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オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ 第8回定期演奏会

ドラマティックなマーラーの巨人に感激戻る


オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ 第8回定期演奏会
2004年2月22日(日) 14:00 森ノ宮ピロティーホール

ボロディン: 歌劇「イーゴリ公」序曲(*)
マーラー: 交響曲第1番ニ長調「巨人」

アンコール: シベリウス: カレリア行進曲

指揮: 今西 正和、池田俊明(*)


聞いたことのない名前のオケだな(失礼)と思っていたら、大阪市立大学OBオケだそうですね。 第7回の定期演奏会より名前を変えたそうです。 そしてこのオケが、森之宮ピロティにて、なんとマーラーの巨人を演奏するとのことなので行ってきました。 
緊張の糸がピンと張った出だしから、エンディングの高揚感まで、この大曲を見事に料理していたのに感激しました。 とにかくオケの各パートがよく纏まっていましたね。 パート毎の対比がしっかりとついて、ステレオ効果も満点。 とくに舞台左奥のホルンと舞台右奥のコントラバス、中央左のヴァイオリンと中央右のチェロ、それに中央付近で常に落ちついたヴィオラの動きがそれぞれに浮き上がるように聞こえてきたのが見事でした。
指揮者の今西さんは劇団四季で振られている方だそうで、この曲をとてもドラマティックなものに仕上げていました。 ドラマティックといっても、感興にのせたものではなく、緩急をしっかりとつけ、特に緩の部分を遅めにして十分に歌わせていたのが印象的でした。 そして急の部分はより速くして、タイトで端正に仕上げていました。 CDで聴く巨人とは一味違う、ドラマの各シーンを見ているような演奏で、井村さんが指揮されたマーラーの第9もそうだったことに思い当たります。 井村さんもまた東宝ミュージカルの指揮もされていますが、何等かの共通点があるのでしょうか。 ともかく、マーラーはオペラを書かなかったけれど、このような演奏を聴くと、交響曲そのものがオペラのように書かれていたのでは、と思えます。 とにかく素晴らしい演奏に感激しました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

前日とは違って朝から小雨が降ったりやんだり、時には陽も差しますが、安定しないお天気でした。 家を出るときも小雨が降っていましたけど、傘をささずに飛び出しました。 案の定、駅に着く頃には降り止みました。 演奏会には雨は禁物ですからね、このまま降らずにいて欲しいな、なんて思いながら電車で森之宮へ。
森之宮は通勤経路上ですからね、定期券の行動範囲内なんで交通費がかからないのが嬉しいところです。 またこの演奏会のチケットも、オケのホームページに掲載されていた無料招待券ネット配布を利用させてもらいましたんで、こちらも無料。 タダほど怖いものはない、なんて言いますけどね。 演奏会についてはそうとは言えないんじゃないでしょうか。 ま、それでも、始めて聴かせていただくオケですから、ちょっと不安があったのは事実でしたけど・・・ね。
とにかく10分前にホールに到着。 だいたい6割くらい入っていたでしょうか。 中央の良さそうな席は埋まっていたので、いつもどおり後方に移動。 中央右ブロックの後ろから5列目に座ることにしました。 ここならオケの中もよく見えますしね。 ちなみにオケは通常配置でした。 コントラバスは8本の編成で、これと対する反対側の位置にホルンの席が並んでいました。 さて、定刻を告げるブザーが、ブゥ〜と・・・。 ちょっとレトロな感じ。 また、大阪市消防条例により客席でのおタバコは・・・のアナウンスもまた同様です。 昨日の同志社女子大の新島記念講堂のようにパイプオルガンを使うのは別格としてもね、もうちょっと工夫が欲しいところです(ってこのオケの演奏会とは関係ありませんね、すみません)。

まずは団内指揮者の池田さんによるボロディンの歌劇「イーゴリ公」の序曲。 重厚な音楽でした。 冒頭の湧き上がるような弦楽器の響きから、チューバやトロンボーンなどの低音金管楽器の響きでぐっと盛り上げます。 ティムパニも重たい音が印象的でした。 とにかく「力」を感じさせる演奏でしたね。 そういえば、このオケの名前にある「フォルツァ」とはイタリア語で「力」という意味だそうですね。 ほんと、その名のとおりの演奏でした。 コントラバスやチェロもゴウゴウと鳴り響いてましたしね、皆さんの演奏にかける気合・意気込みを十分に感じさせた演奏でした。 フィナーレはそれがまた全員一丸となってなお一層盛り上げて終わりました。 

あまりの力演に、ふぅ、と一息をつけるための休憩は10分間です。 普通なら短めかもしれませんけどね、序曲が10分ほどでしたので、このくらいが適当でしょう。 ここで、気付いたんですが、メインの巨人の演奏時間からすると、終了予定時間は15時半すぎかな。 30分ほど早く終わりそうやな・・・なんて想像しちゃいました。 以前は長時間のコンサートや映画なんて、なんとも思わなかった(逆に長いほうが得した気持ちにもなった)んですけどね、最近は早く終わるのが嬉しく感じます。 う〜んんん、老化現象でしょうね・・・きっと・・・

なんて余計なことを考えているうち、すぐに定刻になりました(10分ですものね)。 指揮者の今西さんが登場。 今西さんは劇団四季でミュージカルの伴奏指揮者をされているそうです。 だからでしょうか、このマーラーの巨人をとてもドラマティックなものに仕上げていたのが強く印象に残りました。 ドラマティックといっても、テンペラメントな感興にのせたものではなく、よく考えられた演奏です。 緩急をしっかりとつけていましたが、特に緩の部分を遅めにして十分に歌わせていたようです。 そして急の部分はより速くし、タイトで端正な仕上とし、CDで聴く巨人とは一味も二味も違って、ドラマの各シーンを見ているような演奏でした。 マーラーはオペラを書かなかったけれど、このような演奏を聴くと、交響曲そのものがオペラのように書かれていたのでは・・・と思えてきました。 オケもまた各パートがよく纏まっていました。 だからステレオ効果も満点でした。 とくに舞台左奥のホルンと舞台右奥のコントラバス、中央左のヴァイオリンと中央右のチェロ、それに中央付近で常に落ちついたヴィオラの動きがそれぞれ浮き上がるように聞こえたのがとても見事でした。 じつに素晴らしい演奏に感激しました。

まず登場した今西さんは、客席に向かって一礼。 このとき、両手を拝むのように胸の前に合わせ、指揮棒を真っ直ぐに立てます。 これからの演奏の成功を祈るような感じに思えました。 そして、オケの方を向き、ちょっと間合いをとってから、さっき一礼したときと同じようにまた両手で指揮棒を持って拝むようにしていました(ちょっと見難かったけど、たぶんそう)。 そこから序奏の部分を振り始めましたが、この曲の出だし、聴くほうもとっても緊張しますね。 ピン!と張りつめたような音が流れだしました。 ちょっと大きめの音だったように思えましたが、とても慎重に、とても丁寧に音を紡いでいゆきました。 ますます緊張の度合いが高まるようで、聴いているこちら側も息を飲んで耳に神経を集中していました。 さて、バンダのラッパ、若干(かなり?)緊張しているような感じでわずかにビブラートがかかっていましたが、ここを越えたあたりから徐々にオケがこなれてきたようです。 そして、さすらう若人の歌のメロディがチェロによって奏されると、このまろやかな響きに魅了されました。  さらに透明感のあるヴァイオリン、柔らかいフルートへと結びついてゆきましたが、このあたり、ほんと素晴らしかったですね。 今西さんは、オケの中からありったけの感情を引き出そうとしているようでした。 オケもそれによく応えていたし、各パートがとてもよく纏まっていましたものね。 舞台左奥のホルンと舞台右奥のコントラバス、中央のトランペットとトロンボーンの対比もしっかりしてて聴き応え十分。 ほんとマーラーってあちこちに旋律をちりばめているのがよく分かって、聴いていたら嬉しくなってきました。 そしてエンディング、ぐっと盛り上げてスパッと切り落としたんですが、ホールの響きがじわっ〜と残っていたのも最高でした。

第2楽章、コントラバスとチェロの弾力ある旋律で開始。 やや速めのテンポ設定だったでしょうか。 フレーズを短く切っているようだし、ぐいぐいと進んで行きました。 しかしここを過ぎて緩やかな部分になると一転、よく歌わせようと今西さんがオケに表情付けをしています。 緩急をつけるといいますけど、緩い部分をただ遅いだけにしていないんですね。 そしてまた、たたみ掛けるようにして速度をぐっと増してスパっと切りました。 う、ここでトライアングルの紐が切れたのかな、何かが落ちた音。 アクシデントですから仕方ないですね。 ま、そんなことはものともせずに音楽は進行します。 フルートの音色が本当に柔らくて素適でしたね、しかもオケの音量が大きくなってもすっ〜と抜けてくる美しさもありました。 そういえばクラリネットもまた柔らかくて素適でしたよ。 そしてここでもゆったりと歌わせたあとにぐっと盛り上げてフィナーレはスパッと切り落としました。

第3楽章、コントラバスのソロ、甘く切ない感じがしてとても巧かったし、このあとに続くアンサンブルもじわじわってくる感じ。 とても良かった。 とにかく弦楽器の各パートがよく纏まってましたね、巧いもんです。 今西さんは相変わらず情感をたっぷりと引き出すような指揮ぶりで、ハープが入ると、明るく優しい雰囲気に。 ここでは暖かい陽差しが差し込んでくるような柔らかい音楽でした。 そして主題が戻るとまた妖艶さを感じさせる音楽に。 じわじわっと盛り上げては、すっと退く、マーラーの音楽って本当に面白いなぁと感じました。 そして、ぐっとスピードを落とし、ティムパニの打音の間隔を広く持たせ、ぐっと溜め込んでから・・・

一瞬の出来事のようにして第4楽章に突入。 充分にタイトで力強いのですが、きちっと統制された音楽です。 それがまた一段と響きの強さを増すと、聴いている僕の身体の中まで熱くなってきましたね。 マーラーに限らず、どんな音楽でもナマは素晴らしいと思うのですけれど、マーラーはやっぱりナマが一番やな、なんて単純に思ってしまえるほどストレートに感動しましたね。 それが、すっと退いてさっきまでの音の洪水はどこへ行ったのか、なんて思える静かな音楽になります。 今西さんはまたうずくまるようにして表情を丁寧に付けています。 各場面場面をドラマのように曲の表情付けをしているんじゃないかな・・・とここに至って初めて気付きました(遅いなぁ)。 マーラーってオペラ指揮者でしたけど、オペラを作曲していないんですよね。 だからこの交響曲そのものがオペラのように書かれていたのではないかな、なんてことも思えてきました。 そんなことはともかく、オケはどんどんとヴォルテージを上げてゆきます。 コントラバスなどノリノリな感じでしたね。 それに対抗するかのようなホルンは豪快に吹いています。 そうそう、このオケの中央付近でヴィオラが常に冷静な感じだったのも印象に残りました。 しっかりと曲を支えているって感じで、見事なアンサンブルですね。 そして最後にはホルンがお約束の起立をして吹き、会場内を最高潮に盛り上げてエンディングに結び付けました。

CDなどで聴く巨人とは一味も二味も違う、ドラマティックなマーラーでしたね。 失礼かもしれませんが、正直ここまで素晴らしい巨人の演奏を聴かせてもらうとは思ってもみませんでしたのでうきうきしながら会場を出たら、雨も降ってません。 ラッキー。 きっと雨粒をどこかに吹き飛ばしたんじゃないかな、な〜んて思いながら階段を降りてホールを後にしました。