BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
天理シティオーケストラ 第3回定期演奏会

ストレートでフレッシュな感覚の素敵な演奏会戻る


天理シティオーケストラ 第3回定期演奏会
2004年3月13日(土) 18:00 大和郡山城ホール大ホール

ボロディン: 歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35

 アンコール: モンティ: チャールダッシュ(安野英之編)

リムスキー=コルサコフ: 交響組曲「シェラザード」 作品35

 アンコール: チャイコフスキー: バレエ音楽「くるみ割り人形」より「花のワルツ」
 アンコール: J.シュトラウス: ラデツキー行進曲

独奏: 金関 環(vn)

コンサートマスター: 栄嶋 道広

指揮: 安野 英之


若いオーケストラのフレッシュな演奏を堪能しました。 
個々の演奏では、まずシェラザードでのコンサートマスターの栄嶋さんの響き。 凛として綺麗でした。 そしてオケでは木管楽器の響きでしょう。 いずれの楽器の響きに温もりが感じられます。 柔らかい音色に魅了されました。 それらによって第3楽章までゆったりと曲を進めたあと、第4楽章ではオケが一丸となって縦ノリのリズムでスパートして力強く曲を締めくくっていました。 とても聴き応えのある演奏、見事でした。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲では、こちらも独奏者の金関さんの響きが柔らかくて素適でした。 特に高音域では濡れたように響いていましたね。 アマオケの演奏会では、協奏曲を聴かせてもらう機会は少なく、貴重な経験というだけでなく、演奏そのものもとても素晴らしいものでした。
「だったん人の踊り」も加えて、いずれの曲でもストレートにぐんぐん盛り上がる点など、若さの特権みたいなものでしょうね。 フレッシュな音楽でした。 しかし、いずれもきちんとした演奏で暴走するようなことは皆無。 逆には句読点をきちっとつけるような折り目正しさが感じられました。 曲をしっかりと表現しようとする意気込みの強さからでしょうか。
しかしそんな本編プログラム曲から離れて、アンコール曲では自由闊達な感じでした。 けっして練習不足から手抜きをしているからそう感じたのではなく、オーケストラのメンバーが愉しく演奏しようとしているのがよく伝わってくる演奏でした。 本編は音楽が持つ素晴らしさを表現しよう、アンコールは演奏することの面白さ伝えよう、そんなことを意識されているのかな、なんて思いました。
いずれにせよ、とても素適な演奏会でした。


さて、簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

逃げ送れて嫌がる長男を連れて家を出ました。 この前は、金魚を見に連れて行って欲しい、と言っていた大和郡山なんですが、彼にとって演奏会はやはり苦痛みたいです。 この前は最後までちゃんとオペラ観てたやん、と言っても返事なし・・・
時間もちょっと早めだったし、そんな長男を連れて、まずは最寄駅前の上新電機に寄り道です。 広告に出ていた特売のホットプレートを探してみると・・・おっとまだ売れ残ってますね。 コレ(長男の好物の)お好み焼きを焼くのに買おうかな。 今のは古くなってて新しいのが欲しいよねぇ〜 なんて長男にそんな話をし、どう買う? と問いかけてみても・・・返事なし。 心そこにあらずって感じ。 行くのがよほど嫌なんでしょうねぇ。 で結局、どうしようか逡巡しましたけど、買うことにしました。 こんなの持って演奏会に行くなんて、ちょっと非常識なんですけどね。 ゲタ履き感覚で気軽にクラシックの演奏会を楽しむということで・・・
大和郡山には17時20分頃に到着。 今度は駅前の文房具屋の店頭へ。 長女が欲しがっていたリュックサックがあれば買ってきて欲しいとの依頼がありました。 この前、金魚を見に来た時に買いそびれたものなんですけどね、こちらもちゃんと売ってました。 これもゲット。 どんどん荷物が増えていきますね。 もう演奏会に行くような雰囲気じゃない感じ。 ついでなんで、長男の運動靴がボロボロになってきてるし、靴買いに西友に行こうか・・・と長男を誘ったら、早よ(演奏会場)に行こ、と嫌がられてしまいました。 う〜んん、ちょっとハシャギすぎたかも? 西友の前を通り過ぎて大和郡山城ホールへの道をたどることにしました。

大和郡山城ホールのロビーには大勢の人が。 ロビーコンサートをやっていたのですね。 開演18時なのに、開場が17時なんて早いなぁ、って思っていたんですけど。 大勢の人でよく見えませんでしたが、けっこうな人数の団員さんが出てらしたようです。 いつも思うのですが、楽器が奏でる音楽をこんなに間近で耳にするとても良い機会なんですけど、とても大変だろうなぁ〜って。 演奏者の方には本番プログラムの演奏も控えてますし、お客さんの間近での演奏には余計な緊張もするだろうし、それに笑顔も大切ですからね。 ほんと頭が下がります。 とくに今回はホットプレートなんかホールに持ち込んでいるお気楽ぶりですから・・・ね。

とにかくロビーのお客さんをかき分けるようにして2階席へ。 長男に席を選ばせて、中央通路の後方の席に。 足元が広いのが楽なんですよね、ここ。 時間とともにお客さんも増えてきましたが、1階席はよく見えませんが、見えている範囲で8〜9割入っていたでしょうか。 2階席も最終的には5割くらい入っていたようです。 お子さん連れ(僕もそう)や、若い学生さんも多い感じですね。 隣には制服姿の女子中学生2人連れが、オーケストラを聴くのは始めて、と楽しそうにしてました。 始めてといいながら、手書きのスコアを出してましたので、吹奏楽をやっているのかしら。 とにかく若い人達の多い演奏会って、雰囲気も明るく感じて良いんですよね。 というものの我が子にはあまり期待はできませんけども。

さて定刻。 安野さんがにこやかに登場してボロディンの「だったん人の踊り」。 明るい音色できらめくような開始から、ストレートで力の入った演奏が展開されていきました。 まっすぐに曲に向かいあって、それに従って突き進んだような演奏だったかな。 冒頭のオーボエの明るい音、瑞々しい弦楽器の響きなど、若々しい感じがして好感が持てました。 後半、タイトで力強い音でした。 シンバルが派手に鳴り響いて元気。 もともと深みを感じさせるような曲ではないですものね。 開放的な感じなんですが、やりたい放題で鳴らし放っぱなしでは決してなく、きちっとした演奏で真っ向勝負みたいな感じに思えました。 

舞台が暗転、オケのメンバーが一部引っ込んでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。 アマオケではソリストの確保が難しいことがあると思いますけど、アマオケの演奏会でこの曲をナマで聴くのは始めてじゃないかしら。 有名曲なんですけど、貴重な機会と言っていいかもしれませんね。 そんなことからも期待していたんですが、その期待を遥かに上回る素晴らしい演奏でした。 プログラムを読むとジュリアードで学ばれた金関さん、技巧的な面を全面に出されるのかと思っていたのですけど、暖かい響きに情感を漂わせた演奏に魅了されました。 特に高音域、うるんだように濡れた響きが素適でしたね。 オケもしっかりサポートしてて、先の演奏でも思ったのですが、木管楽器の響きが綺麗で、ソロとともに情感をよく出していたように思いました。

第1楽章、オケのヴァイオリンに暖かさを感じる出だしから次第に音楽が熱を帯びてきました。 そしてソロ・ヴァイオリンもまた暖色系で、柔らかく、甘さを伴った響きでした。 プログラムにはジュリアードと書いてあったので、もっと高音域ではキィーって伸ばすのかな、と思っていたら、潤んだように濡れた響きでまとめらましたね。 ゆったりと歌いながら弾かれたあと、ふっと息をつくような感じもし、技巧よりも情感を漂わせる間の取り方をされていたみたいですね。 しばし魅了されていました。 オケの伴奏もしっかりとつけていましたが、オケだけのところになると元気が溢れていたようです。 音量がちょっと大きかったかな。 カデンツァもまた哀歓を感じさせる音色と間で魅了させてもらったあと、フィナーレではオケの縦ノリのリズムからぐいぐいのせていって終わりました。 案の定、ここで曲が終わったかのような大きな拍手が・・・いやぁ、まさにそんな感じの終わり方でしたものね(楽章間の拍手は否定しません)。

第2楽章の前にチューニングをし、万全の態勢で望みました。 が、2階席にはお客さんがゾロゾロと入ってきてたのでちょっとざわついたのが残念でした。 ソロ・ヴァイオリンの響きが柔らかくて、想い入れの多い演奏。 ちょっと独特の抑揚や間をとったのでしょうかね、オケとの間に隙間みたいなのものもあったかも。 しかしクラリネットの深い響きが素晴らしかったですね。 瞑想的な演奏でした。

アカッタで入った第3楽章は、一転、力強く深い響きで進んで行きました。 急速なパッセージもリズム感良くこなしているんですが、中低域ではちょっと押しが弱いのかな、オケの響きが大きいのか。 オーボエ、クラリネットそしてファゴットとの掛け合いなどいい感じでしたね。 そうチェロもですね。 主題が戻ってきてまた速いパッセージ、軽やかなんですが、しっかりと情感を漂わせた音楽で盛り上げていきました。 オケはメリハリのついた元気な音楽でサポートしてフィナーレを飾り、大きな拍手に結び付けました。 とても素晴らしいヴァイオリン協奏曲でした。 失礼かもしれませんが、正直ここまでの演奏を聴かせてもらえると思ってもいませんでしたので、一緒になって大きな拍手を送らせてもらいました。

アンコールでは、指揮者に背中を押されて出てきた金関さんとオケによるチャールダッシュが演奏されたんですが、とても楽しい演奏でした。 オケもまた、先ほどまでのちょっと真面目な表情をした演奏から一転、肩の力を抜いた柔らかい響きで応えてました。 金関さんは、甘く情熱的な演奏で、時には身体をくねらせたり、ちょっと歩きまわって演奏するサーヴィスもあって会場は和んでましたね。 金関さんの長い髪は自然に外れたのでしょうか。 後ろでまとめていた髪が解けてなんだかパガニーニみたいな感じ。 とにかくコンサートって楽しいなぁ、って素直に思えた演奏でした。

会場もひとしきり沸いたあと、20分間の休憩をはさんでメインのシェラザード。
ソロ・ヴァイオリンはコンサートマスターの栄嶋さんが務められましたが、こちらも綺麗な凛とした響きで安定感も抜群。 第1楽章から第3楽章までのテンポ設定は遅めでゆったりと歌い、第4楽章になって速度を上げて力強く曲を締めくくったようです。 なおプログラムには、オーボエの女性がこの団に入ったきっかけが書かれてありましたが、そのきっかけになった演奏会でのシェラザードの演奏、僕も聴いていたからこれまた奇遇ですね。 だからって書くわけではないですが、いずれの楽章でも木管楽器がとてもチャーミング。 美しく柔らかい響きが本当に魅力的でした。 全体としてもよく纏まっていて、ストレートでフレッシュな感覚の演奏に満足しました。

第1楽章、弾力のある響きがすっと入ってくる潔い開始。 ソロ・ヴァイオリンはコンサートマスターの栄嶋さんです、凛とした美音です。 ハープの音がやや大きな音で応えました。 このあとも思ったのですが、ハープの音が大きくて存在感があったのは席のせいでしょうかね。 オケはゆったりと波のよせては返す音を演奏します。 飛沫かしら、ピチカートの音はちょっと控えめでした。 全体的にゆったりと演奏している感じですね。 ティムパニも柔らかい響きでした。 オケは音と音の隙間を無くすように音をつなぎながら曲を進めていたようで、そこにソロ・ヴァイオリンが潔く割って入る感じかな。 フィナーレは美しい木管の響きに煌くような金管も加わって、音のパレットが一段と華やかになって終わりました。

アタッカで第2楽章に突入。 いきなりヴァイオリン・ソロによるちょっと甘い香りを伴った響きがホールに流れると、ファゴットも甘く柔らかい響きで呼応、更にオーボエがエキゾチックな香り漂わせました。 いいですね。 このあとのオケのヴァイオリンも綺麗だったし、低弦のピチカートもよく揃ってました。 この後も音のつながりがとても自然でした。 そしてノリもあるんですが、そても自然なリズム感で曲を進めていったようです。 アンセルメのCDなんか聴いていると、あっさりしすぎって思うかもしれませんけどね、あざとさが無いのはいいことだと思います。 若いメンバーが多いからでしょうかね。 フィナーレは縦ノリのリズムで力を増して、スッと切って落としました。

第3楽章の前では、ちょっと長めのインターヴァルだったかしら。 木管楽器メンバーが一斉に楽器を分解して手入れを開始。 それがすべて終わらないうちに、音楽スタート。 ゆったりとヴァイオリンの響きで歌われたメロディは、甘さもあるけど、深みが感じられてとても見事でした。 クラリネットが入ったあと、チェロの旋律もゆったりと歌い、ヴィオラやコントラバスも加わって優しさと内面の力強さが同居している感じ。 音楽が息づいてますね。 スネアが入って、曲は明るくなると、クラリネットやフルートも明るい響きで応えます。 とにかく音のつながりがいいんでしょうね、クライマックスで盛り上げたあとも響きが横に広がるような感じでしたしね、フィナーレは柔らかく着地しました。

第4楽章は、タイトで力強い音楽でした。 コントラバスの低い響きが印象的。 力強く盛り上がっていきました。 トランペットの速いパッセージも見事にこなして、縦ノリのリズムでずんずんと進んで行くような感じ。 それまでちょっと遅めのテンポのせいだったかしら、少々足速な感じにも思えましたけどね。 オケはメリハリをきちんとつけてストレートに盛り上がっていきました。 若いオケらしく、句読点をきちんとつけているので、野放図な感じはまるでなし。 ヴァイオリンなどもノリノリで、コンマスなど腰を浮かさんばかりの熱演でしたね。 そしてクライマックスの頂点では、力強く雄大さを感じさせる音楽。 個人的には大太鼓、もっと力込めてもよかったんじゃないなかな、って思いましたけどね(もっとも、こおいう意見を聞いて暴走するとオケの均衡が崩れてしまうのでしょうけどね)。 頂点を過ぎたあと、若干熱気を帯びたままフィナーレへ。 ヴァイオリンのソロは凛としているけどどこか泣き出しそうな音色、チェロのソロは素朴さと暖かさを感じさせ、静かに、ゆったりと物語の幕を下ろしました。 しばらくの静寂ののち、拍手がパラパラと湧きあがってきて、大きな拍手へと繋がりました(多分、最初に拍手したのは僕じゃないかな)。 素適なシェラザードの演奏でした。

アンコールは、花のワルツとラデツキー行進曲。 いずれも楽しさを感じさせてくれる演奏でした。 特にラデツキーはいいですね。 会場内も盛り上がります。 
金関さんのときのアンコールでも思ったのですけど、本編プログラムは曲が持つ素晴らしさを演奏で表現しよう。 アンコールは演奏することの面白さ伝えよう、そんな演奏して楽しい音楽を聞いて一緒に楽しみましょうよ、っていう感じかな。 そんなふうに意識されているのかなぁ、なんて思いました。 音楽は楽しむためのものですものね。 堅苦しく聞いてばかりいても窮屈ですからね。
そんなほっこりした気分で演奏会を終え、ロビーに降りてみると、楽器を持った団員の方のお見送りがありました。 ご苦労さまです。 さっきまで演奏していた楽器を見ながら、よりいっそう暖かい気持ちになってホールを後にすることができました。
クラシック音楽。 とにかく堅苦しいイメージが先行してしまいがちですけれど、地道に、しっかりと音楽を根付かせようとする気持ちが伝わってくるような演奏会でした。 
蛇足ですが、長男はしっかり最後まで、眠らずに聞いていました。 感想は述べませんが(下手に言うとまた連れてこられるから)、彼なりに満足していたみたいです。 帰りには自らホットプレートを持ってくれましたしね。