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かぶとやま交響楽団 第29回定期演奏会

このオケの実演でしか味わうことの出来ないシベリウス戻る


かぶとやま交響楽団 第29回定期演奏会
2003年9月6日(土) 18:30 伊丹アイフォニックホール

シベリウス: 交響曲第7番ハ長調 作品105
ストラヴィンスキー: 室内管弦楽団のための協奏曲変ホ調「ダンバートン・オークス」
リムスキー=コルサコフ: 交響組曲「シェヘラザード」 作品35

指揮: 柳澤 寿男


ちょうど1年前、やはり柳澤さんの指揮で聴かせていただいて以来2回目の「かぶ響」の演奏会。 今回もこだわりの選曲でしたが、いきなりシベリウスの交響曲というプログラミングには驚かされました。 演奏では、今回も個人のテクニックの巧さや小編成オケならではの纏まりの良さがよく出ていました。 また響きの透明感、調和の素晴らしさも味わうことも出来ましたが、今回はそれらに加えて柳澤さんとのコンビネーションの良さ、親密さに触れることが出来きたように思います。 前回はややもすると鋭角的に突き進みすぎるきらいがあり、そんなに急いでどうするとも感じたのですが、今回はもっとこなれたと言っては偉そうなんですけれど、キレの良さだけでなく、響きのなかに暖かさを充分に感じることができました。 それが一番顕著だったのがシベリウスの交響曲でしょう。 それぞれの楽器が木で出来ていることを感じさせるような暖かい響きで、しかもそれらが集まってオーケストラ全体が森の響きとして感じたほどでした。 響きの綾の感じられる小さなホールで活動されるというモットーを持つ「かぶ響」の狙いが活かされた素晴らしい演奏でした。 とにかくこれはCDなどでは決して味わうことのできない演奏でした。 そして実演であっても、このような技量のしっかりした小編成のオケの実演でしか味わうことの出来ない稀有なシベリウスだったと思います。 十二分にシベリウスの響きを堪能させていただき、この難解な曲の魅力を初めて教えていただきました。 素晴らしい演奏でした。 このあとのダンバートン・オークスは、何と言ってもリズム感の良さが魅力的でしたし、シェヘラザードではコンマス工藤さんの美音も特筆すべきでしょうが、全員が一丸となった大熱演でした。 とにかく今回もメンバー全員が目標とする音楽に対峙し、その熱い思いを各自の楽器の音にのせ、オーケストラという団体で醸成しよう、という熱意がびんびんと伝わってきました。 そんな強い思いが伝わってきた演奏会でした。


ホールに入ってプログラムを見てびっくり。 交響曲が最初にくるなんて… やっぱり並の常識でこのオケの演奏会に立ち向ってはいけないようですね(別に対決しに来たのではないのですけども)。
さてオケはいつもながらの対向配置で、両翼ヴァイオリンは8本づつの小編成なんですが、これによって纏まりの良さがよく出ていました。 響きの透明感、調和の素晴らしさもさることながら、今回一番吃驚したのは響きの暖かさでしょうか。 それぞれの楽器がアコースティックであり、楽器が木でできているっていうしごく当たり前なことに気付かされもし、それが集まってオーケストラ全体が森の響きとなっていたようです。 響きの綾が感じられる小さなホールで活動されてるという「かぶ響」のモットーが文字通り活かされた素晴らしいシベリウスの演奏に終始しびれっぱなしでした。 とにかくCDやレコードでこの曲を予習をしましたが、このオケの実演でしか味わうことの出来ない稀有なシベリウスだったと思います。 この曲の良さを今回の演奏で始めて知ったような気がします。 十二分にシベリウスの響きを堪能させていただきました。 
緊張感を伴ったティムパニのトレモロのあと、ちょっと大きめな音で弦のアンサンブルに移りました。 暖かみを感じさせる響きでした。 もっと閑静な始まりかなと思ってしたのですが、けっこう気合が入っているな、と思いましたが、このあとフルートのソロが暖かで、木の楽器を使っているのではないか・・・と思ったとき、これはフィンランドの森ではないかと直感しました。 個々の楽器は木のような暖かみのある響きがしています。 まさしく各楽器が集まって音楽の森をつくっていました。 トロンボーンのコラールは夜明けでしょうか、太陽が昇り空気が光を響かせてきているよう。 とにかくこの音楽の森をひたすら案内されていたような気分で聴いていました。 オケを見ていると、チェロとヴィオラの中音部(しかも対向配置なのでオケの中央)がしっかりと曲を支えているのがよくわかりますし、両翼のヴァイオリンとの絡みなど手に取るように音楽が伝わってきました。 さて曲が進んでスケルツォのあたりから緊迫感が増してきたでしょうか。 しかし響きから暖かみが消えることはありませんでした。 柳澤さんは棒を持たず終始コンパクトな振りでシベリウスらしい独自のリズム感やハーモニーを付け、オケもそれに的確に反応していました。 後半の充分な盛り上がりから絶品とも思える両翼に配置されたヴァイオリンのアンサンブル、トロンボーンとホルンそしてフルートの響きも素晴らしく、それらが渾然一体となってシベリウスの世界を醸成していました。 フィナーレはさらに重厚な響きとなったのち、柳澤さんがすくうような振りでスパっと終わりました。 とにかく難解ともいえるこの曲の魅力を初めて教えてもらったように思います。 色々な発見をさせてもらいましたし、宝石を散りばめたようでもあって、実に素晴らしい時間を過ごすことができました。

舞台は暗転、座席を中央に集めたダンバートン・オークスは、左からヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2が指揮者を囲んでいたようです。 チェロの後ろにはコントラバス2本。 管楽器は左からフルート、クラリネット、ファゴットが各1本でホルンが2という編成でした。 以前に飯森範親さん指揮によるならチェンバーでは、弦楽器が6・5・4・3・2という編成だったのでヴァイオリンとヴィオラの数は記憶違いがあるかもしれません。 いずれにしてもとても小さな編成によるタイトな演奏が展開されましたが、ここで特筆しておきたいのはリズム感の良さでしょう。 特にチェロとコントラバスが一体になって奏されるリズムが実に心地よいものでした。 そして弾いていない時でもこれらの奏者がリズムを身体できざみ、次ぎの演奏に臨む真摯な態度を見ることで、自然と僕も音楽にどんどんとのめり込んでいったようです。 いつのまにか右足で小さくリズムを取って聴いている自分を発見しました。
第1楽章は、ぎゅっと締まったアンサンブルによる開始からリズミックでした。 ホルン、ファゴットともに暖かい響きが魅力的で、フルートは透明感のある響きだったでしょうか。 とにかくチェロとコントラバスによるリズムはとても心地よいもので、思わずこちらも小さく右足でリズムを取りながら聴いていたほどです。 フィナーレに近い部分、一瞬にして沈んだ表情への変化も難なくこなし、響きをちょっと持続させて楽章を終えました。
第2楽章は、ウィットに富んだ音楽で、各楽器間でのフレーズのやり取りの妙、間の取り方を楽しませてもらいました。 フルートの響きがハイライトのようになっていたようでした。
終楽章は、行進曲調で自信に満ちた響きがまた素晴らしく、ここでもチェロとコントラバスによるリズムのよさが光っていました。 おまけに弾いていない時でもこれらの奏者は常にリズムを身体できざんで次ぎの演奏に臨むという真摯な態度。 いかにも「かぶ響」らしさの現れですね。 出来ていそうでなかなか出来ないことだと思います。 とにかくこのリズムにのって音楽をとても楽しませていただきました。 ちょっと高尚な音による遊びっだなって思えた音楽でした。

休憩をはさんでシェヘラザード。 プログラムには、小編成のシェヘラザードについて訝る方も多くいて、確かに物理的な音量では満たされない部分もあろうかと思うが・・・と書かれていましたが、そんな心配など要らない威勢のいい音楽でした。 逆に小さなホールゆえ、最後の難破する部分では大太鼓やドラの鳴りを抑えていましたけれど、管弦楽は常に元気一杯。 各メンバーの方の気合がびんびんと伝わってくるような熱演でした。 逆にこのために少々聴き疲れしそうなほどでもありました。 とにかくコンサートマスターの工藤さんの媚びることの無い美音には惚れ惚れしましたし、メンバー全員が目標とする音楽に向って思いを音で凝縮させようという熱意が素晴らしい演奏でした。
柳澤さんはこの曲も指揮棒を持たず、いつもよりも大きな身振りで指揮をしていたのが印象的でした。 さてそんな第1曲目は威勢のいい金管の響きによって小編成ぬんうんという解説をいきなり取っ払ってしまいましたね。 注目のソロ・ヴァイオリンは美音なんですがケレン味のない媚びない響きが魅力的でした。 あと偏見なんですがハープを男性が弾いていたのには吃驚しましたね。 さて、物語りが始まって大海原にオケが乗り出したましたが、小編成なのに重量感のあるアンサンブル。 もちろんキレが良く、小回りが効くためにたたみ掛ける時の素早さにも迫力があります。 そして全奏になると全員が力をこめてわっ〜と出てくる集中力の非常に高い演奏でした。
2曲目は王子を表すファゴットが暖かい音でホールを満たしたのが印象的でした。 若干音量は大きかったと思います(ホールが小さいからかも)。 このあとも色々な管楽器のソロが宝石を散りばめたように出てきましたが、いずれもちょっと音が大きく感じました。 気合の入った音楽でしたが、全体としてはスパスパと音切れよく前に進んでいったという感じでしょう。
3曲目は逆に出だしからゆったりとした弦楽アンサンブルで、その響きが宙に舞うようでもあって実に素晴らしかったですね。 ここではチェロがアンサンブルの要になっていたようです。 全体的にやや走り気味に感じたこの演奏のなかでも、ここだけはゆったりと歌っていたようでした。
4曲目は可憐なヴァイオリン・ソロのあと、一転して現実の世界に突き落とすかのようなストレートな音楽で突き進みました。 熱演なんですけどね、句読点をしっかりつけながら駆け足でどんどんと進んで行くようで、先の楽章のようにもうちょっと歌って欲しい気がしたのも事実です。 とにかくヴィオラのピチカートは見ていても指が痛くなりそうなくらい気合が入っていました。 ぐっと盛り上がったクライマックスで難破する場面、管弦楽器は大奮闘でしたが大太鼓とドラは鳴りを抑えていました(ホールの響きを配慮してのことかな、と勝手に想像していますが、ここはお腹に響くような大太鼓を聞きたかったのが個人的な希望)。 そしてエンディングは実に見事でした。 ヴァイオリンのソロから聴かせ上手にシーンを回想したあとそっと曲を閉じたのですが、会場内は静まったままでした。 柳澤さんの手が下りてから、しばらくしてぽつぽつと拍手が出るといった具合で、皆さん(僕も)完全に聴き惚れてしまっていたようです。
ちょっと気合の入りすぎだと思う面はありましたが、多彩な食材で構成されているシェヘラザードを見事に料理していました。 満腹しました。