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大阪シンフォニカー交響楽団 第87回定期演奏会

独特の艶と厚み、モダンなドヴォルザーク戻る


大阪シンフォニカー交響楽団 第87回定期演奏会
2003年7月3日(木) 19:00 ザ・シンフォニーホール

ドヴォルザーク: 序曲「謝肉祭」作品92
ドヴォルザーク: ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53
ドヴォルザーク: 交響曲第8番ト長調 作品88

独奏:天満敦子(vn)

指揮:ウラディーミル・ヴァーレック


来年はドヴォルザークの没後100年にあたる。 そのシリーズとしてチェコの中堅指揮者のウラディーミル・ヴァーレックさんを招聘したチクルス第1回目。 CDも持っているヴァーレックさんを聞きたくて、そして大阪シンフォニカーもどう反応するのかを楽しみに小雨降るなかシンフォニーホールでの定期演奏会に足を運んだ。 ヴァーレックさんはチェコの中堅指揮者だが、いわゆるお国ものを強調した民族性を声高に主張することなく、またオケもよくなりがちなイケイケドンドンな演奏から見事に一線を画していた。 オケはヴァーレックさんの要求に見事に応え、いずれの場合でもオケの弦・管ともに個人奏者の聴かせどころは手堅くまとめ、全体から突出することがないのが素晴らしかった。 
そしてその中でも特筆したいのは花石さんのティムパニ。 マレットを各種持ち替えても常に響きが深く大きくなるように配慮され、いずれもコンパクトな打音が演奏の芯になっていた。 今回の曲からいつもの豪快ともいえる強打を期待した人には少々物足りなかったかもしれないと思うが、ティムパニからじつに多彩な響きを導き出して曲を最後方から締めていた。
オケは常時深い響きや独特の艶を出しつつ実にシャープでモダンな演奏が展開された。 このオケ、外国人指揮者とのほうが相性が良いのでは・・・と余計なことも考えてしまうほど遥かに期待を超えた演奏だった。

なお天満敦子さんによるヴァイオリン協奏曲は、雨のせいもあったのだろうか、楽器が存分に鳴っていないようだった。 そして終始これを気にしているのか調弦したり弓を調整する場面も散見される演奏だった。 もともとラプソディみたいな曲の冒頭からのめり込むように聴くこともできずにいたが、第2楽章の冒頭のソロからしばらく続く憂愁の情のようなものを感じさせた部分がよかった。 しかし何より素晴らしかったのはアンコールで(曲名を確認するのは失念したがバッハの無伴奏のなかの曲だろう)、楽器をフルに鳴らした奥深い響きでホールを満たしたのにはちょっと息をのんだ。 裏をかえすと協奏曲ではこのように豊かな響きが出ていなかったということでもある。 アンコールのほうが断然よかった。

このオケの特別会員を仕事の都合などで辞し、昨年度は連続券の購入をして過ごしたが、今年はそれも辞めざるをえなかった。 しかし思い入れの多いオケには違いなく、今後も仕事の都合とプログラムに合わせて出来るだけ聴きたい。 そして心はすでに来年3月のヴァーレックさんとの再競演を待ち遠しく思っている。 ヴァーレックさんがポジションにつけばまた無理してでも会員に戻ってもいいかな・・・ とも思えた演奏会だった。


簡単に演奏会を振り返って見たいと思う。

仕事で出遅れたこともあり、小雨そぼふるなか大急ぎでシンフォニーホールに向う。 急いだかいあって開演30分前に到着。 ちょっと汗だくになったけれど、さっそく座席に身を沈めて火照った身体を休めた。 雨が降っているけれど会場は1階席は8〜9割は入っていたろうか、まずまずの入りではなかったろうか。 僕の両サイドにもやはり仕事を終えて駆けつけてきたと思えるサラリーマン風のおじさんがやってきたのにはちょっと吃驚した。 ヴァーレックさんのドヴォルザークに共感を覚えるおじさんのための演奏会なのかな・・・なんて思えた。 三々五々オケのメンバーが出てきてそれぞれに練習を始める。 そして全員が出てきてステージ上で練習しているのを見るのもまた大阪シンフォニカーらしい光景で期待が高まっていった。

ヴァーレックさんが静かな笑みをたたえながら登場。 なんか菅原文太さんを大きく頑丈にした風貌だな・・・と思っているうちに一礼して「謝肉祭」序曲が始まった。 
勢いのいい音楽が出てきたが、けっして突っ走ることなくきちんと統制された開始だった。 ちょっと軽く流していたるようなのは風格だったのかも。 副主題のまろやかな響きの弦楽器がじつに素晴らしい。 いい演奏になるなと直感した。 曲が進んでコールアングレにのってフルート、オーボエの調べのあとクラリネット、そして森下さんのヴァイオリン・ソロとここはシンフォニカーらしく綺麗に纏めていった。 個人的には少々フルートの音が全体かた飛び出して少々強く感じたのと、逆にヴァイオリンがちょっと甘すぎるかなとも思えたが、これは嗜好の問題だから(昔から聴いているためかまだ響きに馴染んでいないことが大きいとも思うので)ご勘弁いただきたい。 熱気が増してフィナーレに入っていったが、ここでも音楽がまったく前のめりになることなどなく、落着ついた豊かな響きでもって曲を締めた。 充実した演奏だった。 失礼ながら、イケイケドンドンで豪快に曲を締めることを想像していたけれど、見事に(良い方向で)裏切られました。 とくに花石さんのティムパニが素晴らしかった。 当初大きなマレットから奥深い響きを出して曲を後ろから支えていたが、後半は小さなマレットに交換。 ここではシャープだけれど打ち方をコンパクトにすることで響きを多くとるなど常に考えられた演奏で見事にこの曲の芯を果たしていた。 終演後、ヴァーレックさんが奏者を立たせて栄誉を称えようとしていたとき、一瞬誰のことか分からずオケのメンバーが戸惑っていたけれど、僕ならまっさきに花石さんでしたけれどね。

ヴァイオリン協奏曲は弦楽器を1プルト絞り込んで第1ヴァイオリン10名の編成。 天満さんが大きな体躯で登場されると僕の左横の人が盛んに拍手しておられる。 天満さん目当ての人も多かったかもしれない。 
さて演奏は耳馴染みの少ない曲だけにちょっと難しいのだが、雨のせいか楽器が存分に鳴っているとはいえず、またそのことを終始気にしているのか調弦したり弓を調整する場面も散見された演奏で、あまり充分といえるものではなかったようだ。 終演後、小首をかしげて指揮者・コンマスと握手しながら声をかわしていたような天満さんの行動からもそれが伺えた。 しかし何より素晴らしかったのはアンコール(曲名を確認するのは失念したがバッハの無伴奏のなかの曲だろう)。 楽器をフルに鳴らした奥深い響きでホールを満たしたのにはちょっと息をのんだ。 これも裏をかえすと協奏曲ではこのような豊かな響きが出ていなかったということでもあってアンコールのほうが断然よかった。
さて、第1楽章は決然とした深いオケの響きによる開始から情熱的(怨念ともいえる?)深い情感を持ったソロで始まった。 もともとラプソディみたいな曲の冒頭からのめり込むように聴くこともできずにいたが、天満さんの楽器の響きがどことなく湿っぽい感じ。 譜面を見ながらの演奏だが、終始独自の世界にいるような感じなのだが、イマイチ乗り切れないみたい。 演奏の合間に楽器を見たり響きを確かめたりしているのも散見された。 オケはしっかりと合わせているといった感じだったが、再現部だろうか第1ヴァイオリン全体が大きく身体を動かして表情を付けていたのと、終結部あたりでソロに絡む木管楽器の響きで健闘しているのがよく分かった。 切れ目なく入った第2楽章はプログラムに書かれた「日没後の赤い夕空」といった感じ。 憂愁と情熱が盛り込まれたゆったりとしたソロが素晴らしかった。 細田さんによるホルンソロなど、オケもまた終始抑制された優しい響きでサポートしていた。 終楽章は愛らしいソロで始まった。 力まず、テクニックよりも情感を大切にした演奏だったみたい。 ただここでも楽器が充分に鳴っていないのか、やけに湿っぽい感じ。 天満さんも終始楽器を気にしていて、調弦したり弓を調整しながらの演奏だった。 ドゥムカ風の主題のあたりからその効果が出てきたのか響きがようやく改善されて透る響きとなって技巧を凝らしたソロをこなし、このあと音楽全体がやや大きくなってのフィナーレに結びついた。
なんか良くも悪くも天満さんの一人舞台にオケが合わせていたような演奏だったみたい。

休憩をはさんでメイン・プロの交響曲第8番は、民族的なものから一線を画したシャープでモダンな素晴らしい演奏だった。 ヴァーレックさんの要求に見事に応えたオケは、これまでに聴いたことのないような独特の艶や深い響きを醸しだしていた。 まったくイケイケドンドン的な豪快さを主張したりすることなどなかった(これも良い意味で裏切られた)。 とにかく弦楽器・管楽器・打楽器のいずれもが同じ音色で統一され、誰一人突出することがなく、正直ヴァーレックさんとの良い相性が感じられた。 今後の再競演も大いに期待したい。
第1楽章は冒頭のチェロの豊かな響きで曲のなかにまずぐぃっと惹き込まれた。 コントラバスのピチカートも芯があるのにまろやか。 フルートの旋律からピッコロに引き継がれるところも実に自然で声高に主張することがない。 このあとの金管が入った足早のパッセージも巧みに力を抜いて前のめりになることなどなく上質な音楽が展開されたのにはもう痺れました。 音楽の角が鑢(ヤスリ)で綺麗に研磨されているみたい、じつに肌触りが良い。 もうここで今日の演奏は総て決まった感じ。 あとは見事な音楽に身を任せたといっても過言ではない。 つんざかないトランペット、よく揃って透明感の高いヴァイオリンも気持ちよかった。
第2楽章は、その透明感あるヴァイオリンの艶のあるふくよかな響きにまず驚いた。 そしてフルートも謝肉祭序曲ではちょっと浮いた感じも受けたけれどもうここでは見事に全体にマッチしリードしている。 また森下さんのヴァイオリン・ソロも可憐であって全体によくマッチした響きが素晴らしい。 クライマックスはクールさとゆったり感の両方を持ち合わせたもので、このゴツイおっさんの指揮者からこんなに素直な音楽が出てくるなんて・・・職人技を感じた場面だった。
第3楽章は感情過多になることのない初々しく美しい響きによるワルツで始まった。 実に節度を持った音楽でもあった。 オーボエの旋律は素朴な響きで、いつもの新本さんの艶と伸びのある明快な響きをぐっと抑えて全体に調和させていたようだ。 このように全体的に管楽器は抑え気味であった。 また弦楽器は中低弦を中心にした響きは長めにとっており、花石さんのティムパニもまたマレットを終始持ち替えながらも響きの深さに配慮した演奏が展開されていった。
終楽章、これまでに書いたすべての配慮が行き届いた演奏で何も言うことなし(で終わっても何なんで・・・)。 まろやかでかつ輝かしいトランペットのファンファーレで幕をあけ、ヴァーレックさんはこの楽章では特に中低弦の響きに注意を払いながら曲を進めていった。 指示の行き渡ったオケもまた忠実にこれを再現していた。 タイトなホルン、いぶし銀のようにくすんだトロンボーン軍団の響きも実に素晴らしい。 コーダに入ってもまったく音楽の流れが前のめりになるなどことなく、風格をも感じさせたフィナーレとなってしっかりと締めくくられた。 
会場から大きな拍手で包まれ、さかんにブラボーも飛んでいたが、数度のカーテンコールのありアンコールは無くお開きとなった。 これだけの演奏のあとに生半可なアンコールは不要なのでこれも納得できる。 コンマスの森下さんが会場に向かって一礼して引き上げるとき、ここでまた一段と大きな拍手が贈られていたことからも今夜の演奏が大成功だったことが伺える。
元気の良すぎるオケでもあるだけに、ヴァーレックさんとはとても相性が良いようである。 すでに次回3月の再競演がとても楽しみである。