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吹田市交響楽団 第56回定期演奏会

意欲的な英雄交響曲、雄大な未完成交響曲戻る


吹田市交響楽団 第56回定期演奏会
2003年5月17日(土) 18:00 吹田市文化会館・メイシアター大ホール

ワーグナー: 歌劇「リエンツィ」序曲
シューベルト: 交響曲第7番ロ短調 D.759 「未完成」
ベートーヴェン: 交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」(*)

アンコール: ベートーヴェン: 「プメテウスの創造物」からフィナーレ(*)

指揮: 米山 信
指揮: 新谷 武 (*)


久しぶりの吹響の定期演奏会でした。 今回は「未完成」「英雄」ともに新ベーレンライター版の楽譜を使った演奏会でしたが、単純に分けるならば「動」と「静」ほどの解釈の違いのある演奏内容でしたが、ともに意欲的な演奏に満足しました。 特に新谷さんによる英雄交響曲は、冒頭は気合がちょっと空回りしているように感じる面もありましたが、フィナーレでは熱く響くまさにシンフォニーとなり、タクトがおろされたときにはブラボーが飛び、盛んな拍手を受けていました。 大のつくほどの熱演でした。 また米山さんによる未完成交響曲は、新ベーレンライター版という枠を超越し、たっぷりとして充足感のある演奏がとても魅力的でした。 個人的にはこちらの充実感をとりたいと思います。 さすがに米山さんの指揮は聴かせどころをしっかりと抑えていて、いつもの省エネ的な無駄のない指揮なのですが、すっと動く身体の動きによってオケが見事に反応していたのが印象に残りました。 低弦の響きを基調にし、グレートにつながる雄大さを持ちあわせた素晴らしい未完成の演奏に満足しました。

数年前から新ベーレンライター版という新しい楽譜を使う演奏が増えていますが、今回のように二人の指揮者によって解釈の違いが鮮明に打ち出された演奏というのも珍しいのではないでしょうか。 これもアマチュア・オーケストラらしさかもしれませんが、いずれにしても常に新しいことに前向きにチャレンジする姿勢に敬意を評するとともに、今後にも期待したいと思います。 そして、いずれの演奏においても指揮者の解釈をしっかりと受け止めて実現していたオーケストラの健闘を称えたいと思います。 


簡単に演奏会を降り返ってみます。

家を出るのに手間取ったため開演5分前に到着しました。 急いで2階席への階段を駆け登ったのですが、見知らぬオバチャンが笑いながら「ガラガラよ」と教えてくれました。 いつも2階席は人が少なくて落着いて聴けるのを有難たく思っていますが、いきなり「ガラガラよ」と言われるのもショックなものですね。 とにかく気分を落ち着けてホールに入りましたが、2階席の最前列は埋まっていましたので中央通路後ろの中央前列に陣取りました。 ここ足元が広くて楽なんです。 で、2階席はだいたい2割程度だったでしょうか、演奏開始後にもお客さんがどんどん入ってきたので、最終的には3割近く埋まっていたように思います。 1階席は5割程度でしょうか。 確かに少ないお客さんだったのですが、演奏会が終わったときにはホール内は熱気に包まれていて、この時間を共有できた人たちは幸せだったと思います。

さて、話を音楽にもどして、冒頭のワーグナー「リエンツィ」序曲。 トランペットの単音による緊張感を伴った開始、ここから荘重な音楽がゆったりと進んでいって上々の滑りだし。 数年前の某アマオケの演奏会では緊張からかラッパの音がほとんど出ないまま曲が進んでいったことを思い出したけれど、ここではそんな心配はなく巧いものでした。 音楽は終始きちんと統制されており、重く響くティムパニ、トライアングルやスネア・ドラムなどを殊更に強調した響きになっていないのが誠実なところです。 しかし「いぶし銀」のような深みがあるかというとそこまでいかなくて、弦楽器にもうちょっと深みとかコクが欲しいようには感じましたが、アマオケの演奏会の序曲にそこまで要求するのが酷かもしれませんね(スミマセン)。 フィナーレでは、テンポが上がって明るく開放感を伴った終結部まで一気にいった感じですが、それでもイケイケドンドンにならず音楽が崩れない誠実なワーグナー演奏でした。

管楽器のメンバーが降りてシューベルトの未完成。 新ベーレンライター版の楽譜を使っているとのことですが、密度の濃い演奏で、音楽をいっぱい堪能した気持ちになりました。 素晴らしい演奏でした。 第2楽章のフィナーレがすぅーと終わったのちも暫くボケーっとしていたほどですが、そのせいか拍手もまばらになったと思いますが、じわじわっと感動が押し寄せてきた演奏でした。 米山先生、もう一度出て来られても良かったのでは、なんて思いました。 さてその第1楽章、冒頭から弦楽器の響きが深くまろやかでした。 シューベルトはこのようによく歌う弦楽器がないと物足りません。 そして主題の弦楽器の分奏がしっかりとしているから楽器間の響きの調和も綺麗に響きます。 新ベーレンライター版なのでもっとキュートな音が出てくるのかな、と勝手に想像していましたが、低弦をしっかりと鳴らして力強く大きな音楽になっていました。 なるほど、楽譜の違いよりも指揮者の感性の問題だなと改めて気付いたしだいです。 歌う木管楽器も加わり、随所にシューベルトの歌の世界が演出されていました。 フィナーレは力強くぐっと盛り上げたのち、熱気を孕んだまま終わったのも見事でした。 第2楽章は、やや早目のテンポだったかしら。 ここでも熱い響きに聞こえたのは中低弦がズンズンと響いていたからでしょう。 第2主題でのクラリネットのソロが穏やかでハイライトのようになっていましたが、このあと熱い音楽にもどりました。 柔軟さをもってよく歌うのですが、基本的には濃い音楽だったので、なんだか音楽をいっぱい堪能した気分になりました。 そしてフィナーレは第1主題の断片を一音一音噛みしめるようにし、余韻をもって静かに終りました。 聞きほれてちょっとぼっ〜としてしまいました。

いつもながら米山さんの指揮は省エネ的な無駄のない指揮なのですが、上から見ているとそんな米山さんの要所をきちんと押さえた動きは観ていてとても安心できるものです。 そしてオケがきちんとそれに反応しているのもよく見えるので、客席では安心して音楽にのめり込めこむことができました。 

休憩時間、舞台上の管楽器スペースの整理をして余分なイスを取っ払ったのでスッキリしました。 そしてその舞台最後列には5つのイスが1列に並んでいて、左3つがホルン、右2つがトランペットとなり、更にこの右側にはティムパニが位置していました。 さて元気よく新谷さんが出てこられ、緊張の第1楽章の冒頭の音が出ます。 タン!タン!とちょっと軽めの音でしたがタイトに響いてここから物凄く速いテンポで駆け出しました。 しかしオーケストラは響きが薄くて付いていくのが精一杯といった感じだったでしょうか。 新谷さんは意欲的で、大きな身振りでオケを引っ張っていこうと懸命でしたが、指揮者踊れどオケついていかずってところで音量は上がらずちょっと空回り気味。 それでも新ベーレンライター版らしく(?)前衛的な表現でスパスパとフレーズを切って押し進めていきましたが、展開部あたりからちょっと余裕が出てきたのでしょうか、オケの演奏にも熱気を感じるようになりました。 再現部になると歌うようにもなってきたようです。 フィナーレでは、終始コンパクトに叩いていたティムパニもマレットも持ち替え、荘重な響きになってこの楽章を終わりました。 第2楽章は先の楽章とは比してゆったりした葬送行進曲として始まりましたが、相変わらずフレーズを切って落とし、これによって音楽の流れを立ち切っていたのは相変わらずでした。 こうすることで悲壮感を演出していたのでしょうか。 メリハリをつけながら音楽が進んでゆきましたが、展開部あたりで新谷さんが低弦に煽りをかけてからちょっと曲想が変わったようです。 大きな音楽に変身したみたいでした。 低弦は弓を押しつけるようにして強調され、タイトなホルン・トランペットによる激しいパッセージ、ティムパニも強打となって築いたクライマックスのあと、一転して緻密に音を重ねたエンディングとなりました。 第3楽章からオーケストラの響きがより一層力強くなったように思います。 ちょっと湿り気のある響きも印象的でした。 ホルンのトリオは雄大で力強いものでしたが、このあとの弦楽器の響きも熱い演奏が展開されており、オケーストラのメンバーもノッてきているようでした。 スパっと楽章を終わったあと一瞬の間をもって第4楽章に力強く突入しました。 ピチカートには弾力がありましたが、ちょっとテンポが速めだったでしょうか、このあとの各声部の絡みもちょっと性急に感じられました。 そしてだんだんとテンポがあがり、オケメンバーも一生懸命な熱い響きが満ちてきましたが、ちょっと余裕の無さにもつながっているようにも感じましたが、そこまで言うのは酷なのかもしれません。 終わりに近づいたオーボエのフレーズは一服の清涼剤にようで、このあたりの対比はよかったです。 そしてこのあと低弦がうなりをあげて一気にフィナーレになだれ込み、大きく熱い音楽となっての幕でした。 さすがにここまで盛り上がった終わり方なので、会場からブラボーが飛び盛んな拍手に包まれていました。

全体的にはちょっとアンバランスな面も感じましたが、意欲的という言葉がとてもよく似合う英雄交響曲でした。 おつかれさまでした。