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近畿フィルハーモニー管弦楽団 第18回定期演奏会

重厚なシューマンと力強いドヴォルザーク戻る


近畿フィルハーモニー管弦楽団 第18回定期演奏会
2003年7月6日(日) 14:00 いずみホール

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」 序曲 (*)
シューマン: 交響曲第3番変ホ長調「ライン」作品97
ドヴォルザーク: 交響曲第9番ホ短調「新世界より」作品95

アンコール:ドヴォルザーク: スラヴ舞曲第3番

指揮:津川 誠(*)、岡田良機


3年連続で聴いている近畿フィルの演奏会。 梅雨のこの季節、年に1回いずみホールで定期演奏会を開催している近畿フィルですが、幸運にも雨の日の記憶がありません。 そして今日もまたそんな梅雨空を吹き飛ばすような元気な演奏会でした。

ナブッコ序曲はちょっと手探り的でしたが、堂々としたシューマンの「ライン」と、力強くタイトに締まったドヴォルザークの「新世界より」の演奏が展開されました。 どちらの交響曲もとてもよく纏った演奏でしっかりしたものでした。 特に「新世界より」では各パートともよく纏っていて、弦の分奏も決まっていましたし、いずれの曲でもタイトに締まったホルンの斉奏が印象に残りました。 「新世界より」の終楽章は見事に盛り上がったフィナーレを形成していました。 
ただ、強いて難を言わせてもらうならば・・・音量の制御が乏しいことでしょうか。 いずれの曲も中音から強音域で推移していたため、ちょっと聴き疲れしてしまいそうになりました。 ここに抑えた表現が加わるならばもっと感銘を受ける演奏になったと思います。 

指揮者の岡田さんは例によって終始端正な指揮ぶりで各パートを煽るようなことがありませんでした。 オケの主体性に任せていたようですので、このあたりはオケの更なる成長に期待したいところです。 せっかく響きの良いいずみホールを使っているので弱音の妙なる響きも聞いてみたいと思っていますので・・・生意気いってすみませんが期待しているということでお許しください。


簡単に演奏会を振り返って見たいと思います。

梅雨の合間で時々薄日の差す天候のなか、森之宮から歩いていずみホールに向いました。 歩いても汗だくになることはないものの、開演前のホールの中ではプログラムをウチワ代わりにあおぐ人が多くいました。 だいたい9割くらい入っていたでしょうか、会場はちょっとした熱気に包まれていたようです。 お客さんの期待も大きいからでしょうか。 30分前にホールに到着したのですが、僕は最初にいただいた前の席(E列30番)を後ろの席(S列4番)に代えてもらいました。 30分前であまり良い席は残っていないようでした。 もっともこのあたりはステージがよく見えますし、音も安定しているので良かったと思います。

さて定刻になってオケのメンバーが整列入場ののち、コンミスの横山さん(今年からコンミスになられたのでしょうか)が足早に登場されてチューニングののちに指揮者の津川さんが登場しました。
「ナブッコ」序曲の冒頭の金管コラールはゆったりと落ちついた響きでしたが、このあといきなり打楽器が轟音を出したのにはちょっと吃驚しました。 元気いっぱいで、対比していたのかもしれませんが少々バランスがよくなかったみたいですね。 こののちも誠実に音楽は進んでいくものの、なんとなくこなれた雰囲気にならないままフィナーレに近くなったあたりで弦楽器にうねり感が感じられるようになりました。 あとトランペットのソロがまろやかで良かったのが印象に残りました。

若干管楽器メンバーが入れ替わり(指揮者の津川さんもホルンに座りました)、今年還暦を迎えられたという指揮者の岡田さんが登場されました。 グィと振った指揮棒から、さっきまでとはうってかわった堂々とした響きによってラインが始まりました。 弦のうねり感もあって充分な聴き応えがあり、ここにタイトなホルンの力強い斉奏が追い討ちをかけるように入ってくる実に立派なラインでした。 そして終始このスタイルは崩れることなく、重厚なラインの演奏でした。 特に両端楽章が聴き応えがありました。 ただし第2楽章のスケルツォも若干テンポを落としたでしょうか少々重くて「ラインの朝」というよりも真夏のような感じでしたし(ってラインには行ったことないのですが)、第3楽章も抒情的というよりも情熱的な感じでした。 ここらあたりはもうちょっと軽やかに感じなのが個人的には好みです。 でも第4楽章のトロンボーンによるコラールは荘厳で、ホルンの音も野太い感じに聞こえました。 そして終楽章は厚い響きによるフィナーレで、ここでもホルンの強奏が目だっていました。 しかしオケ全体がノッているようで、音楽がぐんぐんと大きくなってゆく熱演で曲を閉じました。
先にも書きましたが、元気があって重厚さを全面に打ち出したドイツ音楽としてのラインだたのですが、中間の楽章にもうちょっと抑制が効いていれば更によくなったように思いました。 演奏としては実によく出来ていただけに残念に思いました。

休憩を挟んで「新世界より」もまた元気のいい演奏でした。 「ライン」よりも弦楽器の分奏がきっちりと出ていたこと(これは曲の性格によるところも大きいと思いますけれど)、管楽器の各パートも均質な響きであったことなどから、ストレートな感じのよく纏った演奏でした。 ただやはりここでも抑制感には少々無頓着なところが散見されて、熱演の連続で少々聴き疲れしそうになりました。 このあたりが改善されると感銘の深い演奏になるのに・・・と少々残念にも思いましたが、元気に皆で纏って頑張った演奏は評価されてよいと思います。 お疲れさまでした。
その第1楽章の冒頭は、実に情感あふれた音楽で始まり、ホルン、木管アンサンブルと主題が導入されるあたり実にこなれた音楽の始まりに期待が持てました。 力強い音楽が展開されるのは「ライン」と同じでしたが、弦の分奏がしっかりしていて明晰な感じです。 これは作曲家の資質の違いによるのかもしれませんけど、じつにこなれた演奏が展開されていきました。
第2楽章の冒頭の和音は少々大きな音だったようです。 コールアングレの家路のメロディが大きく強調されることなく淡々と流れていくような感じでした。 これも全体調和の一つの見識かもしれませんが、もうちょっと全体の音量を下げてよかったのではないか、と思いました。 中間部以降もまたやや足早に音楽が進んでいるようでした。 変なアクセントなどつけずにインテンポでずんずんと進んでいるような感じです。 響きが1プルトのヴァイオリンとチェロによる旋律になり、ゲネラルパウゼで止まるところも実ににきっちとしていました。 変な演出などなく好感が持てるのですが、逆にあまりにあっさりと通過していったみたいでもありました。 難しいところですね。 とにかくハッキリとした分かりやすい音楽といった印象を持ちました。
第3楽章もホルンの強奏が目立った豪快なスケルツォでした。 ここでもよく揃っている元気いっぱいの音楽でした。 ここでも岡田さんは変な抑揚などつけず、律儀ささえも感じる指揮ぶりですし、オケの皆さんは常に熱演なんですけど、ちょっと単調さも感じてしまいました。
終楽章も一段と力強くタイトでした。 弦の分奏もはっきりと聞こえてきて、各パートともによく頑張っていました。 ちょっと控えめだった木管楽器もここではずいぶんと頑張っていたようですね。 もちろん金管楽器が常に曲をリードしているといった感じでした。 よくまとまったストレートな音楽で、開放的な響きで熱演を演出していました。 フィナーレはちょっとスピードを落とし、ゆったりとした感じから、トランペットの音が別れを告げるような感じでした。 ここもあまり尾を引かずにすっと切って落としたエンディングとなりました。 あざとさなど全く感じられないストレートな「新世界より」の音楽でした。 

岡田さんの指揮は終始端正な振りで、けっして各パートを煽るようなことがありません。 練習の成果をそのまま出そうとしているようでもあり、オケの主体性に任せていたようでもありました。 その結果として音量の制御にやや乏しく、いずれの曲でも中音から強音域で推移したようにも思えました。 せっかく響きの良いいずみホールを使っているので弱音の妙なる響きも聞いてみたいところです。 技術的なことはよく分かりませんが、これまで3年間聴かせていただいた経験から、このようなことは可能なオケだと思っています。 更なる成長に期待したいところです。 生意気いってすみませんが期待しているということでお許しください。