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豊中市民管弦楽団 第30回定期演奏会

ゆったりとしたテンポから、じっくりと運命と向き合う戻る


豊中市民管弦楽団 第30回定期演奏会
2004年4月18日(日) 14:00 いずみホール

ショスタコーヴィッチ: 祝典序曲
シベリウス: 交響曲第7番
ベートーヴェン: 交響曲第5番ハ短調「運命」

アンコール: マスカーニ: 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
アンコール: ヴェルティ: 歌劇「アイーダ」より凱旋の合唱

指揮:谷野里香


いつもは曽根の豊中市民会館・大ホールですが、今回はいずみホールで第30回の定期演奏会です。 シャンデリアが綺麗ないずみホールの正面、パイプオルガンの前にブラス別働隊(tp:3本、hr:4本、tb:3本)も加わってのショスタコービッチの祝典序曲。 華を感じさせる演奏がとても見事でした。 そして、シベリウスの交響曲第7番。 美しい旋律が散りばめられたこの曲を、緊張感がまったく途切れることなく、しかも暖かく、そして時には熱く演奏していましたね。 そして何より響きに統一感があって、凝縮された演奏がとても見事でした。 木管楽器も金管楽器もすべて同系色の響きでしたものね。 惜しむらくは、拍手が若干早かったことかな。 フライングではなかったのですけどね、もっとしみじみと最後の余韻に浸りたかったんです。 そんな雰囲気を漂わせた演奏でした。 そしてベートーヴェンの運命。 最近流行の軽量で快速な演奏とは一線を画した演奏でしたね。 ゆったりとしたテンポ設定から、じっくりとこの曲と向き合うような感じがしました。 遅めのテンポ設定といっても、重厚で深く沈み込んだりするような前近代(ロマン)的な演奏でもなく、フレーズの処理などは曖昧にすることなく切りあげ、スマートではあるけど雄大な感じも聴き手に与えた演奏でした。 一つの見識みたいなものが伺えた演奏で、なるほどね、こんなスタイルの演奏もいいなぁと感心しました。 これまでにちょっと経験したことのない運命の世界があったようにも感じました。


さて、簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

今日の演奏会、子供を2人連れて出発したのですが、駅で定期券を持ってくるのを忘れたのに気付きました。 パスケースは持ってきたんですけど、中に肝心の定期券が入ってなかったんです。 金曜日に慌てて帰ったんで、スーツのポケットに入れたままにしていたんですね。 くそぉ〜、しかしここまで来たら戻るわけにはいかないので、片道660円の切符を買いました。 思わぬ出費にため息が出てしまいました。 もちろん演奏会そのものは、そんな出費をしても悔いののこるようなものではなかったですよ。

さて、森之宮から春の日差しを浴びて歩くこと15分。 子供と一緒だし、早めにホールに到着しても退屈させるだけですものね、ぶらぶらと歩いてホールに向かいました。 開場15分前に到着し、さっそく引き換えてもらった座席はQ列18〜20番。 やや後ろよりですけど中央ですね。 長女が「いい席やね」と喜んでいました。 ちょっともったいないくらいですけどね。 1階席はほぼ8割くらい入ったでしょうか。

定刻になり、オケメンバーが登場すると、2階左バルコニー席の奥からブラスの別働隊も登場。 パイプオルガンの下あたりに陣取りました。 正面左からトランペット3本、ホルン4本、トロンボーン3本、計10名でした。 オケは通常配置となっています。
谷野さんがゆったりと歩いて登場。 いつもながら長い髪を後ろで一つに束ねています。 いつもながらシックで落ち着いた感じのする人ですね。

第1曲目は、ショスタコーヴィッチの祝典序曲。 冒頭、オケのトランペットの響きに魅了されました。 なんと華を感じさせる音色なんでしょう。 巧いですねぇ。 もともとこのオケの金管セクションっていい味出しているんですけどね、見事でした。 あとは良く締まって軽快で明るい音楽が、どこか映画音楽のような感じで進んでゆきました。 途中のクラリネットの響きも甘くて素適でしたね。 気持ちのいい音楽です。 そしていよいよ別働隊が立ち上がって音楽に参戦すると、ホールに煌びやかな響きが充満しましたね。 なんたってホールのシャンデリアも綺麗ですからね、とてもいい雰囲気です。 もちろん勢いを増しても締まった響きは崩れてません。 着実に曲を進め、ゆったりと大きくまとめて曲を締めました。 華やかさとコントロールのよく効いた音楽が素適でした。

第2曲目は、シベリウスの交響曲第7番。 シベリウス最後の交響曲ですね。 あまり演奏されることのない曲だと思いますけど、アマオケだからこそ積極的にこのような曲も取り上げてくださるのが本当に嬉しいところです。
そしてその演奏は、美しい旋律が散りばめられたこの曲を、緊張感がまったく途切れることなく、しかも暖かく、そして時には熱く演奏していて見事でした。 何より響きに統一感があったのがよかったですね。 木管楽器も金管楽器もすべて同系色の響きで、凝縮された演奏となり、この曲を見事に演出していました。

冒頭、ティムパニによる低く柔らかい響きによって始まりました。 そしてちょっと熱気を孕んだ弦楽アンサンブルに繋がりました。 やや緊張があるのかもしれませんね、気合を感じる演奏でした。 フルートのソロは暖かい音色でしたが、全体のなかにちょっと埋没しそうな感じですっぽりと収まっています。 演奏は徐々に冷ややかな感じになってきて、美しい旋律が繰返し演奏されてゆくのを、じっと耳をすまながら聴く、まさに音楽に身を委ねているような感じの素晴らしい時間でした。 そしてトロンボーン、ホルンも響きに加わりますが、これらの音色が全体にとてもマッチしていたのが良かったですね。 スケルツォの部分、音楽がまたしだいに熱気をはらんでくるんですけど、とても自然にオケをノセていったかと思うと、またアダージョへと誘ってゆきます。 谷野さんの指揮はまったく派手さがなく、淡々とやっているようなのですけどね、オケの集中力はまったく途切れず本当に見事です。 アレグロの部分から第2のスケルツォの部分についても同様、とても柔らかく自然に盛り上げたあと、今度はコンパクトに締めて緻密な音楽としました。 トロンボーンのメロディでクライマックスを築いたあたり、透明感のあるヴァイオリンもあって凝縮した音楽といった感じでしたね。 ホルン、フルートはやはりオケと同系色の響きが素晴らしく、全体によくマッチしてました。 そして懐かしさというのかな、フィンランドには行ったことがありませんけど、その森の雄大さのようなものも感じていました。 ティムパニはここでは先の大きなマレットで柔らかい音を演出していたようですね。 そしてエンディングはすぅ〜と響きを薄くするようにして終わりました。 この余韻もっと楽しみたかったのですけど、ちょっと早めに拍手が出たのが残念でした。 最後の音にはかぶっていなかったので、フライングということではないですけど、個人的にもうちょっとしみじみとしていたかったのでした。
でも美しい旋律に彩られたこの曲を堪能することができ、素晴らしい時間を過ごすことができました。

そして休憩をはさんでベートーヴェンの運命。 名曲中の名曲ですね。 最近は新ベーレンライター版の演奏や、古楽器志向のためか、軽量で快速な演奏が多いように思うのですが、それらとは一線を画した演奏でした。 ゆったりとしたテンポ設定から、じっくりとこの曲と向き合うような感じがしました。 遅めのテンポ設定といっても、重厚で深く沈み込んだりするような前近代(ロマン)的な演奏でもなく、フレーズの処理などは曖昧にすることなくスパっと切りあげ、スマートではあるけど雄大な感じも聴き手に与えた演奏でした。 一つの見識みたいなものが伺えた演奏で、なるほどね、こんなスタイルの演奏もいいなぁと感心しました。 これまでにちょっと経験したことのない運命の世界があったようにも感じました。 

第1楽章、谷野さんは指揮棒を持った右手を前に出し、ちょっと半身になったような姿勢から有名な運命のテーマを振り始めました。 ゆったりと大きな呈示です。 オケは10型だったと思います。 オケがこぶりなので重厚な感じというよりも雄大な感じに聴こえました。 フレーズの最後はスパっと切り捨てるのではなく、ふわっとした感じの纏め方だったのも、狙ってのことだと思います。 ホルンはタイトで力強いものでした。 このあとも遅めのテンポ設定で、じっくりと曲を進めてゆきますが、要所はきちんと締めています。 オーボエのソロなどもしみじみとした響きなんですけど、ピンと張り詰めた緊張感も漂ってきてました。 下手すると、噛んで含めるような説教臭い運命になりそうなんですけど、そんな感じないんですね。 エンディングもテンポこそ遅いけれど熱いものが迸(ほとばし)り出てくるような音楽で、とても力の入った終結でした。

第2楽章、ヴィオラとチェロの暖かいメロディからコントラバスのピチカートも芯があってよかったですね。 そしてここでも遅めのテンポ設定でした。 じっくりと曲と向き合っているような進め方です。 明るい音色の木管楽器、トランペットもよく透る響きで彩りを添え、ティムパニもゆっくりと確かめるように叩いていて、遅いのだけれど、もっさりとした感じは皆無ですね。 清潔なアンサンブル、緻密に鳴らしているような印象を受けました。 後半は明るい音色の木管アンサンブルに弦、ホルンなどリズム感よく加わってきます。 谷野さん、ほんとうに巧くオケの中から響きを引き出しているようですね。 しなやかにこの楽章をまとめました。

第3楽章、チェロとコントラバスの響きがやや薄く感じましたが、ホルンはよく纏まった強奏だったでしょうか。 この楽章もやや遅く感じましたね。 主題が繰り返され、チェロとコントラバスの響きは厚くなったように感じましたが、テンポの遅い部分になるとちょっと淡々と曲を進めているような散漫な印象も持った部分もありました。 しかしこの楽章ではヴィオラがよく揃っていて中音域の魅力を感じたのがとてもよかったですね。 

そして次第に集中力を高めていってアタッカで終楽章に突入。 ゆったりとしたテンポで大きな音楽です。 谷野さんは時折ヴァイオリンに粘りを入れるような指示を出していましたね。 そうやってメリハリをつけながら、しなやかに盛り上げていったようです。 ここでも主題を繰り返していたでしょうか、今度はより力を増したタイトな音楽として盛り上げていて、またヴァイオリンに粘りを出すような指示をしていたようです。 いずれも谷野さん、大きな身振りで無理に煽ったりしないんですよね。 実にコンパクトな振りで、音をホールに放り投げるようなことはせずに、音を私に集めて下さいみたいな感じです。 オケも奮闘してよくそれに応えていたようです。 ただここでも響きが薄くなる部分では、やや淡々とした感じも受ける部分があったようです。 しかしクライマックスになると、トランペットは高らかに、ホルンはタイトに、そして弦楽器を含めオケ全体が熱っぽくなてゆきます。 それが決して煩(うるさ)く感じさせないしなやかさが魅力的です。 じっくりゆったりと盛り上げてコーダに突入。 フレーズを短めに切って、タテノリのリズムになりました。 谷野さん、ここでは両手を腰のあたり持ってゆき、古い人なら分かると思いますけど、ゴーゴーダンスのような手の振りをしてオケをのせてから一気にこの曲を駆け抜けました。

演奏終了後、オケのメンバーのやったぁ〜という顔がとても印象的でした。 とても充実した運命で、これまでCDやLPなどでは聴いたことのない感じで(と言っても変な演奏という意味ではないですよ)オーソドックスな演奏だと思うのだけれど、なるほどねぇ、なんて感心させられました。 やっぱり生演奏はいいですよね。 満足して会場をあとにしました。