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オーケストラ千里山 第7回定期演奏会

清新で誠実な音楽戻る


オーケストラ千里山 第7回定期演奏会
2003年10月5日(日) 14:00 伊丹市立文化会館・いたみホール

ウォルトン: 戴冠行進曲「王冠」(*)
ドビュッシー: 小組曲(小舟にて、行列、メヌエット、バレエ)(*)
ドヴォルザーク: 交響曲第8番ト長調 作品88

アンコール: マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

指揮:北村 朗(*)、藻川繁彦


これまでに行った演奏会で配布されるチラシでは目にしていましたが、始めてオーケストラ千里山を聴く機会に恵まれました。 実に清新で誠実な音楽をするオーケストラでした。 ドビュッシーの小組曲はとても楽しい雰囲気を出した演奏で、ドビュッシーが苦手な僕もたいへん楽しめる演奏に満足しました。 ドヴォルザークは先にも書いたとおり清新で誠実な音楽だったと思います。 終楽章にきて充分な熱さを内包した演奏は感動的で聴き応えのあるものになっていました。 ただ全体としてはちょっと几帳面だったかもしれませんね。 でもアンコールの「カバレリア・ルスティカーナ」の間奏曲は精緻な弦のアンサンブルに清潔なオーボエの響き、暖かなホルン響きがそっと入ってくる素晴らしいものでした。 いずれの曲でも音楽が終わったあとにメンバーの笑顔が垣間見え、楽しんで音楽をされているのが伝わってくる演奏会でした。
次回からプロの指揮者を迎えることになるのだとプログラムには書かれていましたが、このような暖かい雰囲気はいつまでも失わないで欲しいなぁ・・・と思いつつ、ほっこりした気分を持って帰路につくことができました。 


最初にこのオーケストラについて、ちょっと補足しておきたいと思います。 

このオーケストラ千里山という団体、好きな音楽をやって聴いてもらう、これはアマチュア・オーケストラの基本中の基本なのでしょうが、その環境のことまで考えていらっしゃる数少ない団体だと思います。 演奏会での収益金は震災の被災者の方などへの寄付金にされているとのことですし、日頃は生の音楽に触れることの少ない小さなお子さん連れの方々のために2階席をファミリーシートとして開放されてもいます。 メンバーの方が趣味の音楽をすることで積極的に社会と関わりを持ち、大切にしてゆこうとしておられる団体のようです。 
しかしこのようなことを書くと堅苦しく思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ホールの受付に行くとにこやかな笑顔で出迎えてくださいます。 これはどこのオーケストラでも同じなのですが、もっと親しみをもった暖かい雰囲気が感じられます。 定刻になってオーケストラのメンバーが一斉に登場されたときも、皆さんどこなく微笑んでいらっしゃるのが印象的でした。 そして演奏終了後も早目に引き揚げた一部のメンバーの方が楽器を持ってお客さんを笑顔で送り出し、アンケート用紙もにこやかに受けとってくださいました。 
万事がこういった感じだからでしょうか、集まってこられるお客さんもゆったりと音楽を楽しもうという方が多いように思われます。 客席でも「ひとつ詰めましょうか」「ありがとうございます」といった会話が聞かれるなど、とても和やかな気分にしてもらえた演奏会でした。
ここ数年あちらこちらのアマチュア・オーケストラを聴かせてもらっていますが、このような音楽活動もあるだなぁ・・・と考えさせられた団体でした。


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

30分前にホールに到着。 オーケストラも始めてなら、いたみホールも始めてです。 お隣のアイフォニック・ホールには2度入ったことがあるのですが、こちらもとても綺麗なホールでした。
ロビーではモーツァルトのフルート四重奏曲第1番が演奏されていて、お〜なかなか巧いなぁ・・・と思ったものの、まずは座席の確保・・・と思って客席に入ることにしました(すみません)。 最初は2階席に行こうかなと思いましたが、2階席はファミリーシートになっているとのこと。 1階席に入って最後尾に座ることにしました。 それでも舞台が近くに見えるような感じがします。 ステージの巾と1階席の最前列から最後列の距離が同じくらいではないでしょうか。 2階席は1階席の最後列から高くなって更に後ろに延びているような構造になっていました。 僕が座ったのはちょうど列の真中あたりだったので、すぐに両サイドにお客さんが座られたので結局ロビーコンサートを聴くことは断念しました。 しかし終始和やかな雰囲気に包まれていて、客席とステージが繋がりやすくてアットホームな感じだなぁと思ってプログラムを読んで開演を待っていました。

定刻となり、アナウンスのあと驚いたのはメンバーがステージ後方のドアから出て来たこと。 えっここから全員出て来るの・・・って思っていたら、左右の扉も開いて3方向から登場されました。 ステージ後方からのメンバーの登場は予想外でした。 あと驚いたというか、おって思ったのは、出てこられた方が微笑んでいらっしゃったことです。  客席に知り合いがいてその人に向かって笑いかけているのではなく、晴れ晴れとした楽しい気分で演奏に臨もうとされているように見えました。 自分達が楽しまなければ、お客さんは楽しくない、なんてことを僕はよく言うのですが、まさにそのことを既に実践されているように思い嬉しくなりました。

第1曲目のウォルトンの戴冠行進曲「王冠」、聞いたことのない曲なんですが、英国風のどこかウェットな感じの響きを巧く出した演奏でした。 最初はちょっとくぐもってしまったかな、そんな部分も確かにありましたが、音楽がクレッシェンドしてゆくにつれて徐々にエンジンもかかってきたようです。 最後はしっかりと音楽の歩みを進めながら自分達の音楽を丁寧にやったなぁという印象を持った演奏でした。

第2曲目のドビュッシーの小組曲も多分聴いたことのない曲だと思います。 正直フランス音楽は苦手の部類に入っていますので(英国音楽は好きなんですけどね)。 でもそんな僕でもこの演奏はとっても楽しめる内容で満足しました。 とても楽しく聴かせてもらいました。 とくに「バレエ」は足で軽くリズムをとりながら聴かせてもらいました。
最初の「小舟にて」は標題のとおり漂うような雰囲気を巧く出していました。 フルートやハープの美しさもありましたが、弦、とくにヴァイオリンのアンサンブルが綺麗でコントラバスが優しく寄り添っていました。 「行列」は軽やかを持ちながらも纏まりのよいアンサンブルだったと思います。 抑えた管楽器と爽やかな弦楽器が絡んでいて、フィナーレは音量が大きくなっても押し付けがましさのなさが魅力的でした。 「メヌエット」は冒頭のオーボエとクラリネットのアンサンブルから全体的に管楽器の奮闘が目立っていたようです。 ここに軽やかなヴァイオリンの響きが溶け合っていました。 「バレエ」は足で軽くリズムをとってしまうようなとても楽しい気分になった演奏でした。 弦の分奏もよく、主題が戻ってきたあたりからタイトなパーカッションによるアクセントもついて華やかさも加わりましたが、常に上品さを失わない見事なフィナーレに結びついていました。 全体としても楽しい音楽でとても満足しました。

休憩をはさんでドヴォルザークの交響曲第8番、こちらは実演で何度も聴いているお馴染みな曲。 ある意味けっこうハードルの高い曲になっているのですが、このオケらしい(といっても初めて聞いたのですけど)清新で誠実な音楽だったと思います。 終楽章にきて充分な熱さを内包した演奏は感動的で聴き応えのある演奏になっていました。 ただ全体としてはちょっと几帳面だったようにも感じましたが、演奏終了後にはオケの皆さんの笑顔が垣間見え、とてもアットホームで木肌のぬくもりのような暖かさを感じた演奏でした。
第1楽章の冒頭はちょっと手探りだったように思いましたが、直ぐに熱い音楽になってゆきました。 ただティムパニが少々抑え目の響きであったように全体的にも抑制のかかった真摯な音楽の造りを目指していたようです。 展開部では音楽が一回り大きくなり、ヴィオラとチェロが奮闘していたのと、再現部のトランペットのファンファーレの後ろで弦楽器がめくりめくような感じで弾いていたのにぐっと惹き込まれました。 フィナーレはタイトで充分な迫力を持って締めくくりました。 第2楽章は想いのこもった弦楽アンサンブルで始まり、フルートとクラリネットの掛け合いもきちんと決まっていました。 ヴァイオリンのソロは可憐で透明感のある響き、そして音楽がぐんぐん熱くなり真摯な響きが迸り出てきても崩れることがありません。 場面転換もきちんとしてて、エンディングも見事な着地といった感じでした。 第3楽章は透明感の高い弦楽器によるワルツ、ややすすり泣くようなヴァイオリンの響きに、ヴィオラとチェロが核になっていました。 ただちょっと単調にも思えた場面もありましたけれど。 アタッカで入った終楽章は冒頭のトランペットをバッチリ決めたあと、チェロの豊穣な響きによるメロディにはコントラバスがしっかりとしたピチカートを付けていたのが見事。 そして更にここにヴァイオリンが入って高音弦と低音弦の対比がしっかりととれていたのも印象的でした。 全奏になだれ込んでも、どの楽器が突出することなく、熱い想いを内包させた誠実な音楽が続きました。 チェロに主題が戻り、ここをゆったりじっくりと歌い上げたあと、クラリネットが朴訥とした響きで入ってきます。 さらにここにチェロがまたゆったりと応えるなど、じわじわっと心に染み入ってくるような雰囲気造りのあと一気呵成にコーダに突入。 タイトに締まった音楽でエンディングをきちんと決めて締めくくりました。 充分な熱さを内包した演奏は感動的で聴き応えのある終楽章でした。 全体を通してみるとちょっと几帳面すぎるかなとも思えた部分も確かにありましたが、じつに清新で誠実なドヴォルザークの交響曲第8番だと思いました。 

アンコールはマスカーニのカバレリア・ルスティカーナの間奏曲。 こちらはこれまでのどの曲よりも精緻な弦のアンサンブルが魅力的でした。 ここに清潔なオーボエの響き、暖かなホルン響きがそっと入ってくる素晴らしい演奏でした。 
とにかくいずれの曲でも演奏を終えたメンバーの方々の笑顔が垣間見え、楽しんで音楽をされているのが客席にまでよく伝わってきた演奏会でした。 ほっこりとした暖かい気分を持って帰路につくことができました。 皆さんどうもありがとうございました。