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芦屋交響楽団 第60回定期演奏会

壮大な音楽のドラマ戻る


芦屋交響楽団 第60回定期演奏会
2003年10月4日(土) 18:00 ザ・シンフォニーホール

シマノフスキ: 演奏会用序曲
ショスタコーヴィチ: 交響曲第7番 「レニングラード」

指揮: 本名 徹次


前回の芦響定期も見事な演奏でしたが、今回もまた素晴らしい演奏会でした。 レニングラードなど壮大な音楽のドラマを聴いているようでした。 いやはや参りました。 この感動を言葉にすることがうまく出来ません。
本名さんの指揮は大阪シンフォニカーの常任時代に沢山聴かせてもらいましたが、あの時代よりも遥かに強い意思や自信を感じました。 またそれを見事な音楽にした芦響の巧さとが見事にマッチング。 あまりに素晴らしい演奏に第1楽章を聴いていたら涙が出そうになりました(なんでだろ)。 本名さんの指揮はシマノフスキでは切れ味鋭く滅茶苦茶に速い動きがカッコ良かったのですが、一転してレニングラードではオケの自主性を尊重したような悠揚な動きから的確に指示を出していました。 そんな(本名さんにしては)少ない動きをすぐさま音に反映したオーケストラとの息の良さ、各自・各パートのテクニックの確かさや自信といったものを強く感じました。 今回もまた凄いオーケストラを聴いた、そんな感想で十分な感じのした演奏会でした。


でもちょっとだけ頑張って今回も簡単に演奏会を降り返ってみたいと思います。

今回は30分前にホールに到着、2階席1列目をゲットできました。 1・2階席ともにほぼ9割以上入っていたでしょうか。 シマノフスキとショスタコーヴィチという20世紀の音楽のプログラムだけに1階席の前列や2階席のサイドにはちょっと空白もありましたが、演奏会が終わってみると会場は熱い空気に飲み込まれていました。
舞台上のオケは対向配置で、コントラバス8本、チェロ14本、ヴァイオリンは18本という大編成でほぼ満杯状態。 三々五々メンバーが出てきて練習を始めていました。 ここでもオケの皆さんは熱意を持ってさらっている風に見え、期待が高まっていきました。 すっと一斉に静かになってチューニング(この一斉にってところにも技量の高さを感じてしまうのは偏見でしょうか)、そして本名さんがさっそうと登場。

シマノフスキは全く聴いたことのない曲で、プログラムで直前に予習しただけですが、第1主題がR.シュトラウスみたいで実にカッコ良い曲でしたね。 いきなり切れ味鋭い本名さんの指揮さばきでスパート。 棒の動きが滅茶苦茶速いので目が点になりました。 第2主題はロマンティックと書かれていましたが、甘すぎず豊穣さと優しさをもったヴェルヴェットのような肌合いを感じました。 これらが緻密に組み合わされた密度の高い音楽となって展開。 ヴィオラのソロも中音の魅力でオケの音色にきちんと馴染んでいました。 そしてフィナーレに近づいてぐんぐん盛り上がっていったあと更に打楽器が入ってゾクゾクっとくるほど感動して曲を閉じました。 プログラムに芦響らしい曲だと思うと書かれていましたが、まさにそんなことを感じながら聴いていました。 

休憩をはさんでいよいよお目当ての「レニングラード」。 舞台に向かって右手後方(第2ヴァイオリンの後ろ・・・通常配置だとコントラバスがいるあたり)に2段のひな壇を設けて、前列にホンルン4本、後列にトランペット3本、トロンボーン3本が金管第2部隊として配置。 スネア・ドラムはチューバの前あたり、この右手にはピアノとハープ2本、そしてこの先に前述の金管第2部隊が並ぶといった感じでした。
終始のスネアと金管第2部隊が絡んで曲が進行していくのですが、まさに音楽のドラマを見て聴いているようでした。 熱くなっても決して勢いに任せることがなく、常に自信を感じさせる曲の運び、オーケストラのすべてが響きあって一つの楽器のようにも感じました。 素晴らしい技術を持った団体ですね。 そしてそれを見事に統率した本名さんと一体となった感動的なドラマでした。 終演となって、素晴らしい体験をした、そんな気分に満ちていました。
第1楽章の冒頭、豊穣な弦のアンサンブルは熱い響きでした。 棒を持たない本名さん、ちょっとテンポは速めだったでしょうか。 この熱い弦のアンサンブルが常にこの曲をしっかりと支えていたように思います。 オケが静かになって木管楽器が現れますが、ここでもピタっと揃ったコントラバスにのって音色が整っているのが見事です。 上から見ているので、弦楽器が本当に各パート見事に揃っているのが実に気持ちいい。 対向配置の左側の弦が弓で弾き、右がわの弦がピチカートの場面があり、コンマスのソロもしとやか、そのあと静かにスネアが入ってきました。 ドラマが展開します。 静かで平和な弦に緊張を強いるようなスネアが徐々に侵攻してきますが、このあたり本名さんは両手を胸の前にもってきて指だけで指示、オケの自主性に任せているようでした。 このあとも少ない動きの中から時折すくようにして弦に粘りを入れて音楽を徐々に大きく壮観なものにしてゆきました。 タイトな音楽が圧巻でしたがこれはまだ始まり、このあと金管第2部隊のホルンが起立して吹き、対決が本格化。 弦楽器は弓を押しつけて弾き、どんどんと壮大なドラマとなって盛り上がっていきました。 本名さんは終始落着いて動きの少ないリードでしたが、クライマクッスにきて金管第2部隊に煽りを入れて更に盛り上げていました。 これが突然断ち切られたあたりまでですね、細かなことを見ながら聴いていられたのは・・・この後はもう我を忘れたようにただただ音楽を聴いていました。 こんな凄い音楽を聴いたせいか涙が出そうになりましたね。 自分でも吃驚しました。
第2楽章は第2ヴァイオリンとコントラバスの対比による出だしから各楽器の分奏が面白かった。 しんみりとしたオーボエの響きもよく全体にマッチし、どの楽器も抑制された響きが素晴らしいなぁと思っていたら、突然クラリネットの音で雰囲気が一転。 実に巧い転換で舌を巻きました。 とにかくどんな場面でも音楽が息づいている感じがします。 ただ技術的に巧い集中力があるというだけでなく、常に何かを表現しようとしている姿勢が感じられるのです。
第3楽章は木管、ホルンなどのコラールがちょっとつんざくよくに登場した後、熱い弦楽器によるメロディーがほとばしり出てきました。 祈りのようにも感じました。 フルートも巧かったし、クラリネットもただようような感じ、弦のピチカートに乗せた精緻なアンサンブルがしだいに熱く動きが激しくなって疾走していきました。 金管楽器も抑制が効いて素晴らしいし、何より弦の各パートがしっかりしているせいか全体が一つの楽器のようで、まるでオルガンみたいにも感じました。
そのまま切れ目なく終楽章に入って戦いのシーンでドラマがまた熱くなっていきました。 金管第2部隊のトロンボーンとトランペットに本隊のホルンとトランペットとの対立、このあと本隊のホルンと弦楽器がビタっと合っていたのが印象的でした。 次第にホルンの力が増したあと、荘厳なテーマとなり、このあたりではチェロとヴィオラがアンサンブルの核になっていたようです。 フィナーレにむかって木管楽器が少々ヒステリックな叫びを上げてから高揚、金管群の対立、弦の熱い響き、こちらはもうただ音楽のドラマを必死で追いかけて聴いていただけでした。 そしてエンディングは本名さんのたっぷりとした大きな動きから更に大きくぐぃっと音楽を盛り上げてホール中に響き渡った感動的な響きを、本名さんが両手の拳を握って万歳をするかのようにしてスパっと切って終わりました。 見事というしかない集中力をもったエンディングでドラマが終わりました。
素晴らしい体験をさせてもらった、そんな気持ちで拍手をしていました。