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関西学院交響楽団 第102回定期演奏会

真摯さや緻密さ、一体感そして爽快感戻る


関西学院交響楽団 第102回定期演奏会
2004年1月17日(土) 18:00 尼崎市総合文化センター・アルカイックホール

ウェーバー: 歌劇「オベロン」序曲(*)
リスト: 交響詩前奏曲
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番ニ短調

指揮:田中 一嘉、禰津 真理子(*:学生指揮)


今年初めての演奏会です。 朝から雪の降る寒い一日でしたが、会場のアルカイック・ホールに入ったら熱気がむんむん。 4回生にとっては卒団となる演奏会からでしょう。 どの演奏にも学生オケらしい真摯な気合が満ちていて、それが爽快感に繋がるような演奏会でした。 年明けに相応しい爽やかな演奏に満足しました。
まず、その卒団される禰津さん指揮によるオベロン序曲は、一言で言うと気持ちの良い演奏でしたね。 緩急をきちんとつけた音楽がびしっと揃っているのも見事でしたが、それだけでなく指揮者とオケ全員が一丸となった熱い演奏でした。 溌剌としたフィナーレが素晴らしかったですね。 
そして田中さんの指揮による演奏は、緻密なコントロールがよく行き届いていた演奏でした。 もちろんこれを実現したオケが凄いのですが、リストでは各場面の表情がよく出ていました。 そしてソロ・合奏の響きが見事に統一されていましたね。 またホルンを始めとして、木管メンバーが同じように身体を揺らしながらの熱演でした。 メンバーの気持ちが一つになっているんだな、というのが客席にもよく伝わってきた演奏でもありました。 ショスタコーヴィッチは、こちらがやや深読みをしてしまうせいもあるんですが、どこかクールさを漂わせた演奏だったようです。 ちょっとニヒルな感じもしました。 これらは(これまでの曲でもそうなのですが)弦楽器の分奏がビシっと決まっていたからでしょうか。 最後は渾身の力を込めたフィナーレ。 タイトによく締まった充実した幕切れで、拍手が鳴り止むことはありませんでした。 見事な演奏でした。
いずれも学生オケらしい真摯さや緻密さ、一体感というものを強く感じた演奏でしたが、併せて爽快感も強く感じました。 卒団生にとっては素晴らしい門出になったのではないでしょうか。 また在校生にとっても今後の演奏活動の一つの指標になるような演奏だったのではないかと思います。 いずれにしても聴いていた我々も爽やかな気持ちを携えて会場を後にすることができました。 お疲れさまでした。


さて簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

朝起きてみたら雪が降っていました。 アスファルトの道路には積もっていないものの、植木や屋根、自動車の上には白く積もっていて、いつも見ている景色がとても綺麗に見える朝でした。 そんな綺麗な雪も夕方にはずいぶんと溶けてしまって、ひたすらに寒い夕暮れになってきました。 なんとか傘は差さずに出かけることが出来たのは幸いでしょうか。 

阪神尼崎駅からは駅前の大きな歩道橋を通ってアルカイック・ホールに向かいました。 いつもは川を渡ったところで下に降りるのですが、初めてホールまで歩道橋を使ったのですが・・・こちらは自動車が来なくて安全なんですけど、暗くてちょっと寂しい感じがしますね。 とにかく寒かったのも大きかった。 そんなこともあって今年初めての演奏会にしてはちょっと沈んだ気持ちにもなったんですけど、会場のアルカイック・ホールに入るとそれは一転。 この3月に卒業される学生さんや親御さんが多いせいでしょうか、華やかな雰囲気に包まれていました。 僕はさっそく2階に上がって最前列の席を確保。 ここは暖房の熱が昇ってきているのこともあるのでしょうが、階下の熱気も感じられ、ちょっとむんむんとした感じでした。 とにかく期待が高まります。

さて開演までプログラムを読んでお勉強タイム。 最近、ちょっと(かなり)サボっていて、演奏会前にCDで曲を聴いて予習するような時間をとっていないので、この時間がけっこう重要な時間なんですね。 その点、今回のプログラムの曲目紹介、けっこう詳しく書かれていたのは勉強になりました。 また卒団される方のプロフィールなども楽しかったですね。 拝見していると自分の学生時代もちょっと思い出したりします。 もっとも当時ぼくの学校にはアマオケなんてなかったし、音楽にも係わってませんでしたが、学生気質というのはどこか共通点があって懐かしいものです。

そうこうするうちに開演時間。 第1曲目は今年卒団される禰津真理子さんの指揮でウェーバーのオベロン序曲。 プログラムには清純派アイドルと書かれていましたが、なるほどと思える笑顔の素適な方でした。 しかしその禰津さんの指揮から出てきた音楽は、緩急をきちんとつけた音楽がびしっと揃っていて見事な演奏でした。 やや開放的に金管を鳴らし、少々熱っぽくもあるんですが、指揮者・オケが一丸となった演奏です。 とても丁寧な音楽つくりが爽快で気持ちの良くなるような演奏でした。 
冒頭、ホルンの柔らかい響きに澄んだヴァイオリンの音色が呼応し、ちょっと煌びやかなフルートも絡んできました。 ほんの少しホルンが怪しくなる場面もありましたけど、全体としてとても丁寧な音楽つくりに徹していたようです。 最初はゆったりと曲を展開。 爽やかやなぁ、と思って聴いていたんですが、バシっと音楽を打ちつけるように決めたあと、ここからは音楽が速いテンポでぐいぐいと進んでいきました。 タイトな低弦が芯になっているので軽薄な感じがまったくしません。 よく揃っているから爽快感のある熱い演奏でした。 音楽がまた静けさを取り戻したあと、今度は徐々に盛り上げていくあたりも手馴れたものですね。 というか指揮者とオケの全員が一丸となって曲を進めているような感じがしました。 盛り上げるときは金管をやや開放的に鳴らしていて明るくって気持ちのいい音楽ですね。 最後には思い切りのいいタイトなティンパニが入り、溌剌としたフィナーレとなって全体を締めくくりました。 こんな溌剌とした音楽は若さの特権かもしれませんね。 演奏後の禰津さんやメンバーの笑顔もまた爽快でした。

全員がいったん引き上げたあと、田中さんの登場です。 田中さんは過去にこのオケを9回振っておられるそうで(今回10回目)、しかも前回の定期演奏会も指揮されているとのこと。 さすがに両者の息がぴったりと合っていて、緻密にコントロールされた演奏でした。 もともと田中さんという指揮者、感興に任せるようなタイプではないのですが、とくにリストの前奏曲では各部分をとても見事に振り分けていました。 もちろんこれを実現したオケもとても見事でした。 オケの弦楽器が綺麗に揃っているのが何より素晴らしいのですが、管楽器のソロになっても全体の響きのなかにきちんと収まっていて響きが統一されていたのも見事でした。 またホルンを始めとして、木管メンバーも同じように身体を揺らしながら主題を吹いていましたね。 こおいうのを見るのは気持ちいいものです。 メンバーの気持ちが一つになっているんだな、というのが客席にもとてもよく伝わってきました。 集中力の高い充実した演奏でした。
第1部「春の気分と愛」冒頭、よく揃って深い響きのピチカート。 ぼわんという残響が消えるころに繰り返します。 集中力の高さが如実に出ていました。 響きを深くとった演奏なんですが、けっして引きずるような感じではありません。 弦楽器の分奏がとてもきちっとしていて充実した演奏にしばし聞き惚れていました。 
第2部「人生のあらし」、ここのファンファーレも重量感のあるものでした。 金管楽器の響きが突出することなく全体的にぎゅっと纏まった感じ。 力強いんだけどで荒いのではけっしてない響きで、ちょっとゆったり進めていたようです。
第3部「愛の安らぎ、平和な牧歌」、緻密にコントロールされた音楽でした。 牧歌的な表情をよく現してしたようです。 管楽器のメンバーが同じように身体をゆらせながらメロディを吹いているのを見るのは気持ち良いものです。 
第4部「闘いと勝利」、徐々に力を増しトランペットによる主題も全体の響きにマッチしたものでした。 響きがここでも統一されいます。 打楽器4名が演奏に加わり、充分に熱っせられた音楽は、最後に大きく円を描いた田中さんの指揮に併せてふわりと着地。 とても見事でした。 いやぁ〜このフィナーレ、あまりの見事さに一瞬息をのんでから拍手贈りました。 本当に緻密な音楽で、とても集中力の演奏でしたね。 これは収穫でした。

15分間の休憩を挟んで、いよいよメインのショスタコーヴィッチの交響曲第5番。 ショスタコーヴィッチの交響曲の中では一番有名で革命とも呼ばれることがありますが、けっこうな難曲であると思います。 この難曲を田中さんは常にクールに振り分けていたようです。 オケもまたその指示にしっかりと付いてゆきましたが、ことに弦楽器の分奏がビシっと決まっていたからでしょうか、第1楽章などちょっとニヒルな感じも漂っていたようです。 そして圧巻はフィナーレ。 渾身の力を込めたもので、タイトによく締まり、鋭く強く打ちつけるような響きでの幕切れに拍手が鳴り止むことはありませんでした。 全体を通してもとても見事な演奏で、クールさとニヒルさを感じさせた演奏でした。 これらは(これまでの曲でもそうなのですが)弦楽器の分奏がビシっと決まっていたからでしょうかね。 
第1楽章は、ややあっさりとした開始でした。 ヴァイオリンの響きがよく揃っていて透明感があります。 中低弦もしつこさがなくインテンポで淡々と進めているようでした。 ピアノが入り、ホルンがゆったりと吹いた展開部も音楽は熱を持って激しくなるんですが、こちらがやや深読みをしてしまうせいもあるんですが、クールな冷たさを漂わせた演奏に思えました。 現代の機械文明(機械兵器)を象徴してのことかな、なんていうようにも思ったのは深読みしすぎかな。 ヴァイオリン・ソロはすすり泣くような濡れた響きで最後のチェレスタも控えめ。 しっとりとした感じでこの楽章を終えました。
第2楽章は、力強いコントラバスとチェロの響きで始まりました。 さっきの楽章とは違って音楽に躍動感が感じられます。 先の楽章は殊更にインテンポで進めていた感じに思えたのですが、ここでは一転して音楽を大きく呼吸させているかのように思えました。 中間部のヴァイオリン・ソロやフルートも抑揚をつけていました。 ここは弦楽アンサンブルをカチっとそろえていたのと対比させていたのでしょうか(ここも深読み?)。 とにかく、いろいろと緻密に音楽を組み立てているようです。 最後はスパっと断ち切りましたが、残響を残してしました。
第3楽章のラルゴは、第2ヴァイオリンによる悲しみをしみじみと湛えたような響きにより始まりました。 田中さんはじっくりと曲想を描いているようで、時折大きく棒を流してはオケのなかから響きを絞り出していましたね。 これまでもそうなんですが、弦楽器の分奏が本当に巧い。 そして木管の各ソロもしっとりした響きで素適でした。 クライマックスで盛り上がったあと、チェロにはもうちょっと粘って欲しいような気もしましたが、これも田中さん流のクールさであったのかもしれませんね。 エンディング、ハープとチェレスタが絡んで静かに退けていくところ、とても綺麗だったのが印象的でした。
第4楽章、田中さんは棒を持った手を下ろさず、オケと息を合わせてから終楽章に突入。 力強いティムパニ、タイトな金管、徐々に速度を上げていきました。 速いテンポでずんすんと進めていくんですが、要所は力強く決めています。 シンバルが入り、うねるような指示する田中さん、銅鑼のあとのティムパニの強打など、息つく間のないクライマックスの構築でした。 静かになって、ホルン・ソロのあと、弦楽器がややうねるように演奏しますが、分奏がしっかりしているので響きが濁らないのが素晴らしいですね。 やがてスネアが打たれて、慎重に、そして意味深く曲を展開させていきますが、ここもちょっとクールだったかな。 しかし徐々に音楽を大きくし、充分に引きつけたクライマックスを構築して歌わせます。 潔いティムパニが入り、渾身の力を込めたエンディングはタイトによく締まり、鋭く強く打ちつけるような響きが強烈。 最後まで一糸乱れない見事な演奏に、ブラボーもかかり、拍手が鳴り止むことがありませんでした。 

学生オケらしい真摯さや緻密さ、一体感というものを強く感じた演奏でしたが、併せて爽快感も感じました。 卒団生にとっては素晴らしい門出になったのではないでしょうか。 また在校生にとっても今後の演奏活動の一つの指標になるような演奏だったのではないかと思います。 いずれにしても聴いていた我々も爽やかな気持ちを携えて会場を後にすることができました。 お疲れさまでした。