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神戸市民交響楽団 第53回定期演奏会

全体の統一と自主性・積極性が見事に調和戻る


神戸市民交響楽団 第53回定期演奏会
2003年3月30日(日) 14:00 神戸文化ホール・大ホール

シベリウス: 交響詩「フィンランディア」作品26
チャイコフスキー: バレエ音楽「白鳥の湖」作品20 より
  1.情景
  2.ワルツ
  3.4羽の白鳥たちの踊り
  4.情景(オデットと王子のアダージョ)
  5.ハンガリーの踊り(チャールダッシュ)
  6.情景・終曲
シベリウス: 交響曲第2番 ニ長調 作品43
   
(アンコール)  
エルガー: 「エニグマ」第9変奏曲

指揮: 藤田謹也


まる1年ぶりになってしまった神戸市民交響楽団の定期演奏会(前回は2001年3月11日の第49回定期演奏会)です。 義理と人情のオーケストラとホームページには書いてあるけれど、アンコールのエルガーのエニグマ第9変奏曲はまさしくそんな気持ちの乗り移った心に沁みる名演でした。 昨年末、団員やトレーナーの方が相次いで癌で他界されたとのことで、その追悼演奏だったのだそうですが、オーケストラの皆さんの想いがこちらの心にじんじんと響いてくる素晴らしい演奏に感動しました。 さすがにこの演奏の後にはもう何も必要ないと感じるほどの素晴らしい演奏でした。

また、アンコール曲だけではなく、この演奏会で演奏されたどの曲もまたそれぞれに素晴らしい演奏でした。 特にメインのシベリウスの交響曲第2番は、途中で金管楽器に多少の乱れを感じる惜しい面はありましたが、それ以上にオーケストラの自主性がうまく引き出された演奏でした。 先日聞いた大阪シンフォニカーの定期演奏会で聴いた同曲の演奏よりも個人的には好きな演奏だったのでとても満足しました。

これらは、このオーケストラの良い面を知り尽くした団内指揮者である藤田謹也さんの見事な棒さばきによるところが大きいように思います。 オーケストラの各パートに出される的確な指示によって全体の統一が図られるとともに、信頼によって出された指示から各パートの自主性・積極性が見事に引き出されて調和していました。 プログラムにも書いてありましたが、プロの指揮者によって訓練された演奏を聴かせてもらうことも楽しみなのですけれど、オーケストラの持てる良い面を見事に引き出し、自分達の音楽を聴かせてくれる団内指揮者による演奏もまたアマチュア・オーケストラを聴く楽しみであることを改めて認識させられた演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみます。

冒頭のフィンランディアは、重厚感よりもピンと張ったような強靭さ感じるファンファーレからゆっくりと歩みを始めました。 弦楽器の分奏もきちんとして、ヴァイオリンにはちょっと冷んやりとしたクールさを感じる演奏でした。 後半、クライマックスでも抑制された音楽は同じで、金管ファンファーレが暴走することなく、輝かしさのなかに渋み感もありました。 ティムパニがクレッシェンドしながらぐっと盛り上げる高揚感を感じさせる演奏でもあったのですが、エンディングをすっと終わったせいか、ちょっと会場の反応は鈍かったみたい。 演奏効果的にはもっと暴れたほうが面白かったのかもしれませんけれど、オケのカラーとしては似合わないみたいですね。

管楽器が入れ替わってのチャイコフスキーの白鳥の湖の音楽は、打点の明確な音楽でした。 このオケのことを知り尽くした団内指揮者藤田さんによって、団員の良い面を見事に引き出した演奏で、このオーケストラのポテンシャルの高さを強く感じました。 1曲目の「情景」では、フィンランディアとが違った瑞々しいヴァイオリンの響きがチャイコフスキーらしさを感じさせてくれました。 オーボエの朴訥とした感じもさわやかで、後半はホルンの斉奏がタイトに決まる熱のこもった力強い演奏で終わりました。 2曲目の「ワルツ」は力強さと優雅さを振り分けたメリハリの効いた演奏でした。 トランペットの響きがほのりと甘くてよかったです。 3曲目の「4羽の白鳥たちの踊り」では木管アンサンブルの妙とそれを支える弦楽器が見事に絡んでいました。 4曲目の「情景」では、ハープ、ヴァイオリンと美しいソロが続きました。 ただこの後半あたりからちょっと単調に感じる面も出てきたように思いました。 5曲目の「ハンガリーの踊り」も前半は単調に感じた面もありましたが、後半はメリハリを効かせた音楽で楽しませてもらいました。 6曲目の「情景・終曲」では熱気が漲った演奏でぐっと盛り上がりましたが、藤田さんは常にクールに振り分けて、オケの自発性を見事に引き出した素晴らしい演奏で幕を閉じました。 どの曲もとても真摯な演奏で満足しました。

休憩をはさんでのシベリウスの交響曲の第2番。 前2曲ともに縦のリズムを明確に打ち出したような演奏だったので、どのように料理されるのか期待(不安)を持っていたのですが、期待を遥かに超える素晴らしい演奏でした。 難しいリズムパターンを見事に処理していたのはもちろんのこと、4つの楽章に統一感があったこと、藤田さんの的確な指示によってオーケストラの各パートが一体となって常に前向きな姿勢で演奏していたことが強く印象に残りました。 多少金管ファンファーレの乱れを感じる面もあったことにはありましたが、そんな技術論ではなく、指揮者とオーケストラが一体となって自分達の音楽を前向きに演っていることの素晴らしさをとりたいと思います。 自主性という言葉を強く感じた素晴らしい演奏でした。

第1楽章の冒頭から熱気のこもった深い響きによる開始でした。 管楽器、特にホルンがバシッと決まっていたのがカッコかったですね。 このあと弦の各パートがしっかりと噛み合い、タイトなホルンの伴奏が要所で決まってたのが印象的。 とても均整のとれた熱い音楽になっていました。 金管のファンファーレも各パートがしっかりしていて、特に低音金管がきちんと分離して聴こえてきて、輝かしさだけでないところが本当に素晴らしい。 充実した音楽にまいっていたのですが、さらにエンディングもすっーと潮が引いていくようで、実に心地よい着地に思わず心の中でブラボーと叫んでいました。

第2楽章は、ティムパニのトレモロからコントラバス、チェロと続くピチカート、いずれもよく揃っていて気持ちのよいスタートでした。 ファゴットのソロからホルンへと進むなど、ゆったりと音楽を慈しむように進んでいきました。 ここに弦楽器が入って渦巻くようにして音楽が徐々に盛り上がっていくのもまたとても自然な感じ。 常に均整のとれた音楽なんですが、随所にオケの自発性を感じた演奏でした。 主題が入れ替わる部分も間合いをきちんととり、音楽をゆったりと噛みしめるかのよう進んでいきました。

第3楽章は、低弦がきちんと揃っているから速さはあっても音楽に芯を感じさせる迫力のある音楽となって展開されていきました。 オーボエの場面も甘く切ないのですが、これを支えるフルートやチェロ、ホルンなどもしっかりしているから聴き応えが更に増します。 この後の場面転換もスパっと決めて、コントラバスが右側からグイグイと、ヴァイオリンが左側から透明感ある響きで押し寄せてくる。 ともによく揃っていてステレオ効果抜群なので、おおっと思いました。 そして終楽章の手前の混沌とした響きから徐々に音楽が明快になっていくあたりもまた見事でした。

終楽章は雄大な音楽となっていましたが、要所を的確に締めていたのがとても素晴らしい。 ちょっと粘度を感じさせる弦楽器、木管アンサンブルの妙を堪能しながら曲を聴き進んでいきました。 フィナーレにかけては、ぐんぐんと力を増してくるものの、藤田さんはオーケストラを煽ることなく常に冷静で自然な間合いをもってオーケストラを乗せていったようです。 締めくくりも透明感を失わないヴァイオリン、しっかりした金管楽器の輝きに木管楽器の奮闘も入った全員が一丸となった勝利ともいえる感動的なエンディングを築いていました。

終演後、会場から大きな拍手とブラボーに包まれていたとおりの素晴らしい演奏でした。 確かに多少の金管ファンファーレの乱れを感じる面はあったように思いますが、先日聞いた大阪シンフォニカーによる演奏よりも良かった(好きな演奏)と思います。 何より全体的な統一感があったこと、藤田さんを信頼したオーケストラから、自主性や積極性が見事にく引き出されていたことがその理由です。 

なおアンコールには、エルガーのエニグマ第9変奏曲が演奏されました。 昨年末、団員やトレーナーの方が癌によって相次いで他界されたとのこと。 その追悼演奏としてアンコール曲に選ばれたのだそうですが、オーケストラの皆さんの想いがこちらの心にもじんじんと響いてくるような演奏で感動しました。 とにかく、この曲をこのような気持ちで聴いたことがありませんでした。 音楽の力をまざまざと感じました。 とにかくこの演奏の後にはもう何も必要のないと感じさせられるほどの素晴らしい演奏をあとに会場を出ました。