BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
神戸市民交響楽団 第54回定期演奏会

曇りのない充実したバルトーク戻る


神戸市民交響楽団 第54回定期演奏会
2003年9月21日(日) 14:00 神戸文化ホール・大ホール

ハチャトゥリアン:
バレエ音楽「ガイーヌ」より抜粋
  剣の舞
バラの乙女たちの踊り
子守歌
レズギンカ
クーセヴィツキー: コントラバス協奏曲 作品3
(アンコール)
 D・ヴァルター:
プレリュード・オマージュ・デ・パブロ・カザルス(コントラバス独奏)
バルトーク:
管弦楽のための協奏曲
(アンコール)
 ラフマニノフ:
ヴォカリース(管弦楽版)

独奏: 安達 昭宏 (Cb)

指揮: 田中 一嘉


このオケではお馴染みの指揮者である田中一嘉さんを迎えての定期演奏会。 あいにく台風通過による天候不順だったせいか、またプログラムが20世紀の作品でしかも独墺系ではなかったせいか、いつもの超満員には及びませんでしたが、田中さんの棒によってこのオケの実力が十二分に発揮された意欲的な演奏会でした。 特にバルトークの管弦楽のための協奏曲、この難曲に対して余裕をも感じさせる演奏が素晴らしかった。 ソロイスティックな部分はもちろんのこと、オーケストラ全体とした管楽器と弦楽器の対比など、音楽が常に力を持って進んでいました。 そのなかでも終楽章の真迫力はただただ聞き惚れるばかり。 実力以上といっては失礼かもしれないけれど、難曲ですからね、多少のバラつきなど覚悟していましたが、よくぞまぁここまで仕上げたと思えるほどの充実した演奏内容でした。 曇りのない充実した音楽でした。 クーセヴィツキーのコントラバス協奏曲は、えもいわれぬ柔らかいコントラバスの響きに耳を疑いました。 ただ聴いていたのが2階席後方だったこともあって、曲全体の印象としてはちょっと単調だったかしら。 1階席の前のほうで聞いたら、繊細なニュアンスも聞きわけられて印象が大きく変わっていたかもしれません。 この曲の前に席を移動しようかな・・・とちらっと思っただけにちょっと残念に思いました。 あとガイーヌからの曲は、どの曲も各パートが突出することない演奏で充実していました。 いずれの演奏も指揮者の田中さんによってオケの性能が見事に出しきられていたようです。
前回の演奏会は団内指揮者の藤田さんによる自主性・積極性を強く感じた演奏会でしたが、今回はプロ指揮者の田中さんの棒によってオケとしての纏まりの良さや見晴らしの良さを感じた演奏でした。 もちろん田中さんに見事に追随したこのオケを大いに称えておくべきでしょう。 そして最後にアンコールとして演奏されたラフマニノフのヴォカリーズ、心に沁み入る弦のアンサンブルに控えめなオーボエとクラリネット、ここにこのオケの誠実さがとてもよく出ていたように思いました。 ホール内にふわっとした空気が流れ、とても素敵な時間を過ごすことができた、そんな満足感を持って会場をあとにしました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。
台風の影響からかいつもよりちょっと人が少なかったでしょうか。 プログラム的にも現代音楽に挑戦というほどではないしても、20世紀の曲でしかも独墺系じゃない曲だったからかもしれませんね(そのせいかプログラムの曲目解説が実に詳しく書かれていて勉強になりました)。 しかし演奏内容はいずれも充実し、纏まりの良さや見晴らしの良さを感じた演奏会でした。
まずハチャトゥリアンの「ガイーヌ」から4曲、どの曲も各パートが突出することがなく、実によく纏まった演奏といった印象を持ちました。 指揮者の田中さんの手堅さがよく出ていたのかもしれません。 まず超有名曲の「剣の舞」が弾力のあるティムパニに導かれて始まりました。 打楽器が刺激的になりすぎず覇気はあるけど全体として落ち着いたサウンド。 オケに余裕があるからでしょうね。 後半のホルンのたたみ掛ける響きがカッコ良かったですね。 第2曲目「バラの乙女たちの踊り」はヴァイオリンの響きが爽やかで、ここでも整った音楽のように感じました。 ちょっと真面目すぎたかもしれません。 第3曲目「子守歌」は夜の帳のようなサウンドに身を任せていました。 しめやかな感じでよかったですね。 第4曲目「レズギンカ」は一転してリズム感の良い演奏で、ここでもホルンがタイトに響いたのと打楽器が声高に叫ばないのにきちんとしたタテのりのリズムから最後は大きく盛り上がってのフィナーレでした。 上々の滑り出しといった感じでした。

さて舞台が暗転してオケの人数が絞り込まれ(Vn1:10?,Vn2:10?,Va:8,Vc:6,Cb:3)、ソリスト用のヒナ段も運び込まれました。
まずソリストの安達さん、桐朋のコントラバス課に本日の指揮者の田中さんとは同期入学された同窓生だそうです。 安達さんは途中でドイツの大学に入学され、現在はフランクフルト市立歌劇場やサイトウ・キネンで活躍されている方とのことでした。 そして今回演奏するこの曲は、数少ないコントラバスをソロにした協奏曲なので、安達さんが日々練習されていた曲でもあり、大学やドイツのオケの入団試験でも弾かれた「青春の曲」でもあるとのことでした。
さてその演奏ですが、何よりもまず、えもいわれぬ柔らかいコントラバスの響きに耳を疑いました。 通常コントラバスというからには低い音でゴリゴリと響いてくるのかな、と思っていたのですが、じつに上品で柔らかく、少々もの悲しげな響きで、とても不思議な雰囲気が漂ってきました。 なお今回の演奏で使われた楽器は1755年製のガダニーニだそうで、その楽器の音色によるところが大きかったのかもしれませんね。 始めて経験ですから、よく分からないというのが正直なところです。
第1楽章はホルンのファンファーレから始まって伴奏の音が大きいのにまず吃驚。 これじゃぁコントラバスの音が2階まで響くのかな、と思いましたが、ソロになるとオケがすっと音量を下げてサポート。 で、もの悲しげなコントラバスの音色に驚きました。 初めて耳にする不思議な雰囲気でした。 しかし2階席までは響きの振幅が多くなるせいか繊細なニュアンスまで聞き分けれられないようにも感じてちょっと残念。 ソロと伴奏が交互に現れ、ふっと気付くとオーボエ、フルート、クラリネットが綺麗な響きで演奏しているな・・・と思ったのですが、ここが第2楽章だったかしら。 ちょっとぼけっ〜と聴いていました。 第1楽章の冒頭と同じホルンのファンファーレが聞こえてはっとして第3楽章の入り口だと気付いたしだい。 このあたりプログラムに詳細が書かれているのが参考になりました。 とにかく柔らかい響きですし、曲調がちょっと単調な感じで、ソロと伴奏が交互に現れます。 そして伴奏になるとオケは大きな音でしっかり演奏して、ソロなると急にオケの響きが萎んでしまいソロの柔らかい響きだけが伝わってくるような感じ。 この響きがまたとても心地良いせいか、けっこう回りでは目をつぶっている方が多くいらしたようです。 確かに最近流行りの言葉でいうなら癒し系ですね。 そんなことを考えているうちに曲調が明るくなってエンディング。 印象は・・・う〜んんん、不思議な雰囲気の曲というのが正直なところで、もっと間近に聴くと響きの綾も感じられて印象が随分と変わったかもしれません。 この曲のときだけ1階の前列に移動したほうが良かったかもしれませんね。
コントラバス独奏のアンコール曲のプレリュードはバッハのように響いてきました。 威厳をちょっと感じさせる曲でこっちのほうが分かりやすくてよかったな。

さて休憩をはさんでバルトークの管弦楽のための協奏曲。 プログラムが詳しいのでこれをせっせと読んで準備をしました。 とにかく難解な曲が多いバルトークの最晩年の曲ですが、曲は聴く側にとっては耳馴染みのあるメロディも出てきますけど演奏する側にとっては変拍子が変拍子のように聞こえないなど難しい曲のようですね。 しかし、今回の演奏は、そんなことはものともしないしっかりしたものでした。 ソロイスティックな部分はもちろんのこと、オーケストラ全体としての管楽器と弦楽器の対比も見事で、常に音楽が力を持って進んでいったのが何より素晴らしいし、圧巻のフィナーレはただただ聞き惚れてしましました。 終演後にはブラボーも飛び出しました。 田中さんの的確な指示のもと、オーケストラの持てる力が十二分に発揮された演奏のように思いました。 曇りのない充実した音楽でした。
第1楽章は、実に充実した響きで始まりました。 チェロ、コントラバスの響きがよく締まっているし、ヴァイオリンは透明感があって爽やか、フルートのさえずり、これが繰り返されながら徐々に音楽が成長していくような感じ。 田中さんの指示のもと、勢いに流されることなく、持てる力を十二分に出しているように思えました。 田中さんは両手を大きく上下に動かして縦の線をきちっと合わせ、またソロの部分では踊るようにして表情を付けていましたが、これにきちっと応えていたオケも見事でした。 力強いフィナーレも内に響き渡るといった感じで野放図にはなりません。 見事な始まりでした。 第2楽章はタイコの響きがアクセントになっていました。 冒頭のこのリズムからファゴット、ヴァイオリンのピチカート、木管と繋がっていく部分もなめらかでした。 タイコの音がもどってきたあと、トロンボーンの亡羊とした響きがアラン・ホヴァネスの音楽みたいで嬉しくなりました(じつはアルメニア系アメリカ人のアラン・ホヴァネスの音楽が好きなので)。 第3楽章は靄のかかったような雰囲気からオーボエ、フルート、ピッコロ・・・と、不思議な響きを持たせた音楽でしたが常に上品さを失わない魅力があります。 このあとの沸き立つような弦の響き、ヴィオラの重く引き締まった旋律も素晴らしく感じました。 第4楽章は前半は誠実な感じの音楽。 暖かなヴィオラの響きがどこかシェヘラザードにも似た感じだったでしょうか。 ショスタコーヴィッチのパロディは実にあっけらかんとした感じで、弦と管の対比をうまくさせていたように思いました。 そして終楽章、先の楽章はちょっと生真面目すぎたかな、と感じもましたが充分に引き締まって迫力のある音楽が展開されました。 大団円になっているのですが、けっしてハメを外さずピンと引き締まった感じ。 トランペットのソロには艶があってカッコ良いし、弦の分奏もきちっとしていて、ハープの響きのあとの第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの対話も面白かった。 チェロ、ヴィオラにも拡大していって、コントラバスが湧き上がってくるという感じで燃えていきました。 圧巻なフィナーレではただただ音楽に身を委ねているだけでした。 一気に突っ走ったという感じもしますが、けっしてハメを外さずきちっと纏めあげられた充実した演奏が締めくくられました。 ブラボーも声も飛び、会場は大いに沸き立っていました。 素晴らしいオケコンでした。
前回の演奏会は団内指揮者の藤田さんによる自主性・積極性を強く感じた演奏会でしたが、今回はプロ指揮者の田中さんの棒によってオケとしての纏まりの良さや見晴らしの良さを感じた演奏でした。 もちろん田中さんに見事に追随したこのオケを大いに称えておくべきでしょう。 そして繰り返されたカーテンコールで各パートが紹介されたあとのアンコールとして演奏されたラフマニノフのヴォカリーズ。 ここにこのオケの誠実さがとてもよく出ていたように思えました。 心に沁み入る弦のアンサンブルに控えめなオーボエとクラリネット、ホール内にふわっとした空気が流れていました。 とても素敵な時間を過ごすことができた、そんな満足感を持って会場をあとにしました。