惹きつける真摯さがあった。しかし全体的にはなんだかちょっとノリきれなかった演奏会…というのが正直な印象である。

期待はずれといっては失礼なのが、間宮さんの「地球のともだち」の演奏については、日本初演なので曲のよしあしについては分からないが、どこか曲をなぞっただけの演奏という印象を持った。 メインのシベリウスについては、基本的に熱い演奏を目指していたのだろうが時折見せるクールな表情がどっちつかずな印象を与えていたように感じた。

しかし、いずれもオケのメンバーは本当にしっかりと演奏していた。 それが一番良い感じで出ていたのがオネゲルだったように思う。 この曲の持つ陰鬱さにのめり込むことなく、緊密な音の綾を終始感じさせてくれた。 また各ソロの音調もオケの色調にきちっと染まっていて、きちんとした統一感が出ていたのがとてもよかった。 パウル・ザッヒャーの遺産と題されるだけあってこれは素晴らしい演奏だと思った。


簡単に演奏会をふりかえってみたい。

1階席は7割程度だろうか、見える範囲での2階サイドは1割、3階サイドは5割程度の入り。 現代音楽のプログラムだからだろうか、ちょっと寂しい客席だった。 

そんななか間宮さんの「地球のともだち」が演奏されたが、1曲目「お月さまいくつ」は冒頭こそ透明感のある響きだな…と思ったけれど、どこか弦と管がズレれて聞こえた不思議な響きに思えたのは聴いていた席のせいだろう。 美しいところもあるのだが、ぐっと惹き込まれないという印象。 2曲目「おやゆびピアノ」は丁寧に演奏しているという印象、3曲目「やまのこもりうた」も曲をなぞっているだけのような感じで弦楽器の艶もあまり感じられずまったく乗りきれない。 4曲目「ダニの歌」はよく揃って合わせているオケが印象的だったが、響きのふくよかさや楽しさがまるで伝わってこない。 5曲目「民謡」は憂いを含んだ曲だが、ここでもじわっ〜と感じてくるものがない。 オケは懸命にやっていて、力でストレートに盛り上がったあとすっと引いてゆくが、曲の奥行きが感じられない。 終曲となる6曲目の「ムカデのうた」になってようやく奥行きを感じるようになったが、でもなんとなく堅い表情が見え隠れする。 

すっと終わったこともあってか拍手はまばら。 間宮さんも会場にいらしていて、ステージにあがって曽我さんやオケを称えていらっしゃったが、ちょっと可哀想な感じもした。 曲は決して悪いとは思わないし、演奏もしっかりしていたと思うけど、冨田勲さんの新日本紀行のテーマ曲みたいに、もうちょっと郷愁を感じさせてくれるような演奏にコクやタメが欲しかったと思うのはピントがズレている?? とにかく、21世紀の子供のための音楽にしては、几帳面さで楽しさがどっかにいっちゃったような印象を持った。

管楽器が引き下がり、8型の弦楽器群になってオネゲルの交響曲第2番が始まった。 

中低弦による暗い旋律による開始から集中力が高い。 ザザさんのヴィオラ・ソロが意味深長なソロを奏でるが、これがオケの色調に染まっていてぐっと惹きつけられた。 テンポが速くなって全奏となるが、さっきまでとはうってかわって充実した響きの熱さがある。 そしてまた暗いテーマに戻っても緊密な音楽がまったく弛緩することがなく素晴らしい演奏だった。 
第2楽章は息詰まるような重苦しい音楽が始まったが、ここでも緊密な音の綾が織りなしていて耳が離れない。 チェロの野村さんのソロも(いつもはちょっと浮き気味になるところだが)全体によくあっていた。 
第3楽章の前に臼田さんがオルガンの横に出てきた。 透明感のあるヴァイオリン群の響きを中心に、透徹した響きの合奏が印象的だった。 森下さんのソロも全体によく合っていた。 しだいに音楽が熱を帯びてき、音楽がぐんぐんと盛り上がり、臼田さんのまろやかな響きのファンファーレも素晴らしかったが、緊張感をそのまま持続したまま緊密な音楽のまま幕を閉じた。 この曲の持つ陰鬱さにのめり込むことなく、緊密な音の綾を終始感じさせてくれた素晴らしい演奏だったと思う。

休憩をはさんで、シベリウスの交響曲第2番。 

第1楽章は、全体的に明るく、柔らかい春の息吹を感じさせた演奏だった。 ただ冒頭の弦楽器の脈打つようなフレーズでは森下さんの響きがちょっと突出して聞こえたのがアレっと思った。 金管ファンファーレ、弦分奏ともによくそろっているし、要所を花石さんのティムパニが締めて、暖色のシベリウスであった。 

第2楽章、低弦のピチカートはよく揃っててファゴットの憂いを帯びた旋律がよかった。 しかしこのあとのクライマックスが築かれたがちょっと表面的に盛り上がっただけのような印象。 抑えていたのかもしれないが、もうちょっと深くいってほしかったところ。 このあと臼田さんのトランペットが素晴らしくてゾクっときたし、花石さんのティムパニも轟音だけではない打音にそれぞれ色を感じさせる巧みさで惚れ惚れとした。 個々の奏者は巧いと思って聴いていたが全体的な統一感になると印象が薄い。

第3楽章の前に、管楽器奏者が一斉に楽器の手入れをし、準備万端整っての開始。 冒頭の弦楽器の音が素晴らしかった。 艶や強靭さを併せ持っているという感じ。 しかし何よりこの楽章はオーボエでしょう。 この美しいメロディに入る前にちょっと間を持たせていたよう。 これにフルートも柔らかく絡んできて一服の清涼剤のよう。 このあとの弦楽器もまた強靭で、ここの対比が本当に素晴らしかった。 このまま音量を増して力を溜め込むような感じで終楽章に入った。

ここからは一気にエンディングまで熱い音楽がとうとうと流れていくのかと思っていたが、意外と抑え気味であった。 節度を保っているというのだろうか。 しかしもうちょっと粘って欲しい部分もすっと過ぎていったりして、なんか肩すかしくらった部分もあって、エンディングに向けてもっと盛り上げて欲しいところ。 爆演だけでない大阪シンフォニカーの新機軸だろうか。 弦楽器が上品にすぎてクールにまとまっていたようにも感じた。 エンディングはまたぐんと盛り上がったのだけれど、なんか中途半端な印象を残したまま終わったように思えた。

この曲、熱演でぐいぐいいくもよし、叙情性を称えたクールな演奏でいくのもよいと思う。 しかしこの演奏は、冒頭の楽章と第3楽章は熱演型だったと思ったのだけれど、あとはどことなく掴み何処がない感じのする場面があったのではないろうか。 全体を通じると熱演であったことは否定しないし、オケのメンバーが懸命だったのは見ていてよく分かるのだけれど、全体的にはなんだかちょっとノリきれなかったなぁ〜というのが偽らざるところだった。