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京都市民管弦楽団 第68回定期演奏会

バランス感覚の優れた演奏戻る


京都市民管弦楽団 第68回定期演奏会
2003年11月9日(日) 14:30 京都コンサートホール・大ホール

ブリテン: 青少年のための管弦楽入門 op.34
シューベルト: 交響曲第4番ハ短調「悲劇的」D.417
プロコフィエフ: バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より抜粋 op.64

指揮:藏野 雅彦


小雨そぼ降るなか初めて聴く京都市民管弦楽団の定期演奏会に行ってきました。 このオーケストラは社会人オケでありながら、これまでにオランダへの演奏旅行やなんとウィーンのムジークフェラインでも演奏会をされたこもあり、そして来年はハンガリーへの演奏旅行が予定されているとのこと。 精力的に活動されているオーケストラという印象を持って聴かせていただきました。 そしてその期待どおりの素晴らしい演奏内容に大きく頷くものを感じました。 このオーケストラ、何より弦楽器がしっかりしているのが素晴らしいところでしょう。 もちろん管楽器や打楽器プレーヤの方の妙技もあるのですが、これらをすっぽりと弦楽器を主体とした響きの中に収めてしまうといった感じです。 とても充実したオーケストラ音楽を堪能させてもらいました。 そしてまた指揮者の藏野さんの的確な指示に敏感に反応し、どの曲も非常にバランス感覚に優れた演奏となっていました。 これが顕著だったのは「青少年のための管弦楽入門」。 ゆるぎない音楽といった印象を持ちました。 もちろん盛り上がるところではビシッと決める力強さも圧巻で、これは「ロメオとジュリエット」の「タイボルトの死」における強靭な演奏に度肝を抜かれました。 オケの切れがよく、バシッと決めたあとの残響がホールに吸い込まれるころにまたバシッと決めるなど、もうこれでもかこれでもかと完膚なきまでに叩きのめされたって感じでしょうか。 素晴らしい演奏を堪能させてもらって帰ってきました。 


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。
会場の京都コンサートホールは2回目、新しくて綺麗なホールですね。 気持ちがいいですね。 最終的にはホール1階席は9割ほど入っていたでしょうか。 皆さんけっこう着飾って(小さなお子さんもおめかしして)いるのが京都らしいところかな・・・なんて思いました。 ところで開演45分前に到着したので後方の2階席の右側最前列に落ち着いてパンフレットを読んで予習をしたり、チラシを見たり、ステージを眺めたりしてましたが(藏野さんの指揮なのにオーケストラが通常配置なのはアレって思いましたけど)、週末からの疲れが出てきたのでしょう、ちょっと目を閉じて休んでいるうちに見事に眠ってしまってました。 意識が戻ったのはチューニングが始まるところ。 20分くらい寝ていたのでしょうね、危ない・危ない。 それでも休養をとったから到着した時よりも意識がはっきりしたようでヨカッタかな。 

さてチューニングが終わって藏野さんが登場。 ちょっとエネルギッシュな感じに思えたのは気のせいだったでしょうか。 大きくゆったりと棒を振って「青少年のための管弦楽入門」が始まりました。 ちょっとテンポを遅めにとっておごそかな雰囲気を出していたでしょうか。 始めて耳にしたオケですが、非常にバランスの良い音楽がとうとうと流れてくるのに耳をうばわれました。 ソロイスティックな部分ももちろん巧いのですが、オーケストラ全体の音楽として流れてくるのですね。 それで気付いたのですが、弦楽器がとてもしっかりしているんですね。 しかも中低弦がとてもしっかりしている。 力強さもあるんですが、よく揃っていて弱音が綺麗なことも特筆すべきでしょう。 こりゃぁ充実した音楽になることに納得しました。 音楽に身を委ねているうちにフィナーレのパーセルの主題を吹くトロンボーンの響きとなり、タイトでしかも艶があって感動的でした。 ここからぐっと盛り上げてフィナーレを飾りました。 いきなりこのオケのポテンシャルの高さを強く意識させらた演奏でした。

この後いったんオケの全員が引っ込んでから再登場。 コントラバスは一人減って6本に、あと管楽器は2管になったのでオケの後ろの段がすっきりとした感じです。 シューベルトの交響曲第4番なんですが、冒頭の音がよく揃っていましたがやや強めの音だったでしょう。 このあとはやや早めのテンポにのってスパスパと進んでいきました。 なんかとてもハッキリした音楽でした。 この曲、いろいろと聞いていることもあって、ささいなことにも違和感を覚えてしまう癖があるため、申し訳ありませんが、楽しめたかというと終始ちょっと疑問が残ってしった演奏でした。 本当はね、どんなことがあっても楽しめないといけないのでしょうけどね・・・すみません。 あ、しかしオケは前曲と同じくバランスよくしっかりと演奏していたことには間違いありません。  そういえば、藏野さんが指揮された奈良交響楽団とのシューベルトの交響曲第1番も同様な違和感を持ちましたので、藏野さんの解釈と僕のわがままの問題ということでご理解願います。
第1楽章はそんな感じで少々早めのテンポでスパスパと進んでゆき、左のヴァイオリンと右のコントラバスの響きの対比などもしっかりこなしたあと主部に入りました。 ここでもコントラバスの響きが常に芯になっています。 良くいえば豊穣な感じにも思えるのですが、ここは逆にスマートにやってほしいようにも思えるし、かといって縦の線をきちんと揃え過ぎにも思えてもうちょっと旋律を歌わせて欲しいなぁとも思えたり、なんかちぐはぐな感じに思えました。 しかしこれはオケのせいではなく、僕のわがままです。 すみません。
第2楽章は逆にゆったりとしたテンポだったようです。 弦楽器を主体にした音楽で、木管楽器などちょっと控えめだったでしょうか。 ただ全体的に強弱による曲想の変化になっていて、ふっとため息をつくような感じが欲しいなぁ・・とまたわがままが出てしまいました。
第3楽章は、力強い部分と響きの粗さが垣間見える部分、これはシューベルトの曲の作りの問題と思うのですが、それがそのままストレートに出てしまったような印象でした。 オーケストラの面々は一生懸命に指揮に反応していたことは間違いありません。
終楽章は、やや速めのテンポで若さあふれる音楽でした。 藏野さんの明快な棒に、オケもノッてついてきたという感じでしょうか。 ぎゅっと引き締まった演奏でラストは一段と大きな音楽になったけど安定感はそのままできっちりした演奏で締めくくり、ここでもとても巧いオケやなぁという印象を強く持ちました。

15分の休憩を挟んでプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」。 組曲版と全曲版から抜粋してストーリーの進行にあわせ、「前奏曲」「情景」「少女ジュリエット」「モンタギュー家とキャピュレット家」「ロメオとジュリエット」「民族舞踏」「タイボルトの死」「別れの前のロメオとジュリエット」「エピローグ」の順で以上9曲が演奏されました。 
この中で圧巻だったのは「タイボルトの死」でしょう。 強靭な演奏に度肝を抜かれました。 オケの切れがよく、バシッと決めたあとの残響がホールに吸い込まれるころにまたバシッと決めるなど、もうこれでもかこれでもかと完膚なきまでに叩きのめされたって感じでしょうか。最後の音が響き渡ったあとは思わず拍手もしたくなる衝動にかられました。 あと「モンタギュー家とキャピュレット家」も重量感と瞬発力が見事でした。 当然、ここまでも述べているように弦楽アンサンブルを主体としたゆるぎない演奏すべてが素晴らしかったことは言うまでもありません。 「別れの前のロメオとジュリエット」などオケ全体が波打って想いを伝えてくるようで、ただただ聞き惚れていました。 この曲をこんなにもドラマティックに聴いた記憶がありません。 じつに素晴らしい経験をさせてもらいました。 あまり多くを覚えていませんが簡単に振り返ってみると次のような感じでしょうか。
「前奏曲」艶やかな弦の響きによる素晴らしい開始でした。 中低弦がしっかりしているので響きに余裕を感じました。
「情景」ここでも弦の響きが魅力的で、コンサート・ミストレスの響きが煌びやかだったのと、弦アンサンブルのフレーズの最後にコントラバスが響きがグィと入ってきたのも印象的でした。
「少女ジュリエット」軽やかなアンサンブルですが軽薄にならない巧さと管楽器がとても巧かったですね。 なかでもサキソフォンの瞑想的な響きが魅力的でした。
「モンタギュー家とキャピュレット家」集中力の高い演奏でした。 重量感と瞬発力が見事で、しかも場面転換しても緊張感がまるとぎれない。
「ロメオとジュリエット」柔らかい木管や朗々と吹くトランペットも素晴らしいのですが、すべて弦を主体とした音楽のなかにすっぽりと入ってしまったような感じでした。
「民族舞踏」とてもカラフルな演奏が素晴らしかった。弾力のあるティムパニも印象的でした。
「タイボルトの死」スピード感、キレの良さ、そして弦楽器にドライブ感があってオケ全体がうねるように燃え上がっていきました。 藏野さんもちょっと大きめのアクションでキメていたのが印象的でした。
「別れの前のロメオとジュリエット」前の音楽の熱気が残っていたのでしょうかゆったりとした熱い音楽でした。 オケ全体が波打つように想いを伝えてくるようで、ただただ聞き惚れていました。
「エピローグ」緊張感の高い弦の分奏による哀愁に満ちた音楽が流れてゆきました。しかも重量感のある響きで悲恋のこの物語を締めくくりました。
終演後しばらくして大きな拍手となりブラボーもかかりました。 前2曲ではかなりあっさりと拍手が引いていましたが、ここでは大きな拍手が鳴り止むことがありませんでした。 
とにかくバランス感覚に優れたとても素晴らしい演奏を堪能させてもらって会場を後にできました。